じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _c0620(水)マイケル・サンデル5千人の白熱教室 (4)大学の入学権はお金で買えるか? 昨日の続き。講義では続いて、金銭的インセンティブの議論に進んだ。最初に提示された質問は、 優れた大学経営のためにお金を使いたいので、入学の権利の10%を最もお金を払った人から順に与えるというアイデアを思い付きました。裕福な親を持った学生達が寄付金をふんだんに払ってくれるなら、入学させるというものです。このような市場のメカニズムの使い方、そしてエリート大学への入学の権利を売り買いすることについて、あなたは賛成ですか? 反対ですか?というものであり【講義録参照】、受講生の投票ではやや反対意見が多いという結果になった。賛成意見を述べたマサコさんは「...もしその10%の人たちによって寄付金が入れば、大学はもっと良い教授を採用できて、90%の人たちにもメリットがあります。また、その10%の人も十分に優秀でなければ卒業できないとしたら、両方にとってWin-Winの状況になると思うんです。...」という理由を述べていた。これに対して、ケンジは、お金が一番大事だと考える人が多すぎることを批判し、かつ、集めた寄付金で貧困な家庭で育った優秀な学生に奨学金を与えるような制度についても、それは高額所得者の税率を上げて福祉政策の一環として支援を行うべきだというように主張した。この2者による「論争」は、なかなかしっかりとしたもので、しかも、相手に伝わるような英語で発言されていた。サンデル先生もその展開に満足されたことと思う。 私自身は、このケースに関しては、10%程度の特別枠で、親の寄付金が多かった学生を入学させることはあっても良いのではないかと思う。私が学生時代ならともかく、最近の大学では、厳格な成績評価と質の保証が求められるようになっており、仮に多額の寄付金で入学できたとしても、入学後にしっかりと勉強しなければ、留年や退学に追い込まれるのは必至であろう。 それはそれとして、現実の日本では、私立の医大、歯科大のように、多額の学費・学納金が必要となっている。ざっとネットで検索したところ、6年間の学費・学納金はいちばん高い大学で4920万4490円となっており、これは払えるのはごく一部の富裕層に限られるはずだ。もちろん、そういう大学でも、特待生の制度があるとは思うが、仮に90%が一般入試(多額な学費負担あり)、10%が特待生枠(学費免除)という制度が認められるのであれば、その逆の、10%が寄付金枠、90%が一般入試という形で入試が行われたとしても、考え方はそれほど変わらないように見える。もちろん、理想としては、国の補助や奨学金制度を充実させて、家庭の収入の格差に関係無く、優秀な学生がどこの大学にも入学できるようにするべきであるとは思うが。 次回に続く。 |