じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 9月22日は秋分の日。前日に続いて、美しい夕焼けが見られた。なお、翌23日の朝は雲が多く、朝焼けも日の出の瞬間も見られなかった。

2020年9月22日(火)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(11)確立操作に関する1999年のシンポ(2)当事者自らが発する「確立操作的行動」

 9月21日の続き。今回からは、1999年に、日本行動分析学会第17回年次大会(北海道医療大学)で行われた、

●「動機づけ」の行動分析:確立操作の概念の再検討と応用可能性

というシンポについて取り上げることにしたい。9月14日の「隠居人的思い出話」でも述べたように、当時はおそらくOHPで発表が行われており、電子媒体での話題提供資料は残っていなかった。もし、抄録が公開されていなかったら、何を話題提供したのか、すっかり忘れてしまうところであった。

 さて、長谷川の話題提供(抄録の26ページ)では、まず、確立操作概念導入の有用性として、
  1. 行動が頻繁に生じている時、それをひっくるめて「動機づけられている」とせずに、強化の随伴性や、弁別刺激の有無、オペランダム、そして確立操作というように、関与 している諸要因を分離し、制御可能な形で具体的に記述できる点
  2. 確立操作が好子 になるか どうかを判断基準として、「寒い時にストーブのスイッチを入れるのは、好子(暖気)の出現ではなく嫌子(寒さ)の除去の随伴性である」とする見解や、ルール支配行動において、「ルールとは、そのルールに従わないことを嫌子にするような確立操作 (である)」と考える立場が現れるな ど[いずれも杉山他 (1998);Malott et aL(1997)]、別の視点からの有用性も高まっている。
という2点が挙げられていた。もっとも、上記2.では複数の有用性を列挙しており、「別の視点からの有用性」は他にもあることが示唆されるが、当時、何を挙げていたのかは記憶に残っていない。

 上記のうち2.では、「ストーブに火をつける行動は、暖気の出現で強化されるのか、それとも、寒気の消失で強化されるのか」という興味深い話題を取り上げている【長谷川版の補遺を合わせてご参照】。この議論がなぜ確立操作に関係しているかについては、杉山ほか(1998)の141頁あたりから取り上げられている通りである。要するに、

●強化子(好子)出現による強化の場合には、その強化子(好子)の効果を高めるような状況自体も強化子(好子)になる。「当該の行動随伴性の確立操作自体が強化子(好子)になる」

ということである。その例としてよく挙げられるのは、「食事の前に、お腹を減らすために、ひと歩き」という行動である。この場合、ひと歩きするという行動はその直後に提供されてる料理によって強化されているわけではない。その料理の強化子(好子)としての機能を高める効果、つまり確立操作として機能していると考えられる。ちなみに、ストーブに火をつける行動が暖気によって強化されているとするなら、暖気の「強化子(好子)としての機能」を高めるたに、「屋外に出て寒気に身を晒す」、「裸になって冷水を浴びる」といった「確立操作的行動」が発せられるはずであるが、そういうことをする人はまず居ない【但し、サウナ風呂で冷水との交替浴をする場合はある】。

 もっとも、ある事象の強化機能を高める「確立操作的行動」が常に生じるかどうかは分からないところがある。例えば、金もうけで強化されている大富豪が、獲得するお金の価値を高めるためにわざと泥棒に金を盗ませる行動をとるとは思えない【資産をすべて譲り渡して隠遁生活に入ることで自然生活の価値を高めるという人は居るかもしれないが】。

 いずれにせよ、どういう文脈のもとで、何によって「確立操作的行動」が強化されるのか、それとも、「確立操作的行動」というのはもっと別の随伴性で説明できるのか、というのは興味深い問題であると思うのだが、1999年のシンポから20年以上経った今ではどう議論されているのか、隠居人の私としては把握できていない。

 不定期ながら次回に続く。