じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 一般教育棟構内(津島東キャンパス)南東端エリアで環境整備工事が続いている。写真上は北西端から、写真下は東端から工事現場を見渡したところ。岡大七不思議の1つ、「謎の橋」と水の流れていない「謎の小川」はすでにコンクリート排水ブロックに置き換えられている。


2013年03月27日(水)

【思ったこと】
130327(水)日本行動分析学会「熊野集会」(10)地域と共に生きる〜地域通貨〜(3)

 3月26日の日記で述べたように、「エコマネー壱神」と「TANKAKUエコマネー」はいずれも、地域限定という点では広義の地域通貨の要件を満たしているように見えた。またいずれも、商店街への顧客獲得、常連客拡大という点では一定の成果を上げているようであった。

 そのいっぽう、本来の地域通貨、あるいは当初提唱されていた頃の「エコマネー」の理想から言えば、その効果はかなり限定的であるようにも思える。

 いくつかのサイトに「残骸」が残っているように、当初提唱されていた頃の「エコマネー」は
  • 貨幣との交換はできない。
  • 地域社会で環境、介護、福祉、コミュニティーなどについて、新たに相互扶助的な人間関係を創造し、互恵のシステムを構築する媒介として活用。
というような理想があったように思う。(こちらこちらや、こちらの論文を併せて参照されたい。) もっとも、提唱者の加藤さんは、その後、「貨幣との交換はできない」というのは前提ではないと明言され、さらに、地域活性化やEXPOエコマネー導入のほうに力を注がれるようになった模様であり、黎明期に注目されていたいくつかの地域のエコマネーはほぼ「当初の目的を達した」などの理由で活動を終了し、現在でもアクティブな状態を維持している地域は私の知る限りでは見当たらないように思う(こちらのリスト参照。) なぜ活動があまり発展しないのかについては、明日以降に再度考察したいと思う。

 もとの話題に戻るが、まず「エコマネー壱神」では、美化清掃活動に対して「エコマネー壱神」が支払われるという仕組みであった。もし、そのような活動を強化するということが目的であるならば、行動分析学的な効果検証が必要であろう。すなわち、まず、一定期間、美化清掃活動のベースラインを測定。続いて、「エコマネー壱神」導入後に、参加者数や清掃活動時間が増加したのかどうかを測定。その後、ABABデザインに基づいて、第二ベースライン期間を設定することが求められる。

 もっとも、神社境内の美化清掃は、本来、
  • その活動により、境内がきれいになった、という自然随伴性(nature contingency、あるいは行動内在的強化随伴性)で強化されるべき。
  • 信心深い人であれば、その活動によってもたらされるスピリチュアルな体験が好子となるべき。
という気がしないでもない。清掃活動が「エコマネー壱神」のような付加的好子だけで強化されていることが検証されたら、逆にむなしい気がしないでもない。もちろん、地元商店街との絆を深めるという別の効用があることは評価するべきだとは思うが。

 もう1つの「TANKAKUエコマネー」のほうは、地元商店街によるボランティア団体への補助金という性格のものであると理解した。但し、単なる寄付金と異なり、地元商店街以外では必要物品の購入ができない。その分、地元との絆を深める効用があるとは言えよう。とはいえ、ボランティア団体に参加している人たちの個々の行動に対して支払われる通貨ではないので、企画・司会の浅野先生が前振りで言及されたトークンの効用とは直接関係なさそう。悪く言えば「ひもつき補助金」、よく言えば「ボランティアと商店街とのコラボ」(←スライドにもあった)ということになる。

次回に続く。