Copyright(C)長谷川芳典 |
※クリックで全体表示。 |
津山線沿いの柵には、7月11日の日記で比較したマルバルコウ、アメリカアサガオ、マルバアメリカアサガオの他に、イシミカワが繁茂している。葉の形は三角形だが、それに劣らないほどの大きな丸い托葉がついている。 青い宝石のような実がなっているが、ウィキペディアによれば、実は青い部分は果実ではなく多肉化した萼であり、本物の実は中心部の黒い痩果であるという。 7-10月に薄緑色の花が短穂状に咲く。花後につく5mmほどの果実は熟して鮮やかな藍色となり、丸い皿状の苞葉に盛られたような外観となる。 |
【連載】サイエンスZERO「跳躍的進化のカギ!?生物の“盗み”戦略」(1)ウイルス由来の遺伝子 昨日までの日記で、ヒューマニエンスの「虫」の番組について感想・考察を述べてきたが、その中に、動物の遺伝子を奪い取るマダニという話題があった。この「奪い取る」については、7月2日初回放送の、NHK『サイエンスzero』、 ●跳躍的進化のカギ!?生物の“盗み”戦略 でも取り上げられていた。生物は遺伝子を奪い取るばかりでなく、他の生物の機能を丸ごと自分の体に取り込む(つまり「盗み取る」)ことができるという。これまで、生物は変異と自然選択の積み重ねで進化してきたと考えられてきたが、確率的に生じる偶然的な変異だけでは進化のスピードが速すぎるとも言われてきた。このスピードが偶然ではあり得ないことに注目し、カルト宗教の信者の中には、進化論自体は認めるものの、神が設計図を作ったからこそ跳躍的な進化が起こった主張する者もいた。しかし、他の生物が何万年、何億年にもわたる変異・自然選択の積み重ねて獲得した機能を丸ごと奪い取ることができれば、そうした跳躍的進化を説明する要因に、もはや神の意志を含める必要はなくなる。そういう意味でも興味深い内容であった。なお、跳躍的進化についてはヒューマニエンス(2023年4月10日初回放送)でも取り上げられており、別途、感想を述べる予定である。 放送ではまず、ヒトゲノム計画で人間が持っているDNAの塩基配列がすべて明らかになったことで、ヒトゲノムのおよそ9%は祖先が感染したウイルスに由来するものであることが分かったという驚きの事実が紹介された。石野史敏さん(東京医科大学名誉教授)と金児-石野知子さん(東海大学客員教授)のグループは長年にわたりウイルス由来の遺伝子について研究し、これまでに11種類の遺伝子の重要な機能を次々と明らかにしてきた。 石野さんたちが最初に機能を解き明かしたのはウイルス由来のPEG10と呼ばれる遺伝子であった。PEG10にはウイルスが持つ「構造を作る」遺伝子と「酵素を作る遺伝子」と同じ遺伝子が組み込まれていた。いま見つかっているウイルス由来の遺伝子の元と考えられているのは殆どがレトロウイルスの種類。レトロウイルスはHIVなどで知られたウイルスであり、生物の細胞に潜り込み自分のコピーを作らせる。そうしたウイルスが卵子や精子などの生殖細胞に入り込むと次の世代にもDNAの変化が受け継がれていくことがある。胎盤の形成、肌の保湿機能、運動能力・記憶力などにかかわる遺伝子のほか、昨年9月に発表された石野さんたちの研究によれば、脳の自然免疫にもかかわる遺伝子があることが分かったという。 スタジオゲストの重信秀治さん(基礎生物学研究所)によれば、上掲のような「盗み」という現象は跳躍的な進化をもたらし、多くの生命進化の原動力になっており、上掲のウイルス感染のほか、バクテリア、カビ、動物同士という例も知られている。
外から入ってきた遺伝子が定着するためにはいろいろなプロセスを経なければいけない。他の生物種で動いていた遺伝子が新しい生物種に移ってきてそのまま動くかというとそうではない。新しい環境に適応しなければいけない。新しいシステムの中で動くように変わらなければいけない。さらにその遺伝子が機能を発現して集団内に広まるためには数多くの世代と何百万年とか何千万年といった非常に長い時間が必要とされる。その結果、たまたま残ったものだけが今見えているということ。というように説明された。 ここでいったん感想・考察を述べさせていただくが、ウイルス感染由来の遺伝子は、生物が能動的に「盗み取った」というよりは、ウイルスが勝手に侵入してきて生物の一部になりかわってしまったと言うべきかと思う。2021年2月11日初回放送のヒューマニエンス『「“ウイルス” それは悪魔か天使か」』でも取り上げられていたが、ウイルスという存在は絶対的な悪ではない。確かに新型コロナでは相当の悪さをしたが、そのいっぽう、人類の誕生に欠かせないプロセスのいくつかはウイルスのおかげとも言える。 次回に続く。 |