じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 このところ曇りや雨の日が多かったが、4月17日の早朝は比較的よく晴れ、西の空に沈む満月(正確には午前3時55分に満月)を眺めることができた。但し、沈む直前には薄雲に隠されてしまった。
 このほか、南東の空には金星も見えていたが、同様にしばらく経って薄雲に隠されてしまった。また、金星の左下にあるはずの木星も薄雲のせいで見ることができなかった。

2022年4月17日(日)



【連載】チコちゃんに叱られる!「ミントとTRPM8」「温泉まんじゅう」

 4月15日に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この回は、
  1. ミントを食べるとスースーして冷たく感じるのはなぜ?
  2. 日本中の温泉まんじゅうが茶色いのはなぜ?
  3. テレビは明るい所で見るのに映画館は暗いのはなぜ?
  4. 鼻くそを少し上品に言い換える言葉
という4つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.と2.について考察する。

 まず1.のミントについては、放送では「人間の温度の感覚を勘違いさせる謎の物質が入っているから」と説明された。
 人間が冷たさを感じるのはTRPM8(トリップエムエイト)という、皮膚や舌にあるたんぱく質の働きによる。名称の由来は、ウィキペディア英語版では、
Transient receptor potential cation channel subfamily M (melastatin) member 8 (TRPM8), also known as the cold and menthol receptor 1 (CMR1), is a protein that in humans is encoded by the TRPM8 gene.
と説明されていた。TRPM8は28℃以下の温度を感知する冷感センサーであり、これによって体温の低下から命を守ったり、暑い時期に冷たいと感じさせて心地よさを得る働きをしている。しかし、ミントの中に入っているメントールがセンサーに触れると、実際の温度は変わらないにもかかわらず清涼感が得られる。本来28℃に反応するはずのTRPM8がなぜメントールにも反応してしまうのかについては、詳しいメカニズムはまだ分かっていない。よって「メントール=謎の物質」ということになった。もっとも、ウィキペディアによれば、メントールが受容体活性化チャネルを刺激したり、選択的にκオピオイド受容体を作動させたり、局所血管拡張作用によって皮膚のバリア機能を低下させたりする効果を持つことはすでに分かっている。「謎」というのは、分子構造と受容体との関係のあたりのところか。

 メントールを冷たいと感じる脳の錯覚は、トウガラシを食べて熱いと感じる錯覚と同様であるという。2020年2月21日に放送されたように、トウガラシを食べて熱いと感じるのは、高温センサーであるTRPV1(トリップ・ブイワン)がトウガラシの成分カプサイシンに反応するためである。なお、TRPV1の放送のあと、冷感センサーTRPM9と高温センサーTRPV1の研究チームのリーダーであったデヴィッド・ジュリアス教授は、2021年、「温感と触覚の受容体の発見」でアーデム・パタプティアンとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 なお放送では、体当たり芸人の「あばれる君」が、メントールの入っている47℃のお風呂にどれだけ耐えられるかという実験が行われた。メントールが入っていないお風呂では1分10秒でギブアップとなったが、メントール入りのお風呂では3分52秒まで耐えることができたという。もっともこれはかなり危険な実験である。熱さに鈍感になることはそれだけやけどしやすい恐れがある。
 もう1つ、ギネスで「世界一辛いトウガラシ」として認定されているキャロライナ・リーパーと、清涼感MAXのミント(メントールの結晶)を同時に食べた時に、熱いと感じるか冷たいと感じるかという実験も行われた。結果は、解説者が予想した通りで「辛い」となった。




 2.の温泉まんじゅうについては、放送では「伊香保温泉のお湯が茶色かったから」と説明された。元祖の温泉まんじゅうは、今から110年ほど前に伊香保温泉の和菓子屋・勝月堂の初代店主・半田勝三が「湯の花まんじゅう」として売り出したのが最初であった。隣に住んでいた須田さんが江ノ島の「片瀬まんじゅう」を土産に持ち帰り、これをヒントに、1910年に伊香保軌道鉄道が開業した時の新しい名物として開発した。茶色の色は、伊香保温泉の鉄分の多いお湯の色にちなんたもので、実際の温泉のお湯を生地に練り込んだりしたが鉄さびの味がして食べられず、最終的には黒糖で着色した。このまんじゅうが全国に広まったのは、1934年に陸軍特別大演習が行われた時に、昭和天皇に献上して喜ばれたことがきっかけであるとも説明された。

 もっともウィキペディアには、
  • 温泉饅頭の発祥は、群馬県の伊香保温泉の湯の色から来ているというのが定説だが、それ以前に類似のものがなかったという証拠はない。
  • 温泉地の名物となる菓子商品を開発する際に薄皮饅頭が注目され、その中の成功事例が全国普及を後押しをしたことは想像に難くない。
  • 草津温泉では饅頭が売られている店が15店ほどあるが、その中で最老舗は1914年(大正3年)創業の「満充軒さいふ屋」で、昭和初期まで草津白根山麓の香草温泉の湯を生地に入れ、皮は薄い褐色を帯びていたとされる。
というように、伊香保温泉発祥説以外の可能性があることも指摘されていた。

 なお、温泉まんじゅうというのは、本来は温泉の蒸気で蒸し上げたまんじゅうであり、場所によっては温泉に含まれる重曹成分がふっくらとした生地を作るのに適している場合もある。しかしウィキペディアにも記されているように、現在では、温泉の蒸気で作られているまんじゅうはごく一部に限られており、単に「温泉地で売られているまんじゅう」を意味する場合が少なくないようだ。本物の温泉まんじゅうにこだわるのであれば、現地で、温泉の蒸気で蒸し上げられた直後のものを食べることに限るべきであろう。

 次回に続く。