じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 最近、岡大構内でエキナセア(ムラサキバレンギク)をよく見かけるようになった。宿根性のほか実生でもよく殖えるようだ。


2021年7月3日(土)



【連載】ヒューマニエンス 「“天才” ひらめきのミステリー」その6 マインドワンダリングの功罪

 昨日に続いて、6月3日にNHKのBSPで初回放送された、

ヒューマニエンス〜40億年のたくらみ〜「“天才” ひらめきのミステリー」

についての感想と考察。

 番組では、グリア細胞に続いて、「IQの高さは天才を生むか?」という話題が取り上げられた。

 番組の終わりのあたりでは、社会脳の著作などで知られる苧阪直行先生が哲学の道を散策しておられる映像が流れていた。苧阪先生は、一見何もしていないような脳の状態(=デフォルト・モード、遊びの脳の状態)が、ひらめきを得るために必要であると説いておられた。これまで脳は、課題を遂行している状態で活性化し、課題の間の時間帯は休んでいると思われてきたが、近年、課題を遂行している時には下がり、休んでいる時に活性化している部位があることが分かってきた。具体的には、内属前頭前野、また、後部の帯状回と、(下部)頭頂小葉の一部が盛んに働いているという。これらが「デフォルト・モード・ネットワーク」を構成し、ひらめきを生み出しているという。
 デフォルト・モード・ネットワークはマインドワンダリングを生み出す。これは、「心がふらふらと思いつくままに散歩する」状態であり「心の散歩」とも言える。この状態のもとで、さまざまな記憶や感情がふわふわと浮かび、アイデア同士が結びつき、新たなアイデアを生み出す。ニュートンのリンゴ(→万有引力)や、アルキメデスの入浴(→浮力)が挙げられていた。
 リモート出演された苧阪先生によれば、私たちの脳は、普通、問題解決や課題解決のために動いているが、それらの活動が下がってくると「考えない脳」であるデフォルト・モードが活性化する。こうしたシーソーモードの入れ替わりを持続するためにも、目の前の仕事を完全に忘れた“自由空想時間”が大切であり、1日に2時間から3時間程度確保する必要があるというように説いておられた【長谷川の聞き取りのため不確か】。
 なお、ひらめきのメカニズムについては、すでに大脳基底核の働きが紹介されていたが、田中啓治先生によれば、デフォルト・モードのひらめきはいつ起こるか分からないが、大脳基底核由来のひらめきのほうは、確実に浮かんでくる直観という点で違いがあると説明された。

 ここからは私の感想・考察になるが、マインドワンダリングについてはこの日記でも何度か言及したことがあった。また、苧阪先生はマインドワンダリングを「心の散歩」と訳されていたが、こちらの本にも記されているように、マインドワンダリングは「心の迷走」と訳されることもあり、キラーストレスを増幅させるとも指摘されている。脳科学の専門的なことは分からないが、同じ用語が使われていることからみて、マインドワンダリングは、日頃から思索にふけっていて、かつ精神状態が安定している人には良いひらめきをもたらすが、逆に、日頃から仕事や人間関係で悩みを抱えている人にとってはストレスをもたらす可能性もある。そこでマインドフルネスが登場してくるわけだが、マインドフルネス自体が、ひらめきをもたらすかどうかはよく分からない。