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岡大・時計台前の彼岸花(赤)と白花曼珠沙華がようやく咲きそろった。白花曼珠沙華のほうはまもなく終了。いっぽう赤花のほうはまだ蕾がたくさん出ている。紅白で見られるのは今だけかも。 |
【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(17)セッティング事象とは何か?(3)事象と要因 9月30日に続いて、 武藤崇 (1999).「セッテイング事象」の概念分析一機能的文脈主義の観点から一. 心身障害学研究, 23, 1313-146. についての感想。なおこの論文はつくばリポジトリから無料で閲覧できる。 さてBijou & Baer (1978, 26ページ、武藤訳)によれば、セッティング事象とは、 ●ある刺激一反応の相互作用的の連続(sequence) が生じる際のセッティング文脈、あるいはセッテイングであり、またそれは、ある相互作用に含まれる特別な刺激・反応機能の強さや特性を変化させることによって、その相互作用の連続に影響を与える(pp.26)【ものである】 と定義されているという。上記の定義は、簡略化すると「セッティング事象とは、セッティング文脈あるいはセッティングのことである」となって何だかトートロジーに陥っている気がしないでもないが、定義文中の「セッティング」を「状況」、「背景」、「生活環境」といった言葉に置き換えると何を言いたいのか分かってくるだろう【9月29日の日記参照】。 さて、武藤論文のTable 2(136ページ)には、Bijou & Baer (1978)によるセツティング事象の包括的リストが挙げられているが、その内容はまことに広範囲に及んでいる。武藤論文のAbstractの冒頭にも記されているように、結局のところ、セッティング事象というのは、三項随伴性(あるいは行動随伴性)という分析枠に、文脈的要因を位置づける実践的なツールのようなものと考えればよいのではないかと思われる。 武藤論文では続いてDictionary of Behavior Therapy Techniques (Bellack & Hersen,1985)の記載が引用されている。 セッテイング事象とは、個人のレパートリーに既に存在する行動の生起を促進したり、抑制したりする、社会的・環境的な先行事象である。それらは弁別刺激より複雑で、行動と時間的に離れている。 なお上記の記載では「先行事象」、「行動と時間的に離れている」というような時系列的な特徴が記されているが、続く引用では、先行事象を2つのタイプに分けた記述があり、そのうちの1番目は、 セッティング事象の第一のタイプは、食物の遮断化や特定の人や物の有無などのような、行動に先行、あるいは同時に存在する環境内の直接的な要因のことである。となっていて、先行事象ばかりでなく「同時に存在する環境内の直接的な要因」も含まれているとするような記述がある。いっぽう2番目のタイプとしては、 セッティング事象の第二のタイプは、影響を与えることとなる行動から時空間的に離れて生じ、かつそのセッテイング事象にはその個人の反応も含まれるというものである。例えば、子どもの屋外での活動的な遊びが、屋内に入ったときの破壊的行動の機会をセットするだろう。仕事での不愉快な相互作用はその後の家庭での不愉快な相互作用の生起確率を上げるかもしれない。【以下略】というように時空間的に離れた事象が挙げられている。 ここからは私の感想になるが、まず、「同時に存在する環境内の直接的な要因」と「当該の行動から時間的に離れて先行する要因」を「セッティング事象」という同じ言葉で表してよいのかという問題があるように思う。 もう1つの問題は、「事象」と「要因」の区別である。9月11日の日記に述べたように、手続段階の用語体系と、理論段階での用語体系は区別されなければならないというのが私の持論である。あくまで私個人の用法であるが、
ということで、セッティング事象という概念も、実践的な利便性に配慮しつつ、適用可能という点での有用性の観点から検討されるべきものであると私は理解している。 不定期ながら次回に続く。 |