じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2012年版・岡山大学構内でお花見(1)アネモネとムスカリ

 岡山県岡山では、3月26日の最低気温が1.8℃、27日は1.6℃と真冬並みの寒さとなった。しかし、週間予報ではこの先ジワジワと春の暖かさになると予想されており、春の花も一気に咲き始めるものと思われる。

 ということで、本日より2012年版の「岡山大学構内でお花見」の連載を開始する。第一回目は、岡大西門西側花壇に咲いているアネモネ(写真上)とムスカリ(写真下)。他に水仙やチューリップの蕾も見られる。

3月26日(月)

【思ったこと】
_c0326(月)第17回人間行動分析研究会(2)行動的コーチング(2)

 昨日の日記に続いて、「行動的コーチングでなければできないことは何かについて」もう少し考えてみたいと思う。

 昨日の繰り返しになるが、「行動的コーチング」は、杉山(1987)では以下のように定義されていた。
スポーツにおける様々な動きを観察可能・操作可能なレベルに行動的翻訳し、行動分析の技法を組織的に用いることで、運動スキルの向上をめざすこと
 このうち、「観察可能・操作可能なレベルに行動的翻訳」というくだりについては、スポーツの世界では、わざわざ行動分析学の原理を持ち出さなくても、経験的に確立できているように思う。昨日取り上げた大相撲もそうであるし、野球のフォームやゴルフのスイングなどもみな同様であろう。もし行動分析学の視点を強調するのであれば、
  • 複雑な動作や一連の行動連鎖を強化可能な単位に分解し、少しずつ強化基準を上げながら強化し合成していく手順を明確にする。(経験者による奥義の伝授ではなく、その手順に従えば誰でも上達できるようにマニュアル化する。)
  • 動作を起こすタイミングを適確にするために、過渡的段階で弁別刺激を付加した訓練を行う。
  • 悪いフォームやタイミングの取り方が強化されている原因を探り取り除く。そういった原因は本人は気づいていないので、行動分析家が客観的に観察した上で、前後関係の環境変化からそれらを同定することは有効。
などが考えられるのではないかと思う。

 また、話題提供者のレジュメでは、行動的コーチングの手続として以下の4点が上げられていた。
  1. 標的行動であるフォームを課題分析し、いくつかの下位技能に分ける
  2. 介入技法としてモデリング、ロールプレイや教示を用いる。
  3. 正反応であった下位技能に対して賞賛やフィードバックを与える
  4. 各下位技能の正反応率を上げることで正確なフォームを獲得させることを目的としている


 もっとも上掲の手続に関してはいくつか議論があるようだ。

 まず、話題提供者も引用しておられたが、超初心者にこうした手続を適用しても、下位技能の正反応率が低すぎる可能性がある。そうなると、分化強化はできないので、技能の精緻化には至らない。おそらくこういうケースでは、シェイピングの手続が有効ではないかと思われる。

 もう1つ、これは前から胡散臭いと思っていたのだが、分化強化の段階で、
  • 正反応には賞賛と注目
  • 誤反応には一切指摘を行わない
という手続をとることである。これは行動分析の基本原理「正反応には好子出現、誤反応は消去」に忠実に従ったものと思われるが、果たして賞賛とか注目が本当の好子になっているのかどうかは甚だ疑問である。選手は、コーチから別段誉められなくても練習を継続するであろうから、「賞賛や注目を与える」というのは手続的な定義上の制御にすぎない。おそらく、選手にとって、効果的な練習は、技能が上達する」という「スキル上達自体」、あるいは、スキル上達に伴って試合に勝てるようになるということで強化されているのであって、「よくできた」、「おっスゴイ」といったフィードバックは、技能上達の進展を示す弁別刺激として機能しているのではないかと思う。


 次回に続く。