じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 半田山植物園が長期休園となったため、代替のウォーキングコースとして旭川土手を歩いた。この日の最高気温は33.0℃。ようやく夏空が戻ってきた。

2021年8月23日(月)



【連載】こころの時代〜宗教・人生〜「“ノアの箱舟”をつくる人」その2

 昨日に続いて、8月22日(日)の朝5時から放送された表記の番組についての感想と考察。本日は、備忘録を兼ねて、印象に残ったお言葉などを箇条書きで記す。今回は前半部分。
  1. 人間と離れた存在であればあるほど関心が湧く。そういった中で彼らの世界観を理解しようとしてきた。虫とかトカゲとかカエルとかの弱い動物と暮らすことでその視点が養われる。視野が草むらから、地べたに近いほうから広がっていく
  2. 普段は地味なのに繁殖期だけくま取りしたような色彩になる。形態の特異さとか奇っ怪な形とか生ける芸術であって、そういったのがすべて進化のなかで、必然に生まれてくるのが興味深い。
  3. 彼らの環世界っていうものを理解できないまでも必死に理解していくってことですよね。それぞれの動物の主観っていうものを想像しなきゃいけない。
  4. 上掲で「環世界」が使われたことからの発展として、番組ではユクスキュルの言葉が引用された。
  5. 爬虫類・両生類の多くは生まれた場所を離れることなく、生きて死ぬ。1つの森、1つの沼、限られた環境が彼らにとっての地球のすべてだ。「生息地をリスペクトした環境を僕らは組み立てなきゃいけない。カエルの視点でミニ地球の空間を作ってやる


 ここからは私の感想になるが、まず、人間に近い動物と、人間から離れた動物への関心という点では、確かに後者のほうが発見や驚きが大きいとは思う。例えば、ペットの犬や猫であれば、その日にどういう行動をしているか、何が好みなのか、どういう状態が快適であるのかは大体予想できる。サバンナに暮らす野生の哺乳類であっても、人間の子育てと似ているところがあり、だからこそ擬人化された物語を作ることができるのだ。ところが、昆虫や爬虫類、両生類となると擬人化では説明できない。
 なお、多くの人がなぜヘビを怖がるのかについては諸説あるが、高校生の頃、国語の問題文として読んだエッセイの中に「彼らの日常の様子が想像できないから」という説が挙げられていたのが私の記憶に残っている。

 動物たちが繁殖の際に大きく変身することはいろいろな種で知られている。確かに繁殖は一世一代の大舞台であり、交尾という目的を果たして一生を終える生物も少なくない。もっとも、家庭環境で繁殖を試みるというのはなかなか大変なことだ。
 私自身は何度かハムスターを繁殖させたことがあるが、一番の問題は生まれた子どもたちの引取先を探すことである。ハムスターのオスとメスを同じケージに入れると、オスは大変喜んでメスの後を追い回す。しかし、オスが幸せなのはごく僅かの期間であり、その後、妊娠したメスはオスの足に噛みついたりしてケージからオスを追いだそうとする。その後出産すると、子育てに専念するが、子どもが成長すると同じケージでは飼えなくなる。受け入れ先が見つからないと、家の中には5個〜10個ものケージが必要となり、もうそれで限界。これは、観賞魚のベタの繁殖についても言える。猫の場合も同様で、不妊手術をしないと子どもがどんどん増えてしまう。
 なので、動物園で絶滅危惧種の動物の繁殖に携わるというお仕事は、大変なご苦労があるとはいえ、やはり、うらやましい。

 環世界、あるいはその提唱者であるユクスキュルについては、動物行動学関連で耳にしたことがあるが、関連書を学んだことは無いため何とも言えない。
 一般論として、さまざまな動物の行動には共通の原理があり、人間の言葉で体系的に理解することは不可能ではないと思う。但しそれは、人間自身が観察可能、測定可能、操作可能な概念に基づいて記述されたものであり、人間目線でその動物の行動を予測したり制御変数を同定したりすることはできるが、動物目線でその動物の環境世界を「理解」したものとは言えない。もっとも、法則を記述するためには言語が必要であるゆえ、人間以外の動物が独自の行動理論を体系化することは現実にはできない。宇宙のどこかの惑星で、その星の環境にマッチした言語を使える宇宙人が居たとしたら、その惑星独自の動物行動学を体系化したり、環境世界を記述することはありうるかもしれないとは思う。
 そう言えば、かつて大学院生の頃、私は、食物嫌悪条件づけ(Food aversion learning)の研究に取り組んでいたが、引用させていただいた文献の中に、

Kalat (1977). Biological Significance of Food Aversion Learning. In N. W. Milgram, Lester Krames, Thomas M. Alloway (Eds.) Food Aversion Learning. pp.73-10.

という論文があり【無料で閲覧可能】、その中の74ページにパイオニア10号に搭載された知的生命体向けに刻まれた金属板についての言及があったことを思い出した。果たしてこのメッセージを宇宙人は理解できるだろうか。

 次回に続く。