じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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12月11日の日記で岡大・南北通りのイルミネーション行事の話題を取り上げた(写真右)。昼間ざっと見た限りでは、青い光を放つライトは、どうやらケヤキに巻き付けられたものであるようだ。
夜のイルミネーションにそれなりの華やかさがあることは否定しないが、この時期のケヤキの本当の美しさは、写真左のように、朝日を浴びて輝く樹皮と枝振りにあるのではないかと思っている。この美しさに気づかず、ただ通り過ぎるだけの人が多いのは残念である。 |
【思ったこと】 _81216(火)[心理]日本園芸療法学会第1回大会(3) 今回からは、第一回大会のプログラムに沿ってメモ、感想、意見を述べることにしたい。なお、原則として、個人発表については発表者名を伏せさせていただく。 さて、午前中はまず、fMRI(機能的磁気共鳴画像)を使った園芸療法の効果測定という研究発表が行われた。被験者は40歳代から70歳代の脳血管障害患者であり、屋外の花壇や室内でのテラリウム作り、押し花作りなど、各種の園芸療法プログラムが用意され、被験者の状態や天候を考慮して適宜実施された。被験者には、上記のfMRIのほか、機能的自立度評価表(FIM:Functional Independence Measure)、日常生活動作、自己評価式抑うつ尺度(SDS:Self-rating Depression Scale)などを用いた変化が測定された。専門的なことは分からないが、脳血管障害(半身麻痺、失語など)の患者さんはしばしば、うつ傾向に陥りやすいということであった。園芸療法プログラムの主たる目標は
園芸療法プログラムの回数を重ねるごとにFIM指標では5例中4例、SDS指標では5例中3例で改善が見られたが、5例中5例すべてという達成には至らなかったようだ。fMRIのほうも改善が見られた事例があったが、全員というわけではなかった。 以上の発表に対しては、フロアから、
このうち2.については私には専門知識が無いので何とも言えない。いっぽう1.は、単一事例実験一般でしばしば指摘される典型的な問題点であると言えよう。 ではどうすればよいかということになるが、ベースライン条件(A条件)と実験条件(B条件)を反復するというABAB実験計画(こちらの論文参照)を導入することは倫理的にも、また治療上の制約から言っても困難であると言わざるを無い。 園芸療法を実施するグループと実施いないグループに分けて指標値を比較するというオーソドックスな群間比較実験も倫理的には実施が難しい(「何もしない」という対照群に振り分けられた人たちから文句が出るだろう)。何十人かの患者さんたちに、園芸作業のほか、アニマルセラピー、手芸、木工、絵画、写真、,,,といったメニューを自発的に選んでもらい、どのプログラムを選んだ場合にいちばん良い改善が見られたのかを比較し、結果的に園芸療法が相対的に有効であった、...という比較実験をするのであれば可能ではあると思う。 ま、それはそれとして、とにかく、特定の療法の単独効果を検証するという試み自体に限界があることは、昨日の日記でも言及した通りである。それよりもむしろ、患者さんたちがどれだけ自発的、能動的、主体的に園芸活動に参加したのかということを行動の生起頻度と、行動随伴性の質という点から評価したほうが遙かに建設的であろう。ここでいう生起頻度とは、1日の生活時間の中でどのくらいの比率で園芸活動に取り組んだのかということを意味する。自発性は、それぞれの患者さんにおいて、日常生活諸行動の中で園芸活動の優先順位が何番目に位置しているか、あるいはどの程度重み付けしているかといった調査・観察で把握できる。能動性や主体性は、園芸活動を強化している行動随伴性の中味(好子出現なのか、好子消失阻止なのか、あるいは、付加的な随伴性なのか行動内在的な随伴性なのか)を把握することで評価可能である。でもって、それぞれの患者さんにおいて、園芸活動が生活行動の一部に組み込まれ、かつ、自発性、能動性、主体性が保証される形でちゃんと強化されていることを確認できれば、私はもうそれでポジティブな効果は検証されたと判定してよいと思っている。fMRIで把握できる血流増加が見られるのはそれはそれで良いことだが、それを増やすことが患者さんたちの人生の最終目標では無い。あくまで治療や予防に必要な情報を得るという目的の範囲で利用すればよいのではないだろうか。 ここでもう一度、「園芸療法プログラムの主たる目標」を再掲するが、
次回に続く。 |