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【連載】 チコちゃんに叱られる!「押したくなるボタン」とアフォーダンス理論 昨日に続いて9月20日放送の、チコちゃんに叱られる!の話題。本日は、 この疑問に対する正解は「ボタンが押せと誘っているから」であり、アフォーダンス理論による説明が行われていた【長谷川による要約・改変】。
以上が番組の概要であるが、ウィキペディアの該当項目でも指摘されているように、最近では、ギブソンが提唱した「本来のアフォーダンス」とは異なり、 「人と物との関係性(本来の意味でのアフォーダンス)をユーザに伝達する事」平たく言えば「人をある行為に誘導するためのヒントを示す事」というような意味で使用される事がかなり多い。「わかりやすい引き手を取り付けることで、タンスが引いて開けるという動作をより強くアフォードする」等というニュアンスの記述もしばしば見られる。これらはギブソンの本来の意図からすれば全くの誤りである。という点にも留意する必要がある。 ちなみに、(誤用された意味での)アフォーダンス原理は、又吉直樹のヘウレーカ!で紹介された「仕掛学」【8月5日の日記およびそれ以降の連載参照】でも各所で取り入れられているようである。 もっとも、(誤用された意味での)アフォーダンスや「仕掛学」で紹介されていた事例の多くは、後天的な学習の中で起こりやすくなった「オペランダムと行動」との関係、あるいはシェイピングの般化として行動分析学的に体系的に説明することができるように思う。番組で取り上げられていた「押したくなるボタン」というのも、幼少時から突起物を押すという行動によってさまざまな強化子(好子)が随伴することを体験していくなかで般化していった行動であり、原始的な生活を送っているアマゾン奥地の人々を相手に実験しても必ずしも押すという行動は誘導されないように思われる。 洗面所で手を洗う時の動作の変遷を考えてみよう。私が子どもの頃は「ハンドル」を左にひねって水を出し、右に回して止水する蛇口しか存在していなかった。その後、レバー型ハンドルが登場し、吐水と止水はレバーの押し下げで操作されるようになってきた。さらに最近では蛇口の下に手を置くだけでセンサーが反応して水が出るようになった。つまり、時代によって、
もちろんだからといって(誤用された意味での)アフォーダンス理論が全くムダで冗長であるというつもりはない。より使いやすい道具、より自然な動作を導きやすい工業デザインというのは大切であり、そのヒントとして貢献することは確かであろう。 次回に続く。 |