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じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 『チコちゃんに叱られる!」で取り上げられたあみだくじ(縦線5本、横線8本)の確率計算結果。↓の記事参照。


2024年5月26日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「あみだくじの由来と確率計算」

 昨日に続いて、5月24日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は以下の3つの話題のうち、2.について考察する。
  1. サッカーコートがしま模様なのはなぜ?
  2. 「あみだくじ」はなぜ「あみだ」?
  3. 【罰ゲーム】原稿用紙の折り目にある「【 】」を縦にしたような模様の名称
  4. 酔っ払うと声が大きくなるのはなぜ?


 『あみだくじ』については、正解を「阿弥陀如来の後光に似ていたから」とした上で、放送の前半ではその由来、後半では数学的確率の問題が取り上げられた。

 まず由来について、笹本正治さん(長野県立歴史館)&ナレーションによる説明は以下の通り。【要約・改変あり】。
  1. 後光とは阿弥陀如来の知恵や御利益がすべての人たちにあまねく届く様子であり、放射状の形。
  2. 昔のあみだくじは今のようなハシゴの形ではなく後光のように丸く外側に開いた形をしていた。
  3. 室町時代の資料によれば、当時のあみだくじは中心部からいっぱい線をひいて放射線の形になっており、『あみだくじ』ではなく『阿弥陀の光』と呼んでいた。
    • 最も古い記録は室町時代の貴族の日記『言継卿記』には「きょうこちらで歌の会があった。夕食をお願いするというので阿弥陀の光で酒をおごる者を決めた」と書かれていた。
    • 室町時代後期の俳諧集『犬筑波集』には現代語訳で「ひたすら一心に阿弥陀の光に願う 茶碗のふちの墨で汚れた袖」という意味の歌が詠まれており、 でも詠まれている。
    • 丸い中心から放射状に線が延びる形であれば太陽や花にも似ているが、「阿弥陀の光」に喩えられたのは、平安時代から鎌倉時代に活躍した法然が阿弥陀信仰を民衆まで広めたことによる。
    • 法然は「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば誰でも阿弥陀様のいる極楽へ行けるという教えを分かりやすく広めて浄土宗を開いた。
    • 浄土宗では修行しなくてもみな等しく極楽へ行けるという教えを説いたので、信仰が爆発的に広まり、阿弥陀様はは身近な存在となった。
  4. もともと日本人はなにかあるときには未来を神仏に委ねる考え方があったことから、一番身近な阿弥陀様の後光を利用して占う『あみだくじ』が作られた。
  5. かつては鹿の骨や亀の甲羅を焼いたときのヒビの割れ方で吉凶を占い政治を行っていたように、日本人はいにしえからくじに頼っており、日本にはくじに未来を委ねる文化があった。
    • 武田信玄は戦争の前に必ずくじを引いていた。
    • 『明治』という元号は松平春嶽が考えた候補の中から天皇がくじを引いて決定したと言われている。
  6. もともと丸い形だったあみだくじがはしご形になったのは、
    • 本来は神仏の意見を聞くというくじに、だんだん遊びのような心が出てきた。
    • 神仏に頼る気持ちが薄くなればなるほど、単純にひくよりも、もっとそこに複雑さを求める。横線をいっぱい引いてすぐに結果がでないようにした。
    • (放射状の)あみだくじは、端に印をつけたこよりにしたり、それらを絡めたりしたり、というように複雑化され、その1つとしてはしご形のあみだくじが作られるようになった。
  7. 遊びやすく盛り上がれる要素が加わったことで、今でも遊ばれている。
 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、上掲の由来の通りであるとすれば、海外ではあみだくじに似た抽選方法は存在しないか、もしくは全く別の由来により偶然に似たような方式になったと考えられる。このことについてBingに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
はい、**あみだくじ**に類似した抽選方法は他の国でも見られます。以下にいくつか例を挙げてみましょう。

1. **カナダのワーキングホリデー抽選**:
- カナダのワーキングホリデービザは抽選方式で提供されています。申請者は招待状を受け取り、その後本申請に移る流れです。ビザの定員が決められており、抽選に当たると招待状が届きます?.

2. **イギリスのワーキングホリデー**:
- イギリスのワーキングホリデー(Youth Mobility Scheme)は、2年間滞在できるビザです。こちらも抽選方式で提供されています。

これらの国々では、抽選方式を用いて公平な方法でビザや特定のプログラムへの参加者を選定しています。?

(1) ランダム・あみだくじで抽選 | 厳正な抽選ツール. https://gensei.masakurapa.com/.
(2) 【今すぐ使える】あみだくじツール3選!役割決めに最適 .... https://rakko.tools/workshop/356.
(3) あみだくじ - ネットで抽選「あみだくじドットコム」. https://www.amidakuji.com/.
(4) 「あみだくじ」割り振り・組み分けはこれで解決 - pasopla. https://www.pasocoop.jp/single-post/20190416.
(5) あみだくじオンライン. https://www.luft.co.jp/cgi/amidakuji.php.
もっともこの回答は単に抽選で決めている例を挙げているだけで、あみだくじが使われているわけではなさそうであった。

 次に、英語版ウィキペディアを閲覧したところ、英語では『Ghost leg』と呼ばれており、
It is known in Japan as Amidakuji (阿弥陀籤, "Amida lottery"), in Korea as Sadaritagi ("ladder climbing") and in China as Guijiaotu ("ghost leg diagram").
という記述があった。もっとも実際にどの程度使われているのかは分からなかった。

 ちなみに私自身は今でもあみだくじのお世話になることが多い。最近経験したのは、海外旅行先で、4WDに分乗する際のグループ分けとか、シャワーの無い部屋に誰が入るかといった部屋指定など。




 さて、放送の後半では、あみだくじの数学的確率について興味深い話題が提供された。山中克久さん(岩手大学)によれば、縦線の端のどれを選ぶかによって、どの「ゴール」に達するのかという確率には偏りが生じる。計算によるとゴールの真上が当たる確率が高い。
 例えば5本の縦線に8本の横線が入ったあみだくじでは、一番左の「1」を選んだ場合、ゴール(左からa、b、c、d、e)のをれぞれに達する確率は、abc順に、43.92、24.61、16.53、10.25、4.68となり、aに達する確率が最も大きく、eに達する確率が最も小さい。なお、確率の差はそれほど顕著ではないが、左から2番目を選んだ時にはb、3番目を選んだ時にはcというように、元の選んだ場所の真下に達する確率がいちばん大きくなる。
 この理由についてはウィキペディアに詳しい解説があり、抜粋すると、
  1. 隣の縦線を結ぶ横棒のみを書くという標準的なルールでは、横棒がランダムに書かれたとしても、あみだくじでそれぞれのくじに当たる確率は等しくない。これは、横棒が非常に少ないケースを考えればわかりやすい。もし横棒が1本もなければ、真下のくじが確率1 (100%) で当たる。1本なら、当たりうるのは真下かその隣のみで(それぞれの確率はくじの本数による)、ほかのくじの確率は0である。
  2. 横棒によるくじの入れ替えは1次元ランダムウォークなので、横棒の数が十分に多いと、確率分布は正規分布に漸近し、その平均は真下、標準偏差は通過する横棒の本数の期待値の平方根となる(ただし、分布の裾野が右か左の端に達すると、より複雑な挙動を見せる)。つまり、真下が最も確率が高く、離れるにつれて確率が低くなる。これは横棒が増えるほど平坦になるが、決して完全に平坦にはならない。
  3. 確率をおおよそ(完全にではない)等しくするには、上で述べた標準偏差 σ が、くじの本数を N として N − 1 程度より大きければよい(正確な計算をするには適切な定数係数を求める必要があるが、ここでは定数係数を省略しておおざっぱな推算をする)。...【中略】...くじが5本でも、100本程度は横棒を引かないと、確率はほぼ等しくはならない。実際のあみだくじではそんなに多くの横棒を引かないので、確率の不均等はかなり残ることになる。
  4. またもうひとつの問題として偶奇性がある。1人1本ずつの横棒を書くなど横棒の数が決まっているなら、偶数本なら偶置換、奇数本なら奇置換しかおこらない。たとえば、横棒が奇数本なら、全員が真下のくじを引くという結果は決して起こらない。ただし、意味が同じくじがある(外れはどれでも同じなど)ケースではこれは問題とはならない。
上掲のように、最初にどの位置を選ぶのかによって、ゴールのどこに達するのかの確率に偏りが生じる。しかしゴールのどれを「当たり」とするのかさえランダムに決めておけば不公平は生じない。【実際には、左から2番目とか、右から2番目あたりを「当たり」に決めることが多いような印象があるが】。

 なお、上掲の画像に示す計算ではよく分からないところがあった。上掲では、

●5本の縦線に8本の横線が入ったあみだくじは全部で9841個

とされていたが、これはどうやって計算されたものなのだろうか?
 私が考えた限りでは、
  1. 横線を1本引くというのは、左から1、2、3、4、5という縦線のうち隣り合う2本を選ぶことであるので、(1,2)、(2.3)、(3.4)、(4,5)の4通り。【縦線をまたいで例えば1から4に横線を引くという場合を含めれば5C2=10通りとなるが、ここでは省略。】
  2. 横線を1本加えるごとに4通りが掛けられていくので、8本の横線を引けば48=65536通り。
となるはず。なぜ65536通りではなく9841通りになるのだろうか? 【ChatGptにも尋ねたが、あみだくじのルールを誤解しているようで見当外れの回答となった】。
 もちろん、1を選んだ場合、8本すべての横線のたびに位置が変わるわけではない。例えば最初に(3,4)という横線が引かれた場合、1の位置はそのまま保持される。とはいえ、確率計算の分母としては、横線がどの縦線と縦線の間に引かれるのかという場合の数を尽くす必要があるように思う。
 でもって、例えば1を選んだ時に、位置変換にかかわる横線の数が1〜8本のうち何本あるのかを場合分けして、それぞれについてabcdeのどこに達するのかを数え上げていく必要がありそうだが、これは膨大な場合分けになりそう。P問題だかNP問題だか知らないが、これはコンピュータですべての場合を尽くして計算するほうが速そうだ。ま、横線の挿入は二項分布における分岐と同じようなものであり、また、8本のうち位置変換に影響を及ぼす本数ごとの分布を重ね合わせた結果の分布になることを考えれば、正規分布に漸近することは直感できそう。

 次回に続く。