じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



12月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§ 2008年版・岡山大学構内の紅葉(22)南北通りのモミジ

 楽天版のほうに京都の紅葉の写真を連載しているところであるが、岡大構内のモミジもそれにひけをとらないくらいに見頃となっている。写真は南北通りのモミジの紅葉。イチョウの落葉が終わり日射しがあたる頃になって鮮やかさを増している。


12月04日(木)

【思ったこと】
_81204(木)[心理]日本心理学会第72回大会(56)環境配慮行動をおびやかす10匹の怪物(8)

 引き続き、ギフォード氏が列挙した10匹の怪物:
  1. 不確実性(Uncertainty)
  2. 環境に対する無関心(Einvironmental Numbness)
  3. 行動統制感の欠如(Lack of Perceived Behavioral Control)
  4. 否認(Denial)
  5. 相容れない目標と願望(Conflicting Goals and Asperations)
  6. 社会的規範、公平さ、公正感が感じられないこと(Social Norms, Equity, and Felt Justice)
  7. 心理的反発(Reactance)
  8. コミュニティへのアイデンティティの欠如(Lack of Identification with Ones's Community)
  9. 見せかけばかりのまがい物(Tokenism)
  10. 習慣(Habit)
について、感想と意見。

 7.の「心理的反発(Reactance)」は、「心理的リアクタンス」などとも呼ばれ説得的コミュニケーションでしばしば言及されている。環境配慮行動との関係で言えば、あまりにも一方的にリサイクルや省エネなどを呼びかけると逆に反発を招くというような意味ではないかと思ったが、詳しいことは忘れてしまった。配付資料には、対応策として「信頼を築く(Build trust)」と記されてあったが、これまた、心理学の立場からの提言としては抽象的すぎるという印象を受けた。




 次に8.の「コミュニティへのアイデンティティの欠如(Lack of Identification with Ones's Community」だが、これはむしろ「関心空間」として捉えるべきであろうと思う。「関心空間」(「関与空間」のほうが正確かもしれない)についてはこのWeb日記でも何度も取り上げている(例えば、2006年8月3日の日記)。大昔であれば、狭い村の中から一歩も外に出ずに一生涯を終えるという人も居たであろうが、現代社会では、人々は、日々、通勤や通学のために移動し、複数の異なるコミュニティの中に一定時間身を晒すことになる。また、趣味や自己研鑽のために特定のサークルに通うこともある。配付資料では「場所への愛着を育む」ことが重要とされていてそのことには異存はないが、1つのコミュニティへを特定してアイデンティティを確立するということには限界があり、環境配慮行動はもうすこし別の形で高めていく必要があると思う。コミュニティの外の世界であろうと、海外旅行先であろうと、とにかく地球の環境全体が1つの関心空間となり、どこへ行っても同じように美化や省エネに務めるよう行動を強化することである。

 9.の「見せかけばかりのまがい物(Tokenism)」というのは、原語の「Tokenism」の意味から言えば、「申し訳程度の努力をすること」というような意味ではないかと受け止めた。米国であれば、大富豪が環境保護イベントに多額の寄附をして協力的に振る舞う一方、小型ジェット機を乗り回したり資源を散財したりしているようなことを言うのではないかと思ったが、詳しいことは忘れた。環境保護を宣伝文句に使っていながら実際には殆ど効果を及ぼさないような商品も多々ある模様である。

 もっとも、何かの啓発イベントで、「こういう小さなことでも役立つ」という象徴的な意味で、行動に参加することは決して無意味ではないと思う。

 なお配付資料では「非効果的なコミュニケーションを避け、明確で力強い言葉で」と記されており、抽象的で曖昧な態度表明ではなく、具体的で検証可能な行動を呼びかけているという意味にもとれた。

 最後の10.の「習慣(Habit)」は、具体的な目標を定めた上でその実践に励みましょうということだとは思うが、うーむ、その提言自体が抽象的でよく分からなかった。




 以上、8回にわたり意見と感想を連載してきたが、11月24日の日記でも指摘したように、今回の御講演はやはり
期待が大きすぎたせいだろうか、内容はイマイチ、インパクトに欠けており、少々物足りない感じがした。環境心理学の大家であるという触れ込みが無かったとしたら、どこぞの著名な心理学者が、環境問題について思いつくままに10個ほどの課題を挙げてみたという程度に受け止めてしまったかもしれない。
という印象が否めない内容であった。もう少し具体的な実践活動についての紹介があればよかったのではないかと思う。


次回に続く。