じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 1月18日の朝、太陽の上にうっすらと光の柱が見えた。ごく弱い「太陽柱現象」かもしれない。ちなみにこの日の岡山は、最低気温マイナス1.3℃、最高気温5.9℃で、この冬第一級の寒波に覆われた。


2013年01月18日(金)

【思ったこと】
130118(金)質的研究・文化心理学の交差点:ヤーン・ヴァルシナー教授を迎えて(11)白井氏の話題提供(2)人生はどのように立ち上がるか

 1月17日の日記の続き。話題提供ではまずタイトルに含まれている「時間的展望」についての説明があった。これは「ある時点における心理的未来および過去の見解の総体」として定義される。過去と現在と未来を関連づけることにより、辛い体験が将来への展望となることもある。不登校になった若者が、「不登校の気持ちのわかる教師になる」という未来を描くことで、不登校の体験が大切なものに思えてくるというような例が挙げられていた。この例に限らないが、一般論として、過去の辛い体験は、それを忘れ去ることによってではなく、将来に活かせる貴重な体験であると意味づけ、関連づけることで、明るい未来を切り開く礎になるということは言えると思う。

 この時間的展望をふまえた上で、人生はどのように立ち上がるかが論じられた。人生の転機というのは、しばしば、後から振り返って作られるものであり、何かがうまく行かないことが逆に別の道への転機となりこれが大成功をおさめることがある。具体例としては、大病によってオペラ歌手になることを断念した岸洋子がシャンソン歌手になった経緯が挙げられていた。

 余談だが、この「立ち上がる」の英訳は当初「arise」となっていたが(←白井氏の論文のタイトルの英語訳では「How do our lives arise?」というのがある)、ヴァルシナー先生から「create」のほうがよいという示唆を受けたという。その後指定討論では、やまだようこ氏から「generate」ではどうかというような示唆があった。このあたり、主語や他動詞を明確にする英語表現と、「おのずからなる」というニュアンスを大切にする日本語表現とのギャップがあり、文化の違いを色濃く反映しているようにも思えた。

 そのあと、「二重の景観」(Bruner,2002)や、自己の連続性、さらに、白井氏御自身が開発された「前方視的再構成法面接(以下「PRM」と略す)」の話題などが紹介された。PRMでは、回顧型の手記を書いてもらい、当時はどう見えていたか、いつ起きたか、予期せぬ出来事はなかったかを問い直し、そうしたゆらぎや対立の保存から人生を構築していくというようなお話であった。また、2012年の9月には第1回・国際時間展望学会がポルトガルで開催されたとのこと。こういう国際的なカンファレンスがあるということは全く知らなかった。

 以上、なかなか意義深いお話であったが、私自身は何度かWeb日記に書いているように、人生にはそれほどの一貫性は求めないし、一人の人間の進路を大きなケヤキの枝に喩えるならば枝分かれがそれぞれの選択点であり、枝の先端が現在可能な姿を示しているといった「人生のカタチ」を描いている。(2012年12月17日の日記参照)。しかも、ある程度歳をとると、不可逆の時間の流れを直線的に進む人生から、時計の針が回るような四季循環型の人生(そして、年が明けても再びその針が動き続けることを喜べるような)に変わっていくという考えもある。(1月2日の日記参照。)

次回に続く。