【思ったこと】 _a1008(金)日本心理学会第74回大会(18)心理学の縦断研究における継時的データの分析方法(5)幼児期における自己制御と内在的・外在的問題行動との関連
昨日の日記の続き。
話題提供の3番目は、発達心理学領域におけるマルチレベル分析に関する研究事例紹介であった。
S氏によれば、幼児期における問題行動は、
- 外在的なもの(攻撃的、反抗的)
- 内在的なもの(不安、抑鬱)
に分類される。Mathiensen et al. (2009)によれば、幼児期に外在的問題行動は低下し、内在的問題行動は増加するということであり、またこれらは自己制御の機能と関連している。自己制御には、反応的抑制と努力抑制から構成され、さらに、山形ら(2006)によれば、努力抑制は、抑制的統制と注意集中という気質によって最もよく測定されるという。とにかく、子どもの問題行動には外在的問題行動と内在的問題行動があり、前者では、抑制的統制と注意集中のいずれも低く、また後者では注意集中が低いという関連性が指摘されているとのことであった。
上掲の理論に基づいて、4歳6カ月の用事16名を対象に、CBO日本語版を用いて抑制的統制と注意集中、また、外在的問題行動、内在的問題行動を3カ月間隔で測定し、抑制的統制や注意集中の得点を中央値によって高得点群と低得点群に分類して説明変数とし、問題行動の継時的変化を予測できるかどうかがマルチレベル分析により検討された。但し、対象児が少なかったことなどにより、各種の比較いずれにおいても有意な差は認められなかったということであった。
この方面の研究については、私は全くの素人でよく分からないことばかりであったが、
- 評定者が担任保育士であったこと→評定に主観が入ってしまったり、公正な観察が全対象児に行き届かなかった可能性がある
- 抑制的統制や注意集中の得点を中央値によって高得点群と低得点群に分類して説明変数としたこと→保育園に通う幼児一般で、得点を高低で比較してもドングリの背比べみたいなもので、本質的な差を反映するような群分けにはならないのではないか。
といった疑問が残った。また、前回の述べたように、この種の分析は、幼稚園や保育園の全体的な保育体制の改善には有益な情報を与えるかもしれないが、幼児一人一人のレベルで問題行動を改善するということになれば、結局は、個人本位で、応用行動分析学的な対応が求められることになると思う。「ああ、いまこの子の外在的問題行動は低下しており、内在的問題行動が増加している状態にあるなあ」などと、何も対処せずに放置しているわけにはゆくまい。
次回に続く。
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