じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山では最高気温は相変わらず30℃以上の残暑が続いているが、朝はだいぶ涼しくなり、9月7日朝の最低気温は21.6℃となった。この時期、お彼岸が近づくにつれて、ヒガンバナ科の花が次々と咲いている。すでに、岡大文学部の中庭花壇ではリコリス・インカルナータ【←『タヌキノカミソリ』とも呼ばれているらしい】が見頃となっているが、半田山植物園では黄色いヒガンバナとして知られる『ショウキズイセン』も咲き始めた。ショウキズイセンの開花時期は生育場所によってかなり異なっており、まだ花芽が出ていない場所もある。



2023年9月7日(木)




【連載】ヒューマニエンス「“免疫” 曖昧な“わたし”をめぐるドラマ」(6)「メモリーT細胞とB細胞」、「自然免疫活性化の記憶」

 昨日に続いて、8月28日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、

「“免疫” 曖昧な“わたし”をめぐるドラマ」

についてのメモと感想。本日で最終回。

 放送の終わりのところでは、加齢とともにキラーTが変化することに関して、『ナイーブT』と『記憶型』の違いが説明された。『ナイーブT』というのは胸腺で厳しい「修行」を経て選別されたエリートであるが実戦経験はない。そして実戦経験を重ねると『記憶型』のキラーTの比率がしだいに増えていく。Mア洋子さんが成人107人(中央値43歳)と高齢者1099人(中央値71歳)を対象にそれらの比率を調べたところ、『記憶型』の比率の中央値は【グラフからの推定で】5%前後から20%前後に増加、そのいっぽうナイーブTの比率の中央値は、50%前後から8%前後まで減少【放送では1/3程度に減少と説明された】していることが分かった。高齢者でナイーブTが減ることは新型コロナのような新しいウイルスに対応できないというデメリットがある反面、老化細胞が攻撃されにくくなるというメリットをもたらしている。

 続いて、スタジオではips細胞で高齢者の胸腺を再生するとどうなるか?という議論があった。胸腺がピチピチになると老化細胞が攻撃されやすくなるというリスクもあるが、胸腺の中にいろいろな細胞が移動して体の成分を自己として見せるシステムがあるので、再生された胸腺の中で老化細胞を自己として受け入れるような再教育が行われるようになる可能性もあるという。なお、ips細胞による胸腺の再生については、前回の免疫の回の時にMア洋子さんのほうから5年以内達成というメドが示されており、残り4年半となったいま、いっそうの進展が期待された。

 ここからは私の感想・考察になるが、『記憶型』のキラーTがどのように誕生するのかについては、放送では詳しい説明が無く、よく分からないところがあった。比喩的にとらえるのであれば「キラーTの一部が異物と戦った経験を記憶する」というように割り切って納得してしまうこともできるが、それはあくまで比喩やアナロジーのレベルでの理解に過ぎない。「細胞が記憶する」というような「説明」は、チコちゃんの番組に登場するトンデモ「脳科学者」によって多用されることもあるが、そもそも細胞の中に記憶装置があるとは考えにくい。もう少し丁寧な解説が求められるところであった。
 このことについて、ウィキペディアを参照したところ、
特定のT細胞受容体を発現するメモリーT細胞のクローンは、私たちの体内で何十年も持続することができる。メモリーT細胞はナイーブT細胞よりも半減期が短いため、この維持プロセスには古い細胞の継続的な複製と交換が関与していると考えられる[3]。現在のところ、メモリーT細胞の背後にある機構は完全には解明されていなfい。T細胞受容体を介した活性化がその役割を果たしている可能性がある。メモリーT細胞は、時に新規抗原に反応することがあり、これは潜在的にT細胞受容体結合標的の固有の多様性と幅の広さに起因していることがわかっている。これらのT細胞は、環境抗原や、私たちの体内に常在する抗原(腸内細菌のようなもの)と交差反応して増殖する可能性がある。これらのイベントは、メモリーT細胞集団の維持に役立つ。粘膜組織では抗原密度が高いため、この交差反応メカニズムはメモリーT細胞にとって重要であると考えられる。【以下略】
という説明があった。専門的なことは全く分からないが、文字面だけから理解を試みると、要するにある種の応答特性を持ったT細胞がクローンとして複製され続けることで、結果的に体内で、何らかのウイルスや細菌と戦った経験が、あたかも「記憶された」かのように保持されるということなのだろう。もっともそうであるなら、これぞまさに獲得免疫そのものではないかと思われる。そうなるとまたまたB細胞との関係が分からなくなり混乱してしまう。
 ネットで検索したところこちらに、
獲得免疫の1つであるB細胞やT細胞は、病原体が体内に侵入してくると反応して攻撃を行います。病原体が消滅すると多くのB細胞やT細胞は死滅しますが、メモリーB細胞やT細胞と呼ばれる一部の細胞が生き残ります。この生き残った細胞が1度目の感染を記憶しているため、2度目の感染の際に病原体に対して素早く対応するのです。
これが免疫記憶のメカニズムですが、以前は病原体への感染を記憶するのは獲得免疫だけだと考えられていました。しかし、最近では自然免疫の活性化が記憶されることも明らかになっているため、後でご紹介します。
という説明があり、メモリーT細胞ばかりでなく、メモリーB細胞も獲得免疫において重要な役割を果たしていると記されていた。また、このメモリーB細胞は、
メモリーB細胞は何十年も生き延びることができ、同じ抗原への複数回の曝露に反応する能力を与える。長期間の生存は、他のB細胞の亜集団よりもメモリーB細胞でより高度に発現している特定の抗アポトーシス遺伝子の結果であると仮定されている[3]。さらに、メモリーB細胞は、長期的に生存するために、抗原またはT細胞との継続的な相互作用を必要としない。
と説明されており、どうやら、自己複製をしなくてもほぼ一生に近い長さ、生き延びられるらしい。いずれにせよ、今回の番組ではB細胞には全く言及されなかったので、放送内容だけから得た知識はかなり不完全なものに終わってしまった。

 なお、上掲のリンク先では、「自然免疫が活性化したことについての記憶」が取り上げられていた。以下、抜粋させていただくと、
  • 先ほど獲得免疫には免疫記憶の機能があると紹介しましたが、最近の研究結果によって自然免疫も活性化したことが記憶されることが明らかになりました。
  • ヒトのDNAは二重螺旋構造になっており、お互いが絡まらないようにヒストンと呼ばれるタンパク質に巻きついて収まっています。この状態のことを、クロマチンと言います。この状態だとすぐに遺伝子を読み込むことができないため、急いで読み込むためにはクロマチンが解けている必要があります。
  • 自然免疫が一度活性化した場合にはクロマチンが解けている状態で記憶されるため、必要時にはすぐに活性化した時の記憶を読み込むことが可能になり、このメカニズムによって、ある感染症のワクチン接種で活性化された自然免疫の記憶が、全く別の感染症にかかったときに役立ち、病気への抵抗性が高まることもあります。
  • では、自然免疫の活性化にはどのような方法があるのでしょうか。その方法の一つにLPSの摂取が挙げられます。
  • LPSとは「糖脂質」または「リポ多糖」と呼ばれるもので、「グラム陰性細菌」の外膜に存在する成分です。
  • マクロファージを活性化させるにはヨーグルトなどに含まれる乳酸菌やキノコに含まれるβグルカンでも可能ですが、LPSはそれらに比べて1,000〜10,000分の1の量で同じくらい活性化すると言われています。
  • LPSは土の中などにも生息する細菌由来の成分のため、土で育つ作物に多く含まれています。特にほうれん草やレンコンには多く含まれていますが、中でも皮の部分に集中しているため、皮は剥かずに食べることをおすすめします。また、海中の土で育つ海藻類にもLPSは多く含まれており、特にLPS含有量が高いものはワカメやめかぶです。これらを摂取することでLPSを体内に取り入れ、自然免疫を活性化させることにつながります。
となっており、LPSとやらをエライ持ち上げているなあという印象を受けたが、Topページを閲覧したところサプリや化粧品を販売している会社であることが分かった。なので、コンテンツの内容については宣伝目的であることを割り引いて考える必要があるかもしれないが、いずれにせよ私自身は、ヨーグルト、キノコ、玄米、めかぶ、ほうれん草などを日常的に摂取しているため、かなりのレベルで自然免疫の活性化記憶が保持されている可能性が高いことが分かった。