じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 農学部農場のビワが、たくさんの実をつけている。ちなみに、ここのビワは生産物なので、勝手にもぎ取ると窃盗行為と見なされる。以前、複数の外国人留学生が勝手に「収穫」しているところを警察に見つかり、厳しい処置を受けたことがあった。カラスの大集団が略奪に来ることもあるが、そちらほうはお咎めなし。

6月16日(木)

【思ったこと】
_b0616(木)2011年版・高齢者の心と行動(18) 「楽しい」、「嬉しい」、「喜ぶ」の違い(4)反対語、感情分類、対応する英語

 昨日の日記続き。

 今回は、反対語、感情分類、対応する英語などについて考えてみることにしたい。

 まず反対語であるが、「嬉しい」の反対語は「悲しい」、「喜ぶ」の反対語は「悲しむ」あたりが妥当ではないかと思う。但し、「楽しい」の反対語については、「悲しい」のほか「つまらない」 という言葉を挙げてもよいと思う。

 もともと反対語というのは、対になる2通りの表現、もしくは、一次元上で量的に変化する現象の両極端を表す言葉であって、多元的な現象を表す言葉では、反対語は一通りに存在するとは限らない。ちなみに、Rolls(1986、孫引き)の二次性情動の図式によれば、ドーパミン軸の情動は、

恐怖→不安→心配→(中性的状態)→喜び→高揚感→歓喜、エクスタシー

いっぽう、セロトニン軸では

激怒→怒り→いらいら→(中性的状態)→安堵

という量的変化をもたらすようである。これを敷衍すれば、「喜ぶ」の反対語は「心配する、不安、怖い」ということになるが、なんだかあまり当たっていないようにも思える。

 一般的な感情分類についてはウィキペディアに諸説が紹介されている。代表的なものとしては、
  1. 中国の五情(ごじょう): 1.喜 (よろこび)、2.怒 (いかり)、3.哀 (かなしみ)、4.楽 (たのしみ)、5.怨 (うらみ)
  2. 三字経:1.喜、2.怒、3.哀、4.懼 (おそれ)、5.愛 (いとしみ)、6.悪 (にくしみ)、7.欲、
  3. 六情:1.喜、2.怒、3.哀、4.楽、5.愛 (いとしみ)、6.憎 (にくしみ)
  4. インドの伝統的な美学理論 (ナヴァ・ラサ):1.シュリンガーラ (恋愛感情;恋する気持ち、愛する気持ち)、2.ハースヤ (滑稽な笑い)、3.カルナ (悲しみ)、4.ラウドラ (怒り)、5.ヴィーラ (勇ましい気持ち、活力あふれる気持ち)、6.バヤーナカ (恐れ)、7.ビーバッサ (嫌悪)、8.アドブタ (驚き)、9.シャーンタ (平和)
  5. エクマンが当初提唱したヒューマン・ユニバーサルズ:幸福感、驚き、恐れ、悲しみ、怒り、嫌悪
  6. エクマンが1990年代に追加したリスト:楽しさ、軽蔑、満足、困惑、興奮、罪の意識、功績に基づく自負心、安心、満足感、喜び、罪悪感


 これに対応する英語はEmotionsEmotion classificationの項に詳しく紹介されている。

 上掲のエクマンの分類は英語版では、
  • Paul Ekman (1972): Anger, disgust, fear, happiness, sadness and surprise.
  • Paul Ekman (1999): Amusement, anger, contempt, contentment, disgust, embarrassment, excitement, fear, guilt, happiness, pride in achievement, relief, sadness/distress, satisfaction, sensory pleasure, shame, and surprise.
となっており、このほか、
  • The Li Chi: Joy, anger, sadness, fear, love, disliking and liking (1st Century BC Chinese encyclopedia, cited in Russell 1991: 426).
  • The Stoics: Pleasure/delight, distress, appetite and fear (Cicero, Tusculan Disputations, iv: 13-15).
  • Rene Descartes: Wonder, love, hatred, desire, joy and sadness (Passions, 353).
  • Baruch Spinoza: Pleasure, pain and desire (Ethics, pt. III, prop. 59).
  • Thomas Hobbes: Appetite, desire, love, aversion, hate, joy and grief (Leviathan, pt. I, ch. 6).
などが挙げられている。日本語と英語を概観して興味深いのは、「喜び」と「楽しみ」はしばしば区別されていること、英語では、「happiness」のほか「pleasure」、「joy」などが挙げられているが、日本語とは必ずしも一対一には対応していない。
 なお『ランダムハウス英語辞典』では一般的な訳語として、
  • 楽しい:amusing、delicious、enjoyablle
  • 楽しむ:amuse、enjoy
  • 嬉しい:glad、happy、pleased
  • 喜ぶ:glad、joy、please、pleasure
などを挙げている。

 次回に続く。