じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 12月26日の日没時、ダルマ型の日の入りを見ることができた。10月18日以来、2カ月ぶり。蜃気楼現象のだるま太陽と異なり、太陽の上側の雲が丸く輝いているものと思われるが詳しい原理は分からない。
 日没後は、前日以上に良く晴れて、南西の空には月齢3.0の月と、明るい星が2つ輝いていた。これまで南西の低い位置に輝いている星が金星なのか水星なのかは確信を持てなかったが、この日に2つとも見えていたことで、左上が水星、右下が金星であると確認できた。今回の配置から、12月15日12月20日12月26日【日付はいずれも日記執筆時のもので、観察日時はそれらの前日】に見えていた明るい星はいずれも金星であったことが分かった。水星は以前にも何度か見たことがあったが、もっと明るかったように記憶している。今回は近くの金星が明るすぎるため、相対的に暗く見えているのかもしれない。

2022年12月27日(火)



【連載】チコちゃんに叱られる!「じゃんけんの直前の迷信行動」「京都の女の子」

 昨日に続いて、12月23日に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 鳥肌ってなに?
  2. じゃんけんの前に両手の指を組んで中をのぞくのはなぜ?
  3. 全国のうかつな事態を大調査!
  4. 動物の数え方で「匹」と「頭」はなにが違う?
  5. 風はどこから吹いてくる?
という5つの話題のうち、2.と3.について考察する。

 まず2.の「じゃんけんの前に両手の指を組んで中をのぞく」という行動であるが、私自身はそのような仕草をしたことはないし、そもそもじゃんけんをする機会が無い。但し、そういう仕草をしている人を見たことはあった。
 じゃんけん研究第一人者の稲葉茂勝先生によれば、グーチョキパーのじゃんけんは日本発祥で世界各国で行われているという。じゃんけんをする前に指を組んでのぞき込むポーズをするのは勝ち手を予想する行為であり、手の中を覗いて穴がなければグー、三角の穴が見えればチョキ、穴が広いときはパーを出せば勝てると言われているという。稲葉先生によれば、この仕草は、「妖怪の正体を見破れるから」であり、江戸時代から伝わる「狐の窓」の影響を受けている考えられる。江戸時代の『新版化物念代記』には、「両手の指で2つの狐をつくり、小指と人差し指を合わせ、薬指と中指をクロスさせ、親指で押さえる」という陰陽師に由来するおまじないが紹介されており、これが、じゃんけんをする前のポーズのもとになったという説が紹介された。もっともこの説については、確たる証拠が見つかっていない。このあとは、愛希れいかと加藤和樹がプロデューサーとディレクターに扮し、この情報を放送するかボツにするかの葛藤を描いたミュージカルが披露され、けっきょく元の疑問についてはうやむやにされてしまった。

 ここからは私の感想・考察になるが、まず今回の解説者の稲葉茂勝先生が「じゃんけん研究の第一人者」とされていることについて調べてみたが、確かに『じゃんけん必勝法 昔と今』や『じゃんけん学 起源から勝ち方・世界のじゃんけんまで』など、じゃんけん関連の本を出版されているようだが、それ以外のジャンルの御著書も多い一方、今回の仕草について学術的な研究成果を発表されているという情報は得られなかった。なお稲葉先生の履歴を拝見すると「1953年東京都生まれ。大阪外国語大学、東京外国語大学卒業。国際理解教育学会会員。子ども向けの書籍のプロデューサーとして多数の作品を発表。」となっていて、私(1952年生まれ)とほぼ同じ世代であることが分かった。

 さて元の「じゃんけんの前に両手の指を組んで中をのぞくのはなぜ?」という疑問であるが、このWeb日記で何度も指摘しているように、これは、
  1. Aという行為(ここでは指を組んでのぞき込む行為)の由来は?
  2. なぜ人々は、Aという行為を続けているのか?
という2つの疑問に分解して考えなければならない。仮に1.が解明されたとしても、それだけでは2.の疑問は解明されない。
 このうち1.については、放送でも紹介されていた「狐の窓」が影響している可能性もあるが、いずれにしても、今の時代、「妖怪の正体を見破れるから」という理由でこの行為を続けているわけではない。

 では、2.の疑問はどのように解決できるだろうか? 行動分析学的にみればこの行為は、一種の「癖」、「ジンクス」に相当するものと思われる。この行為は明らかにオペラント行動であり、行動の結果によって強化されたり弱化されたりする。じゃんけんの場合は、完全にランダムな手を出した場合の勝ちは1/3、あいこが1/3、負けは1/3であるが、偶然に勝率が高くなる場合がある。その直前にたまたま「指を組んでのぞき込む」という行為をしていた人は、その行為が偶発的に強化される。いま、じゃんけんの直前にある癖を行った場合に勝つ確率は1/3であると述べたが、これは、その行為が1/3の確率で強化されるという部分強化の条件を満たしている。スキナーも述べているように、こうした状況のもとではいわゆる「迷信行動」が強化されやすくなる。同じような迷信行動は、バッターボックスに立った時の打者のいろいろな癖についても言える。打率3割の打者であれば、ボールを打つ直前の癖は、同様に1/3の確率で、ヒットが出たという結果によって強化される。大相撲の力士が土俵の上で示すいろいろな癖(まわしを叩く、顔を叩く、塩をたくさん握って高く撒く、仕切りの時にカエルのようなポーズをとる、など)を示すのも同様であり、それらの癖は勝つという結果によって部分強化されていく。

 なお、じゃんけんについては私もかつて研究したことがあり、卒論生との共同研究として、

3項選択行動の柔軟性に及ぼす教示内容と記憶負荷の効果(岡山大学文学部紀要, 1992年、17,99-109.

という論文を発表したことがあった。




 次の「全国のうかつな事態を大調査!」では、愛知県豊田市下山地区の盆踊りに関して、

●「なんで愛知県なのに盆踊りは研ナオコさんの「京都の女の子」なのか?」

という疑問が取り上げられた。しもやま観光協会の会長によるとこの歌は50年くらい前から使われているという。曲が採用された当時の会長によれば、「単にいい曲だったから。ノリのいいこの曲を使い始めたところ、京都への憧れもあったのか、みんなが楽しそうに踊ったのでそのまま数十年続いている」というのが真相らしい。

 ちなみに研ナオコさんは1953年生まれ。上掲のじゃんけん研究第一人者の稲葉茂勝先生も1953年だそうなので、今回は同じ世代の人、昭和で言えば28年生まれの「ニッパチ」世代が続けて紹介された。「京都の女の子」は1972年に発売された歌であり、私はちょうど京都に住んでいて学部2回生の時であり、歌謡曲を滅多に聴かない私にとっても懐かしい曲の1つである。


 次回に続く。