Copyright(C)長谷川芳典 |
|
5月11日の日記に記したように、岡山市では65歳以上の高齢者対象のワクチン接種予約が開始され、私は初日にWeb予約を完了した。その後5月12日に、岡山市から「追加のお知らせ」という封書が届いたので、何のお知らせなのかと開封したところ、内容は、画像の通りであり、
|
【連載】サイエンスZERO「最新リポート!“夢”の科学」その2 MCH神経による記憶消去 昨日に続いて、サイエンスZEROの表記のテーマについての感想と考察。 放送では、ホブソンやソームズに続いて、広島大・小川先生の睡眠実験室が紹介された。実験参加者に実際に睡眠してもらい、脳波でその状態を記録。REM睡眠の脳波が確認された時点で参加者をブザーで起こして、夢の内容を語ったり気分の評定してもらうという方法であった。脳波計でフォローしながら、ホヤホヤの夢の内容を記録していくという方法はユニークであったが、記録された夢内容の比率は、睡眠実験そのものに関する夢が11%、広義の実験関連場面の夢は60%に達しており(睡眠実験11%、大学19%、睡眠以外の実験2%、学校22%、病院6%)、日常生活の中でのごく普通に見る夢とは隔たりがあることが示されていた【当時の卒論生の未公表データ】。この卒論研究が最終的にどのようにまとめられたのかは不明だが、夢の内容がどういうカテゴリーであったかという比率自体は、私はあまり意味があるとは思わない。それぞれの夢がどういう文脈で見たものであるのか、つまり、その人が、実験直前にどういう体験をしていたのか(人間関係上重要な出来事があった、テレビで衝撃的な映像を見た、試験勉強に追われている、...など)という個体別の文脈を精査する必要がある。また、実験研究として行うのであれば、寝る前に特定の写真や、映画・ドラマなどを見せる条件、何らかの作業を行う条件、何もしない条件などを設定し、見た夢の内容にどういう影響を及ぼしたのかを比較する必要があるだろう。 放送ではさらに、夢はなぜ忘れやすいのか、ということに関連して、 Izawa, et al. (2019) REM sleep-active MCH neurons are involved in forgetting hippocampus-dependent memories. Science, 365, 1308-1313. という論文が紹介された【無料で閲覧可能】。放送では、この論文の共著者のお一人、山中章弘先生(名古屋大学)が登場され、カギとなる、MCH神経について説明された。MCH神経は視床下部に存在し、食欲を調節する神経として考えられていた。ところが2009年以降、MCH神経のうち65%が、食事とは無関係の睡眠中にも活発化していること、これらが記憶の中枢である海馬と繋がっていることが分かってきたという。研究で使われたのは、オプトジェネティクスという方法であり、マウスの脳に光ファイバーを入れ、遺伝子操作された神経細胞に光りをあてることで、MCH神経の働きを操作することができる。放送で紹介されたのは、マウスがバナナのおもちゃに対する記憶を調べたものであった。
もっとも、この実験研究は、睡眠前の実体験の記憶が睡眠中のMCH神経の働きで消去される(MCH神経の働きを止めれば記憶が残る)ことを示したものであって、睡眠中の夢が忘れやすいこととは直接関係ないように思われた。むしろ、これを応用するというのであれば、例えば、暗記科目の期末試験の前夜、何らかの電気的刺激、もしくは何らかの薬によってMCH神経の働きを止めておけば、翌日の試験で好成績を取れるだろうというような話ではないかと思った【あるいは、暗記科目の勉強をした夜は、ぐっすり眠るよりも徹夜してそのまま学校に行ったほうが、MCH神経が活動しなかったことによりたくさん記憶が残っている?】。 次回に続く。 |