じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 少し前、ベランダに放置してあったウサギのぬいぐるみを廃棄した。部屋の中に置くのは妻が嫌がるので段ボールの箱に入れて他のガラクタと一緒に積んでいたが、いつまで放置してもゴミ屋敷化するばかりなので、今回思い切って処分することにした。
 私自身は別段ぬいぐるみを集める趣味は無いし、このぬいぐるみに関して何かの思い出があるわけでも無いが、ぬいぐるみというのはとにかく可愛らしく作られていて、いったん入手してしまうと、よほどの覚悟が無いと処分できないところがある。かつてはイヌやイルカなど他にもいろいろなぬいぐるみがあり、捨てるかどうかを躊躇しつつ少しずつ処分してきたが、最後まで躊躇していたこのウサギをもってようやく断捨離が完了した。


2024年10月27日(日)





【連載】チコちゃんに叱られる! 「なぜかわいいものを見るとジタバタする?」とキュートアグレッション

 昨日に続いて、10月25日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 万博が始まったのはなぜ?
  2. なぜバレーボールをやるようになった?
  3. なぜかわいいものを見るとジタバタする?
  4. 【ひだまりの縁側で…】星の書き順でわかる性格テスト
という4つの話題のうち、3.について考察する。

 さて、3.の「なぜかわいいものを見るとジタバタする?」という疑問であるが、そもそも私には「ジタバタ」という擬態語の意味が分からなかった。私が知っている『じたばた』の意味は「いまさらじたばたしても始まらない」というようなものであり、可愛いものを見たからといて何をじたばたするのだろうか?
 念のため辞書を参照したが、やはり
  • 新明解:(一)もがいて抵抗する様子。(二)切迫した事態に何とか対処しようとして見苦しい行動をとる様子。
  • 三省堂国語辞典:@手足を動かして抵抗(テイコウ)するようす。「━(と)もがく」Aあわてふためくようす。「今さら━しても始まらない」
  • 大辞泉:1 手足をばたばた動かすさま。「―(と)もがき苦しむ」 2 ある状態から逃れようと慌てたり焦ったりするさま。「今ごろ―(と)したってもう遅い」
というように私が知っている『ジタバタ』の範囲と同一であった。放送で使われていた意味はおそらく「手足をバタバタさせること」のようだが、私の70+α年の人生では、可愛いものを 見て手足をバタバタさせている光景を見た記憶はない。
 さて放送では「キュン死しないようにするため」が正解であると説明されたが、ここでまた私が全く知らない「キュン死」という言葉が出てきた。この新語は辞書には載っていなかったのでネットで検索したところ、

●「キュン死」とは、「思わず心臓が止まってしまうほどときめくこと」を表しています。 ときめきを感じることを「キュン」と表現しますが、それでは表現しきれないときに使うのが、「キュン死」です。

という意味で使われているらしいが、私は残念ながらこれまでの人生ではそのようなときめきを感じたことはないし、もしこの先そのようなことがあれば比喩ではなく本当に心肺停止になってしまう恐れがありそう。

 ということで私にはよく分からない疑問であったが、入戸野宏さん(大阪大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. かわいいものを見てジタバタするのは『キュートアグレッション』という行動の一種。例えば赤ちゃんを見てほっぺをつまんだり、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめたりする行動。攻撃する意図は無いのに、かわいいものに対して激しい行動に出たくなってしまう現象のことを言う。
  2. キュートアグレッションが起こる理由はまだ分かっていないこともあるが、強烈な感情に圧倒されるのを正反対の行動を取ることでどうにか落ち着かせるためだという説がある。これと同様に、かわいいと思う気持ちが大きくなりすぎると、それがストレスになってしまう。普通にかわいい時は優しくする・守るという行動が起こるが、強烈なかわいい時はそれと正反対の攻撃的な行動をとることで強烈な感情を和らげようとする。
  3. そのストレスをそのままにしておくと俗に言う『キュン死』に陥る。ジタバタすることで「かわいい」という強烈な気持ちを安定させようとしている。
 放送では続いて、2015年にイエール大学で行われたキュートアグレッションの実験が再現された。ウィキペディアによると、元の実験では、実験参加者に気泡緩衝材を与えて感情に合わせて潰すように指示をした【但し本来の意図は隠して実験を行った】。参加者の半数には動物の成体、半数にはより可愛いとされる赤ちゃんの動物の写真を見せて気泡緩衝材をプチッとつぶす数を比較したところ、赤ちゃんの写真を見た群のほうがつぶす数が多かったという。
放送で再現された実験は以下のように行われた。
  • 16人の参加者に、岡村さんにインタビューした時の映像が提示された。
  • そのうち半数の8人は加工無し、残りの8人は岡村さんの顔部分を童顔(目が丸く顔の低い位置にある)のかわいい顔に、かつ高い声に加工した映像が提示された。
  • 参加者には実験の意図は知らせず、机上の気泡緩衝材を好きなだけつぶしてよいと教示された。
 その結果、加工無しの群では、7分間のあいだに気泡緩衝材を潰した個数は参加者1人あたり70.5個となった。いっぽう、可愛い顔と声に加工した群では1人あたり98.5個となった。加工あり群では170個というたくさんの数を潰した人もいたが、加工された画像を奇妙に感じた人(47個)や、かわいさを感じなかった人(7個)もいた。

 最後に入戸野宏さんから、

キュートアグレッションは自分の感情をうまくコントロールできていない状態であり、可愛いからといって知らない人の赤ちゃんやペットに触ろうとしたらトラブルになる。じたばたするのも悪くはないが、かわいいと感じたら、いったん立ち止まってその優しい気持ちを自分の中でよくかみしめ味わうことです。

という補足説明があった。

 ここからは私の感想・考察になるが、まず、『キュートアグレッション』というのがどういう行動のことを言うのか定義を明確にする必要があると思う。赤ちゃんやペットを触ろうとする行動、ぬいぐるみを抱きしめる行動は激しい行動であったとしても直ちにアグレッシブであるとは言えないように思う。気泡緩衝材をプチプチ潰す行動は、退屈な時に暇つぶしとして行う場合もあり、これまたアグレッシブとは言えない。

 次にイエール大学で行われた実験の再現であるが、これは完全に失敗であった。岡村さんの顔を童顔や高い声に加工したからといって本当に可愛くてたまらなくなるのかが確認されていない。むしろ不自然な加工でキモいと感じることでフラストレーションが高まり、気泡緩衝材を潰した可能性もある。あと、放送を視た限りでは、「加工あり」条件は「加工無し条件」の映像を加工したものではなく、どうやら別に収録され、語られた内容が異なっていたように思われた。これでは条件を比較したことにはならない。さらに、「加工あり」条件で気泡緩衝材が潰された個数は最少7個から最多170個までばらついており、実験参加者がわずか16人という少数のなか、平均値が98.5個であったからといって加工無し条件の70.5個より有意に多いとは到底言えないように思われた【分散が大きいので有意差が出にくい】。

 なおウィキペディアでは、もう少し詳しい解説が記されていた。

 次回に続く。