じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 実生から育てた『ハブランサス・アンダーソニー』。はっきり覚えていないが、種まきから1年以上(もしかすると2年以上)かかってようやく開花。



2024年10月23日(水)




血液型と出身県で病気リスクや体質が分かるか?(6)「百寿者はB型が多い」と言われるが

 昨日に続いて、「カズレーザーと学ぶ。」で9月10日に初回放送された、

●血液型と出身県でわかる!最新タイプ別の病気リスク&太りやすい体質の県

についてのメモと考察。

 前回までのところで、病気の罹りやすさと血液型の関係について取り上げてきた。もし、そのような違いが顕著であれば平均寿命も異なってくる可能性がある。ネットでざっと検索したところ、

100歳以上の日本人に「B型」が多い不思議 血液型による寿命の違いの背景に「免疫」か【2023年1月14日配信】

という記事がヒットした。内容は以下の通り。
 2007年に発表された」のなかで、〈血液型と長寿との関連性について〉という報告があり、そこでは日本人で最も長生きする確率が高いのはB型とされた。慶應大の研究者らが東京在住の百寿者(平均年齢101.2プラスマイナス1.8歳)269人と、東京在住の対象群【対照群】7153人を比較したところ、百寿者ではB型の割合が高かったのだという。
 日本人の血液型は、多い順にA型4割、O型3割、B型2割、AB型1割とされる。それが、右の研究では、百寿者はA型34.2%、B型29.4%、O型28.3%、AB型8.2%という結果になった。百寿者はB型の割合が10ポイントも多い。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「百寿者にB型が多い理由としては、報告書が分析する通り、病気と血液型の関係が考えられます。A型は細菌感染、O型はウイルス感染しやすく、病気もがんや血栓性疾患はA型、自己免疫疾患や出血性疾患はO型に多い。一方、B型はそれらの病気になりにくく、長寿になった可能性があります」
 念のため出典を探してみたところ、2006年9月27日公開の資料がこちらにあった。その中のこちらの報告書の25頁以下に、

●血液型と長寿の関係について

という報告があることが確認できた。百寿者269名に対して複数の対照群が設定されており、
  • 対照群1:2003年度に慶應健康相談センターで人間ドックを受診した7153名
  • 対照群2:対照群1のうち70歳以上の740名
  • 対照群3:同じく80歳以上の118名
となっていた。その結果、血液型の頻度分布はA、O、B、ABの順に、
  • 百寿者:34.2%、28.3%、29.4%、 8.2%
  • 対照群1:38.6%、30.1%、21.9%、9.4%。
  • 対照群2:38.9%、29.6%、21.5%、10.0%
  • 対照群3:40.7%、28.8%、22.9%、 7.6%
となっていて、

対照群1との比較では百寿者ではB型の頻度が有意に多かった(カイ二乗値 8.41、p=0.04)。対照群2や対照群3との比較では有意ではなかったものの、百寿者ではB型が多いという傾向が見られた。また、百寿者の28.6%は有意な疾患の病歴が見られなかったが、病歴の有無と血液型との間には有意な関連性は見られなかった。

という結果が得られたという。これらの結果については以下のように考察されている【要約・改変あり】。
    O型のヒトでは、虚血性心疾患の危険因子の1 つであるフォン・ウィルブランド因子 (vWF) の血中濃度が他の型よりも低い傾向にあることから、当初、百寿者ではO型が多いのではないか と予想された。しかしながら、結果は百寿者では B型が多いというものであった(一般に、日本人の血液型はAOBAB 4:3:2:1と されており、これと比較しても百寿者ではB型が多いことがいえる)。
  1. ABO血液型を決定する糖鎖からなる型物質は、赤血球のみならず多くの細胞に表現されている。したがって、 赤血球凝集反応以外にも型物質が関係する生体化学反応が存在してもおかしくはない。
  2. 古くから血液型と病気との関連については疫学的に調べられており。
    • A型は 細菌感染に罹りやすい。
    • O型はウイルス感染に罹りやすい。
    • がんや血栓性疾患はA型に多く、 自己免疫疾患や出血性疾患は○型に多い
    これに従えば、残ったB型が病気になりにくいために長寿になりやすいと予想できるが、本研究の結果からは、特にB型の百寿者が主要な疾患になりにくいということはなかった。
  3. 病気になりにくい、というよりも、病気になってもそれを生き残ることができる、という面からも検討する必要があるのかもしれない。
  4. 昨今、たんぱく質が糖鎖によって修飾されることによって、その機能や構造がどう関係するのかを調べるグリコノミクスという学問体系が提唱されている。生体反応を司る酵素やホルモン、膜受容体の多くはたんぱく質からできており、もし型物質によって修飾されたた んぱく質に機能的、構造的変化が生じるのであれば生体に何らかの影響を及ぼす可能性がある。今後は、こういった点からの解明が待たれる。
 上記の考察でサマライズされている各血液型の特徴は、今回の放送で取り上げられた特徴とは少し異なっているようである。
  1. A型者:
    【放送】血が固まりやすいことによる血栓リスク。心筋梗塞・脳梗塞。
    【報告書】細菌感染に罹りやすい。がんや血栓症疾患。
  2. O型者:
    【放送】血が固まりにくい。ピロリ菌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ストレス
    【報告書】ウイルス感染に罹りやすい。自己免疫疾患や出血性疾患。
  3. B型者:
    【放送】糖尿病、肺炎、結核
  4. AB型者:
    【放送】脳卒中、認知症。一番免疫が弱い。
 報告書ではB型者では他の血液型者のような病気リスクが存在しないため長寿になりやすいのではないかと考察されていたが、B型者が糖尿病になりやすいことについては何も言及されていなかった。あるいは、B型者の一部は糖尿病のため早く亡くなってしまうが、糖尿病に罹らずに90歳以上まで生き延びた方は百寿者になりやすいという可能性も考えられる。
 もっとも報告書の中で指摘されているように、病歴の有無と血液型との間には有意な関連性は見られなかったこと、「病気になりにくい、というよりも、病気になってもそれを生き残ることができる、という面からも検討を行う必要があるようだ。

 こちらこちらの連載で取り上げているように、人の免疫系は放送で説明されたほどそんなに単純ではない。例えばこれまでの話からはAB型者がいちばん免疫力が弱いとしばしば言われているが、こちらには以下のような記述があった。
AB型のヒトには抗A抗体や抗B抗体もないので、細菌に対する免疫力が劣るかというと、そんなことはありません。細菌表面には他の抗原も存在しますので、これらの抗原に対する抗体が作られて、感染防御に役立っています。

 いずれにせよ、免疫に関しては、細菌感染とウイルス感染、自然免疫と獲得免疫、免疫系の暴走による重症化などを総合的に検討する必要があり、単純に「X型者は免疫が強い」とか「弱い」と決めつけてしまうのは間違っている。

 あと、長寿との関連が誇張され、血液型別で異なる健康保険料、生命保険料、介護保険料などを徴収することになれば、たとえそれが科学的根拠に基づくものであったとしても差別として批判される可能性が高い【生命保険料に男女差があっても男女差別とは言われないようだが】。

 次回に続く。