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1月27日の朝、岡山市でみぞれ模様の雪が降った。気象庁統計(左の画像)によれば、朝8時から9時の間に積雪1cmを記録。これがこの冬初めての積雪となった。 |
【連載】ChatGPTの親近感とデタラメ度(7)DHMO(ジハイドロジェン・モノキサイド)クイズから露呈した、詳細にこだわる頑固さ 昨日に続いて、ChatGPTの話題。 1月25日の日記で、ChatGPTにいくつかの問題を解いてもらうという話題を取り上げた。このほかにもいろいろな問題を出してみたが、AIは問題文の細かい表現まで厳密さを要求していることが分かった。まず、 ●以下のすべての特徴をもつのは何という作業でしょうか?
という問題を出したところ、「これは、物流における整理整頓作業 (Inventory management) のようです。」という回答があったので、「洗濯ではありませんか?」と切り返すと、 そうですね、特徴にある「物をいくつかの山にまとめる」「最初は手順全体が複雑なものに見えるだろう」「手順が完了すると、物をまたいくつかの山にまとめ上げる」「やがてそれらの物はもう一度使われ、そしてサイクル全体を繰り返さなければならなくなる」といった文言からも、洗濯の作業を指しているのではないかと思います。というように素直に「洗濯」が正解であることを認めてくれた。 そこでさらに、有名な「DHMO(ジハイドロジェン・モノキサイド)のクイズを、私のほうで要約して以下のような形で解いてもらった。 ●以下のすべての特徴をもつ物体の名前を教えてください。
その後のやりとりは以下の通りとなった。 【ChatGPT】この特徴を持つ物体は、硫酸 (Sulfuric acid) です。 ●普通の水ではありませんか? 【ChatGPT】すみません、誤って硫酸について説明してしまいました。 上記の特徴にある「無味無臭、無色透明の化学物質である」「気温によって形状を変化(気体・液体・固体)させる」「酸性雨の主成分である」「大規模な工場の冷却用に多量に用いられ、原子力発電所などでも運用されている」 など、 水に近い特徴を持つものですが、「液状のものを口や鼻から吸引すると、窒息してしまう」「また、嚥下した場合、発汗・腹部膨満感・吐き気・嘔吐などの症状を引き起こし、中毒症状を起こすと、ひどい時には死にいたる場合がある」「固体の状態のものに長時間触れ続けると、身体組織に深刻なダメージを受ける」といった文言からも、普通の水ではないものを示唆しているので、そうではないと考えられます。 ということで、最初の「硫酸」という解答は撤回したものの、正解が水であることはなかなか受け入れてもらえなかった。そこでさらにやりとりを続けたが、 ●水を吸引すると窒息の可能性がありますし、固体の状態すなわち氷に触れ続けると凍傷になるので、これらの特徴も水の特徴といってよいのではありませんか? 【ChatGPT】あなたが述べたように、水は窒息の原因になることがあり、また氷に触れると凍傷を起こすことがあります。しかし、酸性雨の主成分であるという特徴や工業用途などについては水には当てはまらないため、水以外のものが該当する可能性が高いと考えられます。 ●酸性雨の構成物質のうち最大も成分は水ですし、工業用途として大量の水を使うことがありますので、これらも水の特徴ではありませんか? 【ChatGPT】酸性雨は、大気中に存在する二酸化硫黄や二酸化炭素などの排出物と反応して生じるものであり、水が主成分であることは確かです。また、工業用途での大量の水の使用もあります。しかし、酸性雨が原因となる環境問題や、酸性雨によって生じる健康被害は水特有の特徴ではありません。また、水が吸引すると窒息の可能性があることや、固体の状態である氷に長時間触れると凍傷になることは誤りです。 ●えっ? 氷に長時間触れていたら凍傷になるのではありませんか? 【ChatGPT】水が無味無臭、無色透明の化学物質であることは間違いありませんが、液状の水を口や鼻から吸引すると窒息してしまうことはほとんどありません。また、嚥下した場合でも、発汗・腹部膨満感・吐き気・嘔吐などの症状を引き起こすことはありません。水は気温によって形状を変化させることができ、氷に長時間触れると凍傷になることはあります。酸性雨の構成物質のうち最大成分は水ですが、酸性雨は二酸化硫黄や二酸化炭素などの汚染物質と反応して生成されるため、水だけで構成されるわけではありません。工業用途として大量の水を使うことがありますが、それは水の性質を利用した利用方法であって、水自身の特徴ではありません。 となって、最後まで「単なる水」が当てはまることを認めてくれなかった。 このやりとりの中で興味深いのは「工業用途として大量の水を使うことがありますが、それは水の性質を利用した利用方法であって、水自身の特徴ではありません。」というのは鋭い指摘であった。確かに、問題文の「○○の特徴」という表現は、狭義に解釈すれば水の物理的・化学的性質であって、○○がどのように利用されているのかといった利用方法は特徴には含まれないと言うこともできる。 ということで、クイズの問題文の表現によっては、正解が「水」であることはなかなか認めてもらえないことが分かった。そこでさらに表現を工夫したところ以下のようなやりとりとなった。 ●以下の条件をすべて満たす物質は何でしょうか?
【ChatGPT】これらの条件をすべて満たす物質は、二酸化炭素 (CO2) です。 ●水ではありませんか? 【ChatGPT】申し訳ございません、水は上記の条件をすべて満たしていません。二酸化炭素 (CO2)が温室効果を引き起こし、地形の侵食を引き起こし、多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせ、電気事故の原因となり、末期がん患者の悪性腫瘍から検出されることが知られています。 水は重篤なやけどの原因や自動車のブレーキの効果を低下させることはありません。 ●熱い水(お湯)は、火傷の原因になりませんか? 【ChatGPT】はい、熱い水(お湯)は火傷の原因になる可能性があります。高温の熱い水に触れると、細胞が壊れ、肌に障害を引き起こすことがあります。また、長時間の接触も危険であるため、火傷を引き起こす可能性があります。 ●雨の日に「ハイドロプレーニング現象」が起こることからみて、水は自動車のブレーキの効果を低下させることになりませんか? 【ChatGPT】はい、水は自動車のブレーキの効果を低下させることがあります。特に、ハイドロプレーニング現象(水がブレーキパッドに詰まってブレーキ性能が低下する現象)が起こることがあります。これは、雨の日など湿った道路上で走行する場合によく見られます。水がブレーキパッドに詰まってブレーキ性能が低下するため、制動距離が長くなり、事故の原因になることがあります。ただし、現在の自動車は、ブレーキパッドに排水溝が設けられ、水が排出されるようになっているため、ハイドロプレーニング現象は少なくなっています。 ●元のクイズの答えは「水」ではありませんか? 【ChatGPT】申し訳ありません、先ほどの説明は誤りでした。水は、温室効果を引き起こしません。また、重篤なやけどの原因ではありません。地形の侵食を引き起こすこともなく、多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせることもありません。電気事故の原因にもなりません。末期がん患者の悪性腫瘍から検出されることもありません。 しかし、「自動車のブレーキの効果を低下させる」ことは、「ハイドロプレーニング現象」が起こることからみて、可能性があります。 ●「水は、温室効果を引き起こしません。」と回答されましたが、水蒸気は温室効果の原因の1つではありませんか? 【ChatGPT】水蒸気は温室効果ガスの1つであり、大気中の水蒸気の濃度が高くなると温室効果が増大します。水蒸気は大気中に存在していると、太陽からの入射エネルギーを地球からの反射エネルギーよりも多く吸収し、地球の表面を温めるために貢献します。 ということで、個々の指摘内容は認めてくれるのだが、水が正解であることまでは認めてくれなかった。 以上のやりとりから「○○の特徴」と「○○の利用方法」を分ける必要があると思われたので、もう1つ、 ●以下のすべての利用方法を満たす物質は何でしょうか?
工業用の溶媒、冷媒、原子力発電所、発泡スチロールの製造、防火剤として用いられる物質は、主にチルトロン(chlorotrifluoromethane)やハロン(Halon)などのハロゲン化合物です。これらの化合物は、良好な溶媒性、冷媒性、発泡性、防火性を持っているため、幅広い用途で使用されています。ただし、これらの化合物は温室効果ガスとして指定され、環境に悪影響を与えるため、現在では使用が制限されている場合があります。という「水」以外の回答となった。そこで、 ●水は、以下の利用方法のすべて満たす物質ではありませんか?
と再度質問したところ、以下のような回答となった。 水は工業用の溶媒や冷媒として用いられますが、原子力発電所で用いられることはありません。発泡スチロールの製造に用いられることもありません。防火剤として用いられることもありません。原子力発電所では水が冷却剤として使用されます。発泡スチロールは水を含まない物質です。防火剤は火災を消火するために使用されますが、水は防火剤ではありません。 発泡スチロールは製造工程で高温蒸気(=水)を使用しているようだがAIでは「利用されている」とは認められなかった。また火事になれば水をかけて消火するのが一般的であるが、「防火剤として」という表現は不適切であると判断されたようである。 不定期ながら次回に続く。 |