Copyright(C)長谷川芳典 |
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11月4日の朝の空は大部分雲に覆われていたが、東の地平線のあたりに雲の隙間があり、備前富士(芥子山)の頂上付近に月齢28.4の月をかろうじて見ることができた。新月(11月5日06時15分)の24時間前の月を見たのは久しぶりであった。 その後、美しい朝焼けが見られた。 |
【連載】ヒューマニエンス「山中伸弥スペシャル iPS細胞と私たち」(4)細胞間のハーモニー、ネアンデルタール人との比較 昨日に続いて、10月7日に放送された表記の番組についての感想・考察。 昨日の日記で、前腸、中腸が肝臓、胆管、膵臓が分化・成長する過程に言及したが、その興味深いところは、そこには指揮者や監督のようなセンターは存在せず、また、共通の目標達成をめざしているわけでもないという点である。細胞のかたまりは自律的に相互に作用しながら、結果として全体に役立つ組織を作り上げていくように見えた。番組では、演奏家たちが勝手に集まってハーモニーをもたらすというような喩え話が出たが、私自身は音楽には縁遠いため、直感的な理解には至らなかった。おそらく、洪水の被災現場に経験豊富なボランティアたちが駆けつけた時に、 リーダーや作業日程表が無くても、ボランティアたちの相互作用のなかで、自然に、効果的な役割分担が進んでいくようなものではないかと思われる。 武部先生(東京医科歯科大学)から提供された映像の中に、血液細胞と初期段階の肝臓のやりとりを記録した動画があった。専門的なことは分からないが、赤血球の細胞は肝臓のほうに集まり、肝臓は大きくなっていくというもので、血液の発生と肝臓の成長を示したものであるという。さらに脂肪の組織や血管、神経などを作り出せばそこから完璧な肝臓が生まれる。いずれ末期の肝臓疾患の患者の命を救うことが可能になる。このほか、手足の再生についても研究が進んでいるという。 番組ではそのあと、iPS細胞発見のエピソードが紹介された。これは11月1日に記した通りである。研究の流れを順序だてて紹介するのであれば、このエピソード部分が番組の冒頭に配置されるべきかと思うが、それではiPS細胞に興味のない視聴者は関心を示してくれない。そのこともあって、まず先に、iPS細胞の研究でこんなスゴイことができるという事例を先に紹介し興味を惹くように導入したものと思われる。 番組ではさらに、iPS細胞を使って、ネアンデルタール人の脳オルガノイド(初期段階の脳)を作り、現代人(ホモ・サピエンス)と比較するという研究が紹介された。ネアンデルタール人はおよそ3万年前に絶滅したがその原因はよく分かっていなかった。頭蓋骨の大きさは現代人と殆ど同じであるが、発掘された骨などから解析された遺伝子は現代人と61個違いがあるという。そのうちの1つ、脳の働きを制御するNOVA1遺伝子に注目して脳オルガノイドの働きを比較したところ、ネアンデルタール人の脳オルガノイドは1つ1つが小さく凹凸があるのに対して、現代人の脳オルガノイドは1つ1つが大きくなめらかな円形になっている。電気を流して働きを調べてみると、現代人の脳オルガノイドのほうが、ネアンデルタール人よりも神経興奮時の同調率が4倍も高く、神経ネットワークを作る力が優れていることが分かった。それによって、現代人(ホモ・サピエンス)はネアンデルタール人よりも環境に対応できる力や高いコミュニケーション能力を手に入れ、今のような文明を築くことができたと説明された。 番組ではコミュニケーション能力に注目されていたが、このことは言語能力の発達にも関係している。より精度が高く効力の大きいコミュニケーションを行うためには、言語能力の発達が不可欠であるし、またコミュニケーションが無ければ言語能力は発達しない。 次回に続く。 |