じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 2012年版・岡山大学構内でお花見(22)岡大石庭前のヒラドツツジ

 ヒラドツツジは大学構内各所に植えられているが、一般教育棟・岡大石庭前にある大株は、よく手入れされていて花つきもよい。

 ※岡山大学構内の花だよりのアルバム(追記更新型)をLife-Xに公開中です。随時追加していきますので、時たま覗いていただければ光栄です。




5月3日(木)

【思ったこと】
_c0503(木)放送大学特別講義「ヒューマンエラーの心理学」

 妻の実家で昼食時に衛星放送の番組検索をしていたところ、BSの放送大学で、ちょうど始まったばかりの、

●ヒューマンエラーの心理学〜うっかりミスはなぜ起きる〜

という特別講義に遭遇した。講師は、学部・大学院の同級生だったH氏であったが、こちらの御写真の通りで、と同じ歳であるはずなのに、どうみても10歳は若く見える。妻や、帰省中の某家族も「40歳代に見える」と言っていた。もっとも、ネットで検索してみると、この番組は少なくとも3年以上前に収録されたものの再放送であったようで、3年前の私の写真と比較すれば同じくらいの歳に見えるかもしれない。

 さて、番組のほうは、ヒューマンエラーのいろいろなタイプを分類した上で、それぞれのケースの実例や対策をコンパクトにまとめており、大変わかりやすい内容になっていた。さすが、特別講義として何度も再放送されるだけのことはあると感服した。そのことをふまえた上で、多少のツッコミを書かせていただく。

 まず、「千円札の裏側に書かれた絵は何か」というクイズの話。大学生対象の実験では、正解者は1人だけであり、何人かは鳥の絵を描こうとしていた(←たぶん、D号券(夏目漱石紙幣)の裏側、もしくは現行一万円札の裏側と混同したものと思われる)。これは確か「ふだんよく見ているはずなのに再現できない」という事例として取り上げられたものであったと思うが、ヒューマンエラーとはあまり関係ないように思われた。要するに、我々が「よく見ている」というのは、その景色が視野に入る回数ではなくて、視野に入る視覚刺激の中で何を弁別刺激として利用しているのかどうかにかかっている。日本では滅多に偽札が出回ることが無いので、我々は千円札かどうかは、大概、金額表示と、大きさ、紙質などでおおざっぱに弁別するだけで困ることはない。じっさい私なども、少し前に、E号券(野口英世紙幣)の中に1枚だけD号券(夏目漱石紙幣)が混じっていた時に何か変だなあと思ったことがあったが、それは表面のお顔の違いに気づいただけであり、裏面の違いなどには注意が向かなかった。

 同じことは、駐車禁止標識の斜線が、右上がりか(И型)か左上がりか(N型)というクイズについても言える(正解はこちら)。このクイズの正解率が低いのも、我々が、斜線の向きを手がかりとして利用していないことが最大の原因であり、雑学的知識としては面白いが、ヒューマンエラーとは直接関係ないように思える。もし、これが、「駐車禁止の標識の斜線の背景色は、白か青か?」というクイズであったら、免許取得者の大半は「青」という正解を出すであろう。なぜなら、背景が白の標識は駐車禁止ではなくて「車両通行止め」であり、うっかり進入したら多額の反則金を取られてしまうからである。

 このほか「お」という平仮名をたくさん書かせた時に生じる「急速書字スリップ」の実験も面白かったが、あの実験だけでは、例えば単純図形(◇や△)を書かせた時のミスは、文字ではないので説明できない。ま、このことについては種々の実験研究があるので、そちらを参照すればよいけれども。

 H氏は基本的に認知心理学の立場からヒューマンエラーの問題を解説されていたが、シェルモデルにマネジメントのmをつけた「M-シェルモデル」(こちらに図あり)でマネジメントの重要性に言及されたように、エラーの防止は最終的には、人間行動のマネジメントの問題に帰することになる。これは、「展望的記憶」についても言えることであり、予定や約束を確実に遂行したり、線路への工具の置き忘れ、手術器具の体内への置き忘れ、スイッチの押し忘れなどを防止するためには、「展望的記憶力」トレーニングなどを行っても絶対にダメであり、けっきょくは、島宗さんの本などで紹介されているような、行動マネジメント、課題分析の技法に頼るほかはあるまいと思う。