じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 日曜日の昼食時は、毎週、NHK杯将棋トーナメントを観戦しているが、今期からAIの評価値が表示されるようになり、ますます楽しみが増えた。早指し棋戦のため、棋士は必ずしも最善手を指すことができない。それに伴って、評価値が大逆転することがあるが、5月30日放送の飯島栄治八段(先手)×大橋貴洸六段(後手)の対局(村山慈明七段解説)では、終盤の評価値が大きく変わり、手に汗にぎる熱戦となった。
 画像は、
  • @→A:後手はずっと優勢を保っていたが、悪手により評価値90%が22%に。
  • B、C:先手の悪手により、再び後手の評価値が77%、さらに84%と一挙に逆転。
  • D:後手が手を抜いた瞬間、先手に詰み(詰めろ?)の手筋が出現し、先手の評価値が99%に。
  • E、F:先手が詰みをミスしたため、評価値が2%、さらに1%に大逆転
  • G:後手がミスをしたため、詰みの手筋が再出現し、先手の評価値は99%に。このあと、先手が正確に読み切って勝利。
なお、ここに挙げた画像は評価値の推移をキャプチャしたものであり、それぞれの盤面そのものの評価値とは対応していない場合がある。念のため。

 放送では、対局者が解説の村山七段が予想した通りの手を指したにもかかわらず評価値で劣勢になった場合もあった。NHK杯のような早指しでは、AI通りの読みができるのは、藤井聡太二冠だけかもしれない。

 将棋に比べると囲碁の場合は、対局が進めば進むほど優劣が確定してくるので、評価値がコロコロ逆転することはないと思われたが、直近行われた清成九段(白番)×潘八段(黒番)の対局をNHKプラスで再生してみると、中終盤はおおむね白番が優勢であったが、いっとき黒番の評価値が76%に急上昇し、その後は白番が再び優勢となり勝利、というようにけっこう大きな変動があった。しかし、将棋のように、終盤での一手一手で大きく変動することは無かったようだ。私のようなヘボ囲碁のレベルでは、ハメ手で大逆転することもありうるが、プロとなれば、数目の取り合いで勝敗が決まる。評価値の変動は終盤になればなるほど少なくなってくるのではないかと思われるのだが、どうだろうか。

追記]いつもご指導いただいているこちらの解説では、画像のFの場面では先手に詰み筋があり、先手1%という評価値はAIのバグではないかと指摘されていた。

2021年5月31日(月)



【連載】#チコちゃんに叱られる!「ジョルダンヒレナガチョウチンアンコウ」「アカミミガメ」「なぜフグには毒がある?」

 昨日に続いて、5月29日(土)朝に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。
 本日は、1
  1. 旅館の窓際にある「あのスペース」ってなに?
  2. 打ち合わせはなぜ「打つ」?
  3. 愛を深める夫婦円満テクニック「ジョルダンヒレナガチョウチンアンコウ」「アカミミガメ」
  4. なぜフグには毒がある?
という4つの話題のうち、残りの3.と4.について考察する。

 このうち3.については、まず、ジョルダンヒレナガチョウチンアンコウのオスは極端に小さく、メスの体にくいついて寄生生活を送る様子が紹介された。ウィキペディアによれば、これはすべてのチョウチンアンコウ類に共通した特徴であるという。深海では、同じ種類のオスとメスが遭遇する確率はきわめて小さく、またいったん離ればなれになると再会するのも困難と思われるので、こういう生態で繁殖が保たれてきたのであろう。
 アカミミガメは、ウィキペディアでは、「水中でオスは前肢をメスの頭部の前で震わせて求愛し、メスが動きを止めると交尾する」と記されているが、番組では、「オスがメスの頭を長い爪でぷるぷるする」と表現されていた。前肢を震わせる視覚刺激が重要なのか、それとも、頭をぷるぷるする触覚刺激が重要なのかは、よく分からなかった。

 最後のフグの毒については、私は「有毒成分を保有することで食べられにくくなるメリットがあるから」と考えていた。しかし、番組では、フグの毒は肝臓や腸などの内臓に含まれているが、これらは食べられた後、つまり自分が死んでしまった後で作用するため、身を守るためとは考えにくいと指摘されていた。確かに、毒を保有しても個体ごとの防衛手段にはならない。しかし、フグの毒で死にかけた魚が、その後、同種のフグを捕食しなくなれば、結果として、子孫を守ることに繋がることは間違い無い。じっさい、蛾や蝶の中には体内に毒を保有することで鳥に食べられないように身を守ったり(例えば、カバマダラ)、さらにはその有毒な蝶や蛾の羽の模様を擬態するものまである(例えばツマグロヒョウモン)と言われているほどであるから、「有毒成分を保有することで食べられにくくなるメリットがあるから」は一概には否定できないように思われた。

 もっとも、最近の研究では、フグの毒は産卵期に多く保有され、また孵化した赤ちゃんの表面にも毒が含まれていることが明らかにされてきたという。ということで、自分自身を守るために毒を保有するというメリットの有無にかかわらず、卵や稚魚を守るという大きなメリットがあることは間違いなさそうだ。ということで、番組の正解は「フグに毒があるのは母の愛supported byダーウィンが来た!」と説明された【「supported byダーウィンが来た!」というのは、「ダーウィンが来た!」の番組の画像を借用したため】。

 なお、フグは自分自身では毒を作れず、毒入りの餌を食べることで体内に毒を蓄積していく(なので、餌が管理された養殖フグは無毒)。毒入りの餌を食べても中毒しないのは、一般的な生物と異なりフグは特殊なタンパク質を持っていて、毒とは結合しにくいからと説明された。もっとも、ウィキペディアには、
フグはテトロドトキシンに対し高い耐性を持っているため、フグ自体が中毒することはない。ただし自然に蓄積する濃度のテトロドトキシンに耐えられるという意味であって、人為的に高濃度のテトロドトキシンを与えたならばフグも中毒をおこす。
【中略】
養殖時にテトロドトキシンの含有がない餌を与えると、咬み合いなど異常行動を引き起こすことが明らかになっている。 また異常行動時にテトロドトキシンを含有する餌を与えると収束することから、正常な活動のためには一定のテトロドトキシンが必要であるという見方もある。フグ毒については解明されていない部分が多いのが実情である。
という記述があり、まだまだ謎が多いように思われる。