じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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本部棟近くの芝地で見かけたキノコ。図鑑で調べてみたが、似たような色・形のものが複数あり同定できなかった。 |
【思ったこと】 _a1013(水)日本心理学会第74回大会(21)心理学の縦断研究における継時的データの分析方法(8)臨床研究への応用の試み(3) 10月12日の日記の続き。 昨日も述べたように、話題提供では、2要因分散分析に比べてマルチレベルモデルに基づく分析のほうが検出力が高いということが強調された。より具体的に言えば、回帰式は治療傾向の全体的把握に有効であり、回帰式の傾きは治療効果の違いを反映し(セッション間の変化)、また回帰式の切片で条件差の大きさが記述できる(セッション内の変化)といった利点があり、治療技法の特徴記述に有効であるということであった。 そのいっぽう、今後の課題としてはまず、測定ポイントをどうするかという点が指摘された。マルチレベルモデルは、直線回帰が前提であるので、適切な測定ポイントがなければ傾きや切片を比較することができない。次に検出可能なサンプル数をどうするかという問題。臨床データでは均質なサンプルを集めるということは容易では無かろう。第三に、適用する回帰モデルとして、直線回帰だけでなく、曲線回帰を適用し、変化の認められる時点を特定することも有用であると指摘された。確かに、恐怖症に限らず、種々の治療においては、ゆっくりと直線的に改善するというよりは、ある時点で質的な転化が起こることが少なくないと思われる。 臨床研究への適用可能性についての話題提供は、私自身は全くの素人で十分に理解できないところが多かった。その中で生じた素朴な疑問として、恐怖症のようなものは、量(=恐怖症の程度)ばかりでなく質(=恐怖症の中味)という点でも相当の個人差があり、どの治療技法が有効であるかというような議論は一般論としては難しいのではないかという点を挙げておきたい。要するに、わざわざ、均質なサンプルをできるだけ多く集めて平均値的な変化で特徴を記述したり変化点を検出しなくても、個人本位のデータの変化を見る中でいくつかのパターンに類型化し、さらにそれぞれの個人の個別の事情を事細かく記述していけば、新たな別のケースにも有用な経験的知識を蓄積していくことができるはずである。例えば、子どもの身長の変化では、急に背が伸びたり、1年間殆ど伸びなかったりといった時期があるが、それらは子ども1人1人の身長の変化の中から読み取れることであって、同じ年齢の何人もの子どもの平均値をマルチレベルモデルで分析したところで新たな発見が得られるわけではあるまい。さらに、なぜある時期にその子の身長が急に伸びたのかというようなことは、個々の遺伝的要因、食事や運動などとの対応において因果分析できるものであろう。 ということで、マルチレベルモデルによる分析が治療技法の特徴記述に有効であるということは分かったが、個々人のデータから読み取れることを、何もわざわざ合算してわかりにくくした上で、その中の成分として再検出しなくてもよいのではという気がしないでもなかった。 このセッションでは以上の話題提供に続いて、2名の方からの指定討論があった。その中では、
以上のセッションに関して8回にわたってメモ・感想を述べてきたが、いちおうこれをもって最終回とさせていただく。 次回に続く。 |