じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 半田山植物園で見かけたテングチョウ(5月24日撮影)。
 ウィキペディアによれば和名の由来は以下の通り。
頭部の触角の内側に前方に伸びる突起があり、これが天狗の鼻のように見えることからこの和名がある。この突起はパルピ(下唇髭)という器官で、他のチョウにもあるが、テングチョウのパルピは複眼径の3倍以上も伸び、よく目立つ。なお、このパルピはタテハチョウ科などでは比較的大きいが、アゲハチョウ科やシロチョウ科では小さい。


2024年6月3日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「木の枝がグニャグニャしている理由」と樹形と葉序

 昨日に続いて、5月31日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. なぜ薬は病院ではなく薬局でもらうようになった?
  2. なぜ木の枝はグニャグニャしている?
  3. 「恥ずかしい」ってなに?
という3つの話題のうち2.について考察する。

 さて、木の枝がなぜぐにゃぐにゃしているのかという疑問であるが、私が考えた理由は、
  1. 日が射す方向に応じて伸びる方向が変わるから。
  2. 強風で倒れかけたあと、重力を手がかりに伸びる方向が修正されるから。
という2点であった。しかし、蔓性の植物のような柔らかい枝は別として、自力で成長する木本では枝が硬くなるため、1.は該当しないようであった。2.の可能性はあるはずだ。

 いっぽう、放送では「まっすぐ行ければ楽だけど日の光当たるオーディションで脱落者が続出しているから」が正解であると説明された。植物生理学を教えている園池公毅さん(早稲田大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 木の枝をよく見ると同じ形のものはない、これは、木が大きく成長するために生き残りをかけた枝たちの戦いの結果である。
  2. 木など多くの植物は太陽の光を利用し成長するために必要な光合成を行っている。葉っぱの表面に太陽の光が当たることで光のエネルギーを吸収し空気中の二酸化炭素と根から吸収した水を使って木が生きていく上で欠かせない養分を作り出す。
  3. 木はより多くの葉をつけて光合成を行う必要がある。なので生き残るために自分の工夫で枝分かれをして葉をつけられる枝を増やしていく。枝分かれを繰り返すことで葉を増やし効率的に光のエネルギーを得て成長する。
  4. しかし枝分かれすることで日陰という問題が生じる。葉をたくさんつければつけるほどその葉によって光が当たらない葉がでてくる。日陰の枝には栄養がいかなくなって枯れてなくなってしまう。
  5. 枝は光の方向に伸びていくと思われがちだが実は違う。木の枝は伸びたあとは自分で方向を変えられないので一度伸びた枝はその場で光合成を続けて成長するか、光合成できずに枯れるかどちらかしかない。
  6. 木は光合成ができる枝により多くの栄養を送るほうが成長に効率がいいため、光の当たらない枝を自ら切り捨てていく。
  7. 日陰になって光合成ができなくなった枝が枯れ落ちることによって枝は曲がった形状になる。これをを繰り返すとグニャグニャのいびつな形の枝が残る。
  8. つまり、木の枝の光をめぐるオーディションで多くの枝は脱落していく。勝ち抜いて残った枝だけが、こういうふうな【グニャグニャした】形で見えてくる。
  9. 木は自ら枝を切り捨てることでお互いが重ならないように効率よく葉の総面積を広げていき、枝は個性的なカーブを描いて成長していく。

 以上は分かりやすい内容であったが、まだまだ疑問が残る。上記の説明では、光合成を妨げる日陰は自分の木の枝によってできる陰のことであった。しかし、日陰になった枝をオーディション形式で切り捨てていくというのは随分とムダが多いように思う。最初から、すべての枝に日が当たるように効率よく枝を伸ばせば、枝の成長に「投資した」コストをムダにせずに済む。
 この問題はおそらく「樹形」、また1本の枝に葉っぱがどのように配列されるのかについては「葉序」というテーマで研究されているようである。
 このうち「樹形」は、遺伝的に決定される部分もあるが、同じ木でも混み具合などの環境要因も大きいようだ。なので、綺麗に整った樹形であるという理由だけでその木があらかじめ成長の設計図を持っていたことにはならないように思われる。これは色々な鉱物や雪の結晶ができあがる仕組みと同様かもしれない。
 葉序についてはもっと研究が進んでおり、フィボナッチ数列に関係した『シンパー=ブラウンの法則』というのもあるらしい。いずれにせよ、それぞれの植物において、「1本の枝にどのように葉っぱを配列すれば、より効率的に太陽光を利用できるのか?」という問題にかかわっており、結果として効率性が高いような葉序の特徴を備えたものが結果として生き残ったのではないかと思われる。例えば匍匐生の植物では『対生』の葉序は太陽光を100%利用できるので『十字対生』より効率が良さそう。いっぽう直立する植物では『十字対生』のほうが日陰ができにくいことは素人の私でも推測できる。なお、このことについてウィキペディアでは以下のように解説されていた。
葉序を形成する究極要因は、光合成のために陰をなるべく作らないようにすることであると説明される。螺旋葉序がフィボナッチ数列に則って葉を配置させるのは理論的に最も効率よい付き方であるとされる。ただし、陰のできやすいロゼット葉においてすら、はたしてフィボナッチ数列が効率良いのか、議論の余地がある。この他に、葉序のエントロピーを最小化するという説や、葉序の転移にかかるコストを常に最小化することで、環境に適応する余地を残しているという説が提唱されている。


 元の話題に戻るが、枝の形がグニャグニャしている木というのは、おそらく競争の激しい雑木林に多いのではないかと思われる。大草原の中に1本だけ生えているような木が、自分の枝によってできる日陰のせいでグニャグニャ育つとは考えにくい。いっぽう、ひたすら高く伸びることで競争に勝てるような針葉樹林帯では枝がグニャグニャに曲がって伸びるほどの余裕は無さそう。このほか、地下茎で繋がっている竹林ではそれぞれの竹はまっすぐに伸びることでより効率よく太陽光を利用できている。

 次回に続く。