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【連載】チコちゃんに叱られる! 『おじさんのくしゃみ』『寝癖とカツラ』 昨日に続いて、3月17日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
この疑問は、
菅本一臣先生(大阪大学)によれば、くしゃみとは「鼻の毛・粘膜についた異物を激しい風とともに対外に排出しようとして反射的に起こる防衛反応」のことである。鼻の毛・粘膜に刺激を感じた場合、脳の延髄にある「くしゃみ中枢」にくしゃみを出せという指令が届く。そうするとくしゃみ中枢は、「肋骨を広げろ!」、「横隔膜を下げろ!」、「肺を膨らませろ!」、「のどの筋肉をしめろ!」という指令を出し、肺の中に大きな風船を作ろうとする。そして「溜め込んだ空気を一気に吐き出せ!」という指令が出ると口からくしゃみが出ていく。この指令は、くしゃみ中枢のスイッチが押されてしまえばおよそ1秒の速さで口からくしゃみが出るようになっており自分でコントロールすることができない。 くしゃみは、体が大きいほど、また肺活量が多いほどより大きな音が出せる。なので、単純に比較すれば、肺活量が衰えてきたおじさんのくしゃみは若い時よりも小さな音になるはず。このパラドクスは運動制御学によって説明できる。それによれば、脳はさまざまな動きに制御をかけていることが分かってきた。熱いものを触った時に手を引っ込めるという反射の際にも、手をどの程度引っ込めるのかは脳によって制御されており、また「熱っ」というような声の大きさもコントロールしているという。しかし、おじさんの場合は、加齢によって恥ずかしさ・緊張感が減り、脳からの制御=ブレーキが外れるためと説明できる。いっぽう若い女性の場合は、「大きなくしゃみは恥ずかしい」と考えているため、大脳の一部がブレーキをかけている。 もっとも、ガマンせずに大きなくしゃみをするほうが命の危険をふせぐことにも繋がっているという。くしゃみが口から出る時の速さは時速320kmにもなっており、これを無理に封じ込めようとすると鼓膜が破裂したり、くしゃみを我慢すると血圧上昇や血管破裂を招く場合がある。さらに無理な姿勢でのくしゃみは、肋骨骨折やぎっくり腰を招く危険性があるという。 ということで、放送では「テレビ体操」のスタッフにより、からだを「く」の字型に曲げて下を向いてくしゃみをするというような「正しいくしゃみ」のしかたが披露された。 ここからは私の感想・考察になるが、上掲の「おじさんはくしゃみを『恥ずかしい』と思わないので、ブレーキが壊れ大きなくしゃみをしてしまう」という説明は、厳密には、
行動分析学的に言えば、くしゃみ自体は無条件反応(レスポンデント反応)であり随意的なコントロールはできない。しかし、鼻の頭をおさえることで鼻への刺激の性質を変えたり【←くしゃみを誘発する刺激を弱める】、くしゃみをする前にハンカチで口を押さえたり、後ろを向いてくしゃみするというように、いくつかのオペラント反応によって恥ずかしさを低減することはできる。別段「大脳のブレーキ」などという比喩に頼らなくても、一連の行動は説明できるように思う。 余談だが、今回の放送では岡村隆史さんのカツラが妙に目立っていた。しかし放送の終わりの「ひだまりの縁側で・・・」のコーナーではカツラとおでこの境目が全く分からないようにメイクされていた。服装も別。このことから全く別の時間帯に収録されたものであることが確認できた。「ひだまりの縁側で・・・」では寝癖の話題が取り上げられていたが、かつらを着用している人であればかつらを外して寝れば寝癖で困ることは起きないように思う。 |