じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 月齢14.9の満月(正確には7月4日の午前03時52分)と「岡大観音」。この日も梅雨らしい天気で雨も降ったが、夕食後の散歩時に雲間から満月が見えた。「岡大観音」については2011年5月31日の日記参照。

7月4日(水)

【思ったこと】
_c0704(水)人間・植物関係学会2012年度大会(7)口頭発表(5)公園花壇で好まれる植栽の色と香り

 昨日の続き。

 6番目から8番目までの口頭発表は農学系の研究であり、門外漢の私にはコメントができない内容であった。その中の“草を「倒す」文化”というのは、果樹園や野菜畑の周りに生えるイネ科の雑草を空のドラム缶を転がしたり足で押し倒すという有機農法であり、なかなか興味深いものであった。現地での丹念な聞き取りに基づく調査報告であり、研究方法としても模範になりうる内容であったと思う。

 口頭発表の最後は、公園花壇の植栽に関して、通行者から色や香りの好みを尋ねるという調査研究であった。公園内または外周の通行者(有効回答219名)にアンケート調査を実施し、植栽の色(鮮やかな花色、落ち着いた花色、グリーンのみ)や香り(香りの強い植栽、香りの弱い植栽、香りのない植栽)への好みと年齢を尋ねてクロス集計するという内容であった。

 この研究には、都市公園で植栽される花々の種類が行政が一方的に決定されており(←おそらく、花期の長さ、コスト、管理しやすさなどにより決定されるものと思う)、必ずしも市民が望む植栽デザインになっていないという背景があったという。じっさい、大学構内や周辺地域の一年草の植栽を見ると、冬場はもっぱらパンジーとビオラ、夏場はペチュニア、マリーゴールド、サルビアなどが殆どであって、花期が長いぶん季節感に乏しく、公園利用者に安らぎを与える花として最適であるのかどうかについては十分に検討されていないように思う。

 もっとも、公園での植栽の好みに対して、花色の鮮やかさ、あるいは香りの強さといった変数が、どの程度関与しているのかは定かではない。特定の品種の単体の花について色の好みや香りの強さの効果を検討するというなら分かるが、公園花壇となれば、いろいろな色の組み合わせもあるし、異なる種類の花による混植花壇もある。さらには、大きな花と小さな花、一重と八重、背の高さ、一年草と多年草などいろいろなファクターが関与していると考えるのが当然であり、まずは多種多様な花壇の写真を見せて、その中からどういう因子が嗜好性に関与しているのかを抽出した上で検討していくべきではなかったかと思う。同じことは香りの強さについても言える。ということで、研究の背景は十分理解できるが、花色の鮮やかさと香りの強さという次元だけで嗜好性を調べる前に、それ以前の予備的研究において、嗜好性を左右するファクターを抽出しておく必要があったのではないかと思った。それと、花壇の好みは、一見さんと、毎日その横を歩く通勤者、散歩人では大きく異なっているように思う。一見さんが多いところではとにかく見た目の華やかさが喜ばれるだろうが、日々そこを通る人によっては、頻繁に植え替えられるポット苗ではなく、多年草の季節の変化のほうに興味が向くかもしれない。こちらの花便りなどもそうだが、日々接している花壇においては、ポット苗として埋め込まれた花の華やかさよりも、花が育っているという変化にこそに魅力があるように思う。


 次回に続く。