じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 一般教育棟周辺の環境整備工事により、一時的に移動された南極の“蜂の巣岩”。写真右はもとあった状態(2011年4月16日撮影)。工事後はどこに「安置」されるのだろうか。

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2013年03月13日(水)

【思ったこと】
130313(水)第18回人間行動分析研究会(7)損失最小化ゲームにおける集団マッチング(2)

 昨日の続き。

 この実験では、実験協力者の数が異なると損失(あるいは対照条件の利得)の量が異なること、1人でも特異な行動を示すと全体に影響が及ぶことなど、さらに検討を要する点がいくつかあったが、全体としては「利得最大化ゲームだけでなく、失うポイントを最小化することを求めるゲーム(損失最小化ゲーム)でも集団マッチングが見られる」という結論となった。

 ではなぜ、集団マッチングが起こるのか? フロアからの質疑のさいに私自身も質問させていただいたことであるが、実験参加者個々人が一定の確率のもとで「Win Stay--Lose-Shift」方略をとったとしても最終的には集団マッチングの比率で安定化する可能性がある。つまり、単に、損失が増えてきたら選択をシフト(切り替え)、損失が減少またはきわめて少ない時はステイ(同じ選択を続ける)という形でも、そういう比率になるのではないかということである。実際には、実験参加者個人個人の選択パターンを分析したり、他者の動向が見えない条件(個室で実験)との比較、あるいはシミュレーション実験をやってみる必要がある。

 例えば、実験参加者が3人で、赤と青それぞれのカードの規定ポイントが−10ポイント、−5ポイントだったとする。この時、3人のうち1人が赤、残り2人が青を選ぶと、それぞれの損失は10ポイントずつで平等となる。次に、赤を選んだ1人が青にチェンジすると、3人の損失は−5×3=-15ポイントになってしまう。損失が増えたことにより2名が赤にシフトすると、次回には赤選択者は−20ポイント、青選択者は−5ポイントとなる。さらにその次の回には、赤選択者のうち1名が青にシフト...ということで、「Win Stay--Lose-Shift」方略が100%ではなく70%くらいの確率(残り30%はランダムに選択)で採用されていると、常に変動はあるものの、ほぼ、赤:青=2:1という比率に収束していくのではないかと予想される。

 いずれにせよ、他者の動向が見えていることがどの程度の弁別刺激になっているのかはチェックする必要があると思う。

 ということで、以上をもって、今回の人間行動分析研究会のメモ・感想の連載はこれで終わり。3月3日の日記にも述べたように、この研究会では、御自身の研究発表にとどまらず、そのテーマをなぜ選んだか、どこが面白いのか、他の分野の研究者とは着眼点がどう違うのかといったお話を伺うことができて大変参考になった。来年度以降も、日程の都合がつく限りは、参加させていただきたいと思っている。