じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
§§ |
9月20日の岡山県岡山は、最低気温19.7℃となって20℃を下回り、最高気温のほうも26.9℃で30℃に達しなかった。写真は大学構内から眺める20日の夕焼けと、21日の日の出。涼しいということもあり、秋の到来が感じられた。 |
【思ったこと】 _c0920(木)日本心理学会・第76回大会(9)高齢者の「孤立と孤独」を心理学から考える(9)サクセスフル・エイジング、活動理論、離脱理論、社会情動的選択性理論、... そろそろこの連載のまとめに入りたい。 さて、高齢者の心理的適応については種々の議論がある。このうち、最も積極的なものは、生涯現役主義やアンチエイジングの立場ではないかと思われる。ある程度健康で安定した仕事に就いている方の場合、一定の年齢まではそれを維持することが可能であり、大いに結構なことだと思う。しかし、どんなに健康な人であっても、いずれは体力が衰え、自立困難となってくる。昨日述べた「孤立は必ずしも悪いとは言えない」という議論も、健康なうちはよいが、要介護となれば、どっちみち一人ではいられなくなってくる。 「サクセスフル・エイジング(successful aging)」の理念は「人は年を取っても、健康で自立し社会に貢献できることが重要だ」にあると聞いているが、そうは言っても、いつまでも自立、貢献ができるわけではない。各種文献資料においても、「いつまでも健康で若々しく年齢を重ねること」という目ざすと記されているものもある一方、「年齢とともに、老いてくいくことを認識しつつ、これを 受け入れながら社会生活にうまく適応して豊な老後を迎えていること」がサクセス・フルエイジングであると定義しているものもある。 「サクセスフル・エイジング」はイコール「活動理論(activity theory)」ではないようだ。小田によれば、活動理論も離脱理論もサクセスフル・エイジングの一形態であり、
離脱理論は今から約50年前に、Cumming & Henry(1961)によって提唱された理論で、「高齢者は死に備えて社会活動から離れ、社会的環境を縮小することで、主観的幸福感を維持する」と仮定しているという。その後、Peckの発達理論、「補償を伴う選択的最適化」、「社会情動的選択性理論」なども提唱されているというが(こちらの展望論文参照)、話が大きくなるのでこれ以上は立ち入らない。元の話題の「孤立」ということから言うと、独居や孤独はいっけん離脱理論のようにも見えるが、中年期から孤高のライフスタイルを維持し続けようとするのであればむしろ活動理論的であるとも言える。但し、いずれにせお、当事者が心理的適応の理論を種々比較した上で「私は○○論者だ」と表明しているわけではなく、個々人が自己の経験や置かれている環境の中で、最善の道を探り、その結果がある「理論」やモデルに合致しているというだけに過ぎない点に留意する必要がる。 次回に続く。 |