じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡大石庭と月齢15.8の丸い月/金星の日面通過(太陽面通過)バッチリ。

 6月6日は朝からよく晴れ、西の空に月齢15.8の丸い月が見えていた。6月4日の部分月食は完全に雲に覆われていたが、6月6日の7時半頃から13時半頃までの間に見られる金星日面通過(太陽面通過)は、完璧に観察できそうだ。このWeb日記執筆中にも、日食観測用の双眼鏡で、第2接触直後の様子をバッチリ眺めることができて満足満足。

6月5日(火)

【思ったこと】
_c0605(火)認知症高齢者のQOLと実態(4)「笑顔表出」という指標

 少し間が空いてしまったが5月30日の日記の続き。

 事例発表の中で、QOLの実質的指標として、「笑顔」の表出を記録している報告がいくつかあった。認知症が進むと、ご本人の気持ちを質問紙や面接で尋ねることが難しくなる。また、能動的な行動もおこりにくくなる。そういう時、ご本人がどの程度その場や出来事に満足されているかを測る客観的指標として「笑顔」の表出頻度を記録していくことは、セラピーの効果検証に有効であろうとは思う。

 発表の1つに、難病の奥様に先立たれた若年性アルツハイマーの63歳の男性が、かつて夫婦で旅行したことのある思い出の場所を尋ねた時に笑顔を見せたというような報告があった。このほか、笑顔日記という形で笑顔の表出回数を記録し、アセスメントに活用しているということであった。また、笑顔の基準が曖昧であることや常時対面できないことをふまえ、スマイルスキャンのような機器の活用も考えているということであった。

 もっともこうした「笑顔表出回数」について、望月(2001)や村上・望月(2007)は
  • 生活場面であっても、笑顔でいることがポジティブな評価につながる傾向がある。そのため、真剣な表情でアクティビティに取り組む姿もネガティブな評価となってしまい、日常場面において必ずしも妥当な評価であるとは限らない。
  • 援助実践者とのコミュニケーションの中で笑顔を示すということは、言語による主観的満足感と同様に、それ自体が社会的強化によって形成された行動と考えることも出来る。
  • さらに、疑問を持つことなく笑顔などをポジティブな評価として、そのまま捉えることによって、サービス提供者側は一律的なサービスを提供してしまう可能性がある。...笑顔を指標とする方針の下では、そのような表情が表出されることをサービス提供者が避けてしまうことによって、主体的な活動の機会を奪う可能性がでてくる。このように、主観的満足感の評価には信頼性、妥当性の両面からも課題がある。
望月昭 (2001). 行動的QOL:「行動的健康」へのプロアクティブな援助. 行動医学研究, 7, 8-17.
村上勝俊・望月昭 (2007).認知症高齢者の行動的QOLの拡大をもたらす援助設定─選択機会設定による活動性の増加の検討─.立命館人間科学研究,15,9-24
と警鐘を鳴らしている。

 もっとも、当事者と援助実践者が接する時は、しかめ面よりは笑顔を絶やさないほうが良いには決まっている。要するに、「笑顔」が無意味だということではなくて、何らかのサービス、セラピー、介入の効果検証の手段として「笑顔表出」を用いる際には注意が必要ということである。ではどうすればよいかということであるが、
  • 援助実践との対面場面以外で笑顔表出頻度やパターンのベースラインを機械的に測定する。
  • 同一の方法で、特定場面、出来事、行動直後に笑顔表出の有無を測定する。
ということが基本になるのではないかと思う。援助実践者が笑顔を見せながら当事者の顔を覗き込んで記録することは、それ自体は和やかで望ましい場面ではあるけれども、効果検証の測定方法という点ではアーティファクトが混入しやすく不適と言わざるを得ない。

 次回に続く。