55 じぶん更新日記
じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 半田山植物園で見かけた蟻の巣。レンガの隙間に出入口があり、小型のアリが行き来していた。大きすぎる獲物は入口で解体し、必要部分だけを運び入れているようだ。


2024年6月8日(土)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「音響信号機の鳥の鳴き声と、乙女の祈りと、盲導犬ロボット」

 6月7日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
  1. 横断歩道を渡るときに鳥の声が聞こえるのはなぜ?
  2. 韻を踏むと気持ちいいのはなぜ?
  3. 学ランの「ラン」ってなに?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこの中の1.について考察する。

 横断歩道で聞こえる鳥の声について、放送では、「東西南北が分かりやすいから」が正解であると説明された。現在の音の出る信号機の開発に携わった田内雅規さん(岡山県立大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 音響信号機は視覚障害者のためにあるが3つの役割がある。
    1. 青信号になったことを知らせる。
    2. 渡る地点を知らせる。
    3. 到着地点を正確に知らせる。
  2. 音響信号機にはメロディー式と擬音式の2種類がある。
    • 最初に作られたのがメロディー式。現在でも残っているのは「通りゃんせ」「故郷の空」の2種類。
    • 擬音式は鳥の鳴き声。ヒヨコとカッコウの声が使われている。
  3. 先にメロディー式の信号機が開発されたが、愛知県警から地元の電機メーカーに、「親しみやすい『小鳥の声』を開発してほしい」と要望があった。街中で流れるメロディーが気になるという近隣住民からの意見があったのかもしれない。
  4. そこで、「ピヨピヨ」擬音式が誕生したが、四差路の交差点では8か所で音が鳴るため、混乱するという問題が生じた。
  5. そこで東西と南北で位置関係を分かりやすくするためにもう1種類の音が検討された。ウグイス、ニワトリなどの候補について議論の結果、初夏に南から北に渡るカッコウに決定された。但し、いま全国では、カッコウの渡る南北の方向ではなく東西の方向にカッコウの鳴き声が使われている。
  6. さらに、交差点の横断歩道の縁石はカーブしており、そのカーブ部分を進む方向の手がかりとして使うと交差点の中央に向かって斜めに歩きだしてしまう恐れがあった。到着地点だけから音が出ていればそれに向かって進めばいいので問題は無いが、当時の音響信号機は渡る地点と到着地点で同じ音を同じタイミングで鳴らしていたため、到着地点の音が打ち消されていた。
  7. そこで生み出されたのが『同種鳴き交わし方式』。渡る地点と到着地点で同じ音を交互に鳴らし、音が打ち消されないようにすることで進む方向を分かりやすくしたシステムであった。しかし、これにも問題が。横断歩道を歩いていくと真ん中で前後の音量が同じになり、方向を見失ってしまう。
  8. そこで音の種類を増やして進む方向を判別できるように考えられたのが『異種鳴き交わし方式』。渡る地点がピヨピヨなら、到着地点はピヨというように流す音の種類を変え、その音を交互に鳴らすというシステム。このように音の種類を増やしたことにより、東西南北が分かりやすくなった。
  9. メロディー式は連続した音のため、交互に鳴らしたり音の種類を増やすと騒音の元になってしまうため、異種鳴き交わし方式ができない。このため、2003年にメロディー式の新規設置は取りやめになった。今では日本国内の99%が異種鳴き交わし方式だという。
 放送では、鳥の鳴き声の代わりとして「野太いおじさん」が「おりゃー、おりゃおりゃ」や「お帰りなさいませご主人様!きゅんきゅん!」と叫んだ場合の、渋谷と同じレベルの騒音の中での聞こえやすさが試された。長いフレーズのほうが聞き取りやすかったという。

 なお、補足説明として、メロディー式信号機の新規の設置は2003年に取りやめになったが、それ以前に取り付けられたものが残っている所もあるという。




 ここからは私の感想・考察になるが、私が住んでいる街中では、岡大西門交差点に音響信号機が取り付けられている。この信号機からは「カッコウ、カッコウ、ピヨ、ピヨピヨ」が繰り返されており、そういうものなのかと思ってあまり気にはならなかったが、その後、この交差点がスクランブル交差点であるために、2種の鳴き声が繰り返されているということが分かった。
 その後、出張先などで音響信号機に関心を持つようになり、2014年7月の日記には、青森県弘前市や青森市を訪れた時の記録があった。その後どうなったのかと思い検索したところ、

【青森県限定】壮大な音楽が流れる信号機〜メロディー式音響装置 乙女の祈り〜

という動画で、5年前(2019年?)の時点ではメロディーが流されており音質の良いものも確認できた。

 これまで鳥の鳴き声でもメロディーでも効果は同じだと思っていたが、今回の放送を通じて、鳥の鳴き声のほうが有用な情報源になりうるということが理解できた。

 もっとも私自身はもともと静寂を好む傾向がある。夫婦で車に乗る時は、妻の要望によりラジオやCDの曲を流しているが、1人で車を運転する時はスイッチを切っている。「乙女の祈り」は私の好きなピアノ曲でもあり、かつては電子ピアノで練習したこともあった。ということで上掲の青森県の交差点で乙女の祈りが流れても騒々しさを感じることはない。ちなみに妻の実家のある北九州では、ゴミ収集車が乙女の祈りを流しながら街中を走っている。

北九州市の清掃車

 もし青森市のゴミ収集車が乙女の祈りを流しながら走っていたとすると、視覚障害の横断者は混乱するだろう。

 次にBingに海外の事例について尋ねたところ、
台湾では、スマート信号システムが視覚障害者の命を守るために開発されています。
人々がアプリをダウンロードしたスマートフォンを持って交差点に近づくと、自動車やバスの運転手に通知され、交通事故を減らすことを目指しています3.
という事例が紹介された。

 上にも述べたが、私自身はとにかく静寂な環境を好む。もし何らかの事情で引っ越しを余儀なくされたとしても、音響信号機が目の前にあるような住宅には絶対に住みたくない。もちろん、視覚障害者への配慮は必要であり、999人の健聴者にとっては騒音であっても、残る1人の視覚障害者がそれを必要としているのであれば音響信号機を残す必要はあると思う。
 もっとも車の自動運転さえ可能になった今の時代、街中で大音響の鳥の鳴き声やメロディーなどを流さなくても、当事者だけに聞こえる音声ガイドがあればそのほうが役に立つはずだ。上記の台湾の例では、当事者だけでなく、自動車やバスの運転手にも注意を促す通知がなされるということで、かなりの安全性が保たれるはず。生身の盲導犬の訓練に限界があることを考えると、盲導犬ロボットの開発も期待される。

 次回に続く。