じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 2009年版・岡山大学構内でお花見(64)サルスベリ開花

 大学構内のサルスベリの花が開き始めた。ちなみに、7月13日(月)の岡山は、午前05時の気温が25.4度、この夏最初(※)の熱帯夜となった模様。早朝からクマゼミが合唱を始めており、動物たちはすでに梅雨明けを察知しているようだ。

7月10日にも午前05時の気温が28.7度という、寝苦しい熱帯夜があったが、この日は午前中に梅雨前線が南下したため、午前10時には24.6度になり、深夜になってその日の最低気温24.1度を記録した。


7月12日(日)

【思ったこと】
_90712(日)[心理]お金と消費と広告の心理学(6)消費者行動と心理的決定要素(1)

 7月8日の日記の続き。

 今回は、某ゼミ生の研究報告にあった表記の内容について、行動随伴性に基づく再解釈を試みたいと思う。なおゼミ生の報告は、『現代消費者行動論』(柏木, 1999)に基づくものであると言及されていたが、出典を拝読する余裕がなく、孫引きになっていることをお断りしておく。但し、内容には、商学の立場からの一般的視点が含まれているものと思う。

 さて、上掲の研究報告によれば、消費行動関連概念は以下のように定義されているという。
消費者の内的な不足や不満を「ニーズ(need)」と呼び、このニーズによって生じた心理的緊張状態を「動機(drive)」という。また、ニーズの充足手段が備えている機能や特性で、行動を誘発させ方向づける要因を「誘因(incentive)」と呼び、動因が誘因と結びついて行動が発生するメカニズムを「動機づけ(motivation)」という。
 ここに登場する「ニーズ(need)」、「動機(drive)」、「誘因(incentive)」、「動機づけ(motivation)」という概念は、私が学部学生であった頃(1971〜1975年頃)に学んだ心理学の概論書の内容とほぼ一致しており、かなり古い考え方であると言えよう。もっとも、他領域では未だに心理学の一般的知見であるかのように紹介されていることもあるようだ。

 行動分析学の立場から上記の概念を再解釈してみると、ニーズ(←「要求」や「欲求」と訳されることもある)、動機(←「動因」と訳されることもある)、「誘因(incentive)」、動機づけ(カタカナで「モチベーション」と呼ぶこともある)」は、
  • 確立操作
  • 好子や嫌子
  • 弁別刺激(刺激性制御)
  • 強化と弱化
  • オペランダム
という概念体系に「翻訳」することができる。そのさいには「内的な不足や不満」、あるいは「心理的緊張状態」は余計で冗長な概念であり、行動の予測と制御のモデルに組み込む必要は認められない。

 例えば、登山中に道に迷い、飲み水が不足しているという事例を考えてみよう。上掲の古典的な考え方では、この人は、
  • 長時間、飲み水から遮断され、水の補給が必要な状態となった。
  • これにより、内的な不足や不満(ニーズ)が生じた。
  • これにより、心理的緊張状態(動機づけ、あるいは動因)が発生した。
 そして、その登山者が、滝の音を聞き、崖をよじ登って、やっとのことで飲み水を獲得したとする。この場合、滝の音や景色、そして直接効果的には滝を流れ落ちる水は「誘因(incentive)」であり、崖をよじ登って滝に近づく行動は、飲み水不足というニーズや、滝を流れる水という誘因によって動機づけられるというように解釈される。

 いっぽう行動分析学的視点から言えば、
  • 飲み水から遮断化されるという確立操作により、水の強化力が高まった。
  • 滝の音や風景は、崖を登って水を獲得するというオペラント行動の弁別刺激である。
  • 水を獲得する行動は、水という好子の随伴により強化された。
と解釈することができる。であるからして、「内的な不足や不満」、あるいは「心理的緊張状態」は。行動の予測と制御には何の役にも立たない冗長な「概念」ということになるのである。

 次回に続く。