じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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12月8日に続いて「京山皆既日食現象」の写真。12月9日の夕刻にはよく晴れ、旧・京山タワーと夕日がピッタリ重なる様子を撮影することができた。
 また、この日の夕刻、前澤さん搭乗のISSが、ほぼ真上を通過した。天頂付近では金星をはるかに凌ぐ明るさだった。倉敷化学センターによる予報は以下の通りだった。
17 時 36 分ごろ北西の低い空で見え始め, 17 時 39 分ごろ 北東の頭の真上あたり( 76.6 °)でいちばん高くなり, 17 時 42 分ごろ南東の低空へ動き見えなくなる。



2021年12月10日(金)



【連載】瞑想でたどる仏教(14)智の『天台小止観』

 昨日に続いて、NHK-Eテレ「こころの時代」で、4月から9月にかけて毎月1回、合計6回にわたって放送された、

●瞑想でたどる仏教 心と身体を観察する

の備忘録と感想・考察。

 昨日のメモのように、安世高は、中国に仏教を広めたキーパーソン3人のうちの1人とされている。仏教の瞑想を翻訳した背景には出自も影響したと言われている。瞑想の具体的なノウハウを最初に伝え、中国の人たちにとって身近なものとして受け止めてもらえるようにした。

 大乗仏教では、多くの仏像や壁画、磨崖仏などが作られた。より写実的で色鮮やかに視覚化された仏像は仏教を人々にとって親しみやすいものにしたほか、瞑想の対象としても大きな役割を果たした。これは「観想念仏」と呼ばれる瞑想に繋がる。

 さて、2人目のキーパーソンとしては、智(ちぎ)が挙げられた。智は天台大師とも呼ばれるように、天台宗の開祖として知られているが、インドから伝えられた瞑想を誰にでも分かりやすく実践しやすいように整理した。智が説き、弟子の弟子の浄辨が記録した『天台小止観』は、いわば初心者向けの瞑想のガイドブックであるという。中でも革新的であったのは、ブッダの「四念処」を中国の人々のものの見方に合わせて捉え直したことであったという。四念処は、
  1. 身念処:聞こえてきた音を捉える耳など、体の感覚器官に注意を振り向ける。
  2. 受念処:外からの刺激を受けて最初に生じる感覚を観察する。
  3. 心念処:そこから生じる喜怒哀楽などの感情を観察する。
  4. 法念処:瞑想をしている最中に生じる眠気、そわそわといった動きを観察する。
という4つのタイプに分けられていたが、このうちの「受」、「心」、「法」はいずれも心の動きであり、なぜ分けなければならないのか、わかりにくいところがあった。智は、1.の「身」を「暦縁(りゃくえん、身体の行動)」、残りの2.から4.の「受」、「心」、「法」をまとめて「対境(たいきょう、心の働き。感覚器官を通じて受け止めているもの)」と名づけた。この二分法は、西洋的な心身二元論的な考えを持つ現代人にも分かりやすいアイデアであったようだ。

 智はまた、中国で伝統的に受け入れられてきたの概念を瞑想に取り入れた。気はイメージではなく存在するものであり、私たちの体の内部も外側も流れのように存在している何かであって、訓練をしていければ呼吸と連動してきちんとつかまえられるようになる。「気」の練習では、息を吸う時には足元から何かが上がってくるように感じ、息を吐く時には何かが下がるように感じられるというが、こういう「気の流れ」に結びつけて心の働きを観察するというような瞑想であるらしい【←長谷川の聞き取りのため不確か】。

 このように智は、どのようなことを入れることによって中国の人たちによく受け止められるかを考えながら仏教を広めたという点で、キーパーソンとして大きな役割を果たしたようである。

 ここからは私の感想・考察になるが、まず、世界の主要な宗教の中でも、偶像や壁画が飛び抜けて多いことは確かであると思われる。これは、より確かな瞑想を実現する上で有効であったようだ。
 四念処は、私自身がこの説明を受けた時には結構分かりやすい分類であると思っていた。条件反射理論や行動分析学の概念で置き換えるならば、外部からの刺激に対しては、
  1. 受容器自体に注意を振り向ける
  2. 五感そのものをダイレクトに受け止める
  3. 五感から派生する情動的な反応に注意を振り向ける
  4. そこからさらに派生される言語的な反応と、刺激機能の変換に注意を振り向ける
というような区別は不可能ではないと思われるし、また、2.を3.や4.と区別できるようになることにも意味があると思うのだが...。

 不定期ながら次回に続く。