じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 10月6日の日の出。この日の早朝、東の空がよく晴れていたので双眼鏡で紫金山・アトラス彗星の観測を試みたが、それらしき光点を見つけることはできなかった。
 遮るような雲は出ていなかったので、おそらく太陽に近すぎて薄明にかき消されてしまったものと思われる。
 こちらの情報によれば、今後は夕方の空で観測のチャンスがある。10月13日〜15日頃が好機か。



2024年10月6日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「細菌の繁殖しづらい冷たい飲み物をおいしいと感じるように進化した」という胡散臭い説明

 昨日に続いて、10月4日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. なんでイクラは赤いの?
  2. なんで冷たい飲み物はおいししく感じるの?
  3. ZAZY天才化計画 完結編
  4. なんで数えるときに「正」の字を書くの?
という4つの話題のうち、2.の冷たい飲み物の話題について考察する。

 放送では、冷たい飲み物をおいししく感じるのは、「細菌が繁殖しにくい温度だから」が正解であると説明された。脳と味覚の関係について研究している笹野高嗣さん(東北大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 冷たい飲み物をおいしく感じる理由はいくつかある。
  2. 真夏など気温が高い時に冷たい飲み物がおいしいと感じるのは、気温によって上がった体温を下げるために、脳が「冷たい飲み物はおいしいぞー!」と感じさせている。
  3. もう1つの理由は、私たちの命を守るために「冷たい飲み物がおいしい」と感じる仕組みがある。
  4. そもそも飲み物をおいしいと感じる温度は、冷たい飲み物では5℃〜11℃、温かい飲み物では60℃〜70℃くらいであると言われている。
  5. おいしいと感じる温度が存在する理由としては、命に危険がない飲み物を好んで口にするよう、我々の脳にインプットされている可能性が考えられる。
  6. 飲み物がおいしいと感じる5℃〜11℃と60℃〜70℃という温度は細菌が繁殖しにくい温度であり、その間の30℃〜40℃は細菌が最も繁殖しやすい。
  7. 煮出して作った麦茶を冷蔵庫(2〜5℃)と常温(30℃)の状態で比較すると、冷蔵庫で保管した麦茶は1週間経っても細菌が増えなかったのに対して、常温では1日を超えたあたりで不衛生の基準値となる10万個/1ml、2日後には100万個/mlを超える細菌が検出された。
  8. 水道水は塩素処理をされているが、常温で長期保存すると塩素が弱まって細菌が繁殖する。東京都水道局のWebサイトにも「塩素の消毒効果は、直射日光を避けて常温で保存すれば3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度持続します、」と記されている。
  9. つまり、常温の飲み物をおいしいと感じてしまうと、菌が繁殖した水を飲み、病気になってしまう恐れがある。これはおそらく、我々が生き延びるために本能的に、細菌の繁殖しづらい冷たい飲み物をおいしいと感じるように進化したと考えることができる。
 ここからは私の感想・考察になるが、解説者は冒頭で、冷たい飲み物をおいしく感じるの理由として、気温の高い日に体の温度を下げるために脳が「冷たい飲み物はおいしいぞー!」と感じさせているという説明をしておられた。この1番目の理由は妥当であるとは思う。もっとも、冷たい飲み物を1口飲んだだけで物理現象として体温が下がることは殆ど無いと思う。これは36℃のスープが入った大鍋にコップ1杯の冷水を入れても温度が殆ど下がらないことからも明らかである。じっさい、熱中症になった人に氷の塊を食べさせても体全体を冷やすことにはならない。確か、冷たい物を口に入れると体全体が冷えたというように脳が錯覚して、暑さの感覚を低減させているのではなかったかと思う。

 さてそれはそれとして、放送ではもっぱら「もう1つの理由」、つまり「我々が生き延びるために本能的に、細菌の繁殖しづらい冷たい飲み物をおいしいと感じるように進化した」のほうに焦点があてられた。これはおそらくバラエティ番組として、視聴者が意外であると感じる方向に誘導する必要があったためと考えられる。
 しかしこの2番目の理由はかなり胡散臭い。というのは、人類は、冷蔵庫が普及するつい60年ほど前までは、食べ物や飲み物を5℃〜11℃に保つ手段を持ち合わせていなかったからである。井戸水でスイカを冷やすとか、山から湧き出した冷水で流しそうめんを食べるといったことはできたかもしれないが、特殊な環境に限られている。
 「本能的に、細菌の繁殖しづらい冷たい飲み物をおいしいと感じるように進化」するためには、例えば、同じような環境のもとで、
  • 冷えた飲み物をおいしいと感じる部族
  • 常温の飲み物をおいしいと感じる部族
という2種類の部族があり、常温の飲み物をおいしいと感じる部族は食中毒ばかり起こして滅んでしまった、冷えた飲み物をおいしいと感じる部族は食中毒にならずに生き延びた、というように淘汰される必要がある。しかしすでに述べたように、人類が飲食物を冷やして保存できるようになったのは、およそ60年前、冷蔵庫が一般家庭に普及したあとのことであり、それ以前の時代では一般人は物を冷やすことができなかった。なので仮に「冷えた飲み物をおいしいと感じる部族」が存在したとしても日常生活で冷やすという手段を行使することは不可能であり、生き延びる確率を高めることはできなかったと考えられる。

 あと、冷えた飲み物、あるいは食べ物のほうが安全かどうか、一概に言えないところもある。私が子どもの頃は、冷たい食べ物と言えばカキ氷が代表的であったが、中には不衛生な氷もあって、冷たいものは食べるなと言われていた。また、これは今でもそうだが、海外旅行先では、氷を入れた飲み物は避けたほうがよいと言われている。飲み物自体は安全であっても、氷のほうは現地の水道水や井戸水から製氷される場合があるからだ。

 なお、火を使えるようになったことで飲食物を殺菌する技術は身につけていたことから、煮たり焼いたりした食物を好む部族のほうが何でも生のまま口にする部族よりも生き延びたという可能性は大いにあったと思う。【生ものを好むことについては9月28日参照】




 放送では続いて、同じ飲み物(あるいは食べ物)でも温度によって感じ方が変わると説明された。
  • そもそも味を感じるセンサーは味蕾にある。
  • このセンサーは体温に近いと感度が高い。
  • 極端に冷たい食べ物や飲み物を口にすると冷たさで感度が落ちる。例えば冷たい牛乳はおいしいが、常温では牛乳本来の雑味を感じて人によってはおいしくないと感じる場合がある。
続いて、あばれる君が、「甘味(砂糖)」「うまみ(昆布)」「苦味(センブリ茶)」「塩味(塩)」「酸味(レモン)」をそれぞれ溶かした飲み物を。30℃と5℃という条件で口にして味覚の差を検証した。
  • 30℃の砂糖水は甘くてのめなかったが、5℃だとおいしく飲めた。
  • 60℃のセンブリ茶は苦くて飲めなかったが5℃だと苦みを感じずごくごく飲めた。
  • 30℃の昆布だしは濃いが、5℃では薄かった。
  • レモン汁は30℃でも5℃でも酸味が強すぎで飲めなかった。
  • 海水と同濃度のと食塩水は30℃でも5℃でもかなり塩辛かった。
というように酸味と塩味では温度の影響は少なかった。
 甘味、うまみ、苦味はGタンパク質共役型受容体で味を感知するが、塩味と酸味はイオンチャンネル型受容体で感知している。イオンチャンネル型受容体は冷えても感度が落ちにくい可能性がある。塩味と酸味が温度差の影響を受けにくい理由としては、腐ったもの(酸味)や摂り過ぎを避けるべき塩味に敏感になったという可能性もある。

 最後に、「おいしく感じるかどうかは習慣も大きな要因のひとつ」であり、日本ではビールを冷やして飲むのが一般的だが、ドイツやイギリスなどでは常温で飲むのが一般的で常温のビールをおいしいと感じると補足説明された。念のためCopilotで尋ねたところ、、以下のような回答をいただいた。
はい、いくつかの国ではビールを常温で飲む習慣があります。特にヨーロッパの国々、例えば**イギリス**や**ドイツ**では、エールビールを常温で楽しむことが一般的です12。これらの国では、ビールの香りや味わいを最大限に引き出すために、冷やしすぎない方が良いとされています12。
また、**ベルギー**や**チェコ**でも常温でビールを飲むことが多いです1。これらの国々では、ビールの種類や気候の影響もあり、冷やさずに飲むことが一般的です12。
【以下略】
(1) ビールを常温で飲む国があるって本当?どうして冷やさないの .... https://www.shend-trend.com/post-11148/.
(2) 世界のビール事情とは?常温で楽しむのが本場流?熱燗で飲む .... https://www.olive-hitomawashi.com/column/2020/02/post-8798.html.
(3) サントリー なるほどコール 赤坂5丁目分室 - TBSテレビ. https://www.tbs.co.jp/radio/call/bk/20060826.html.
(4) 外国ではビール冷やさない!って本当ですか? - 教えて!goo. https://oshiete.goo.ne.jp/qa/13891799.html.


 私自身はビールを飲まないのでハッキリとは覚えていないが、確か中国(但しチベットなどの辺境地域)でもビールは常温で提供されていたと思う。ま、チベットは夏でも寒いので、わざわざ冷えたビールを飲みたがる人はいないだろうが。

 次回に続く。