じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 11月18日の朝はよく晴れて、北西の空に月齢16.4の月と木星が輝いていた。月がずいぶんと北寄りに見えていたが、岡山のこの日の月の入りの方位は305.0°で、北西の方位315°に近い。日没の方位が最も北になるのは夏至の前後の299.6°で、太陽が300°より北に沈むことはない。なお今回、月の赤緯が最北となるのは18日の19時19分。


2024年11月18日(月)





【連載】あしたが変わるトリセツショー『がん対策』(12)ナッジの応用(5)厚労省公開資料からナッジを学ぶ(2)ナッジの特徴、選択の自由

 11月15日の続き。放送内容に関連した話題として、ネット上で公開されている、

溝田友里(2021).ナッジ理論等の行動科学を活用した健康づくりの手法についてー具体的事例を交えてー

というパワーポイント・スライドをもとに、ナッジとは何か?を読み取っていきたいと思う。

 さて、11月14日の日記に記したように、溝田さんたちが行ったがん検診受診勧奨は、多くの自治体での受診率向上をもたらした。スライドでは、なぜ受診率を伸ばせたのかについて、単に「大切さを理解してもらう」といった個人の努力に委ねることには限界があることを指摘(かつリテラシーによる差の拡大も懸念される)、それに代えて、

●「行動を選択しやすい環境をつくる」→「教育的アプローチから環境的アプローチへ」

というナッジやソーシャルマーケティングなどの新しい手法を組み合わせた、新たな行動科学的アプローチが提案されていた。この発想自体は、行動分析学と共通する点が多いが、「行動分析」という言葉が出ていないのはまことに残念。この種の社会問題に取り組む応用行動分析者が少ないため、もしくは行動分析側からの実績のアピールが不足しているためではないかと思われる。

 スライド(13頁〜)では続いて『明日から使えるナッジ理論』が解説されていた。画面の文字が小さくて判読できないところもあったが、
  • 受診に行かない人の心理バイアスを理解
  • EAST(Easy、Attractive、Social、Timely)【スライド26頁、出典は、Halpern D (2015). Nudging goes mainstream. Inside the Nudge Unit. WH Allen. PP.38-57.】
    • Easy 簡単 簡単で楽な行動を選ぶ
    • Attract 魅力的 言葉や印象、出来事など、魅力的に感じられるものを選ぶ
    • Social 社会的 多くの人がやっていること(社会規範)に影響を受ける
    • Timely タイムリー タイムリーな働きかけに反応しやすい
  • 「人の行動は不合理だ」という前提のもとに、最適な選択をできない人を良い方向に導く
  • ナッジを親子の象に喩えるならば、
    • ナッジ:親の象は子どもの象をそっと押しながら同じ方向に歩く。
    • リバタリアニズム(自由主義):何も働きかけないので、子象は別の方向に行ってしまうが親は注意を払わない・
    • パターナリズム(家族主義):親は子象を背中に乗せて歩く。
    という違いがある。
 「人々が行動を選択するときのくせ(惰性・バイアスなど)を理解して、強制することなく、人々が望ましい行動を選択するように導くアプローチ」であり、その基礎となる概念は、「選択の自由を確保した上で、人々の行動を「望ましい」方向へと変化させる介入」である。その対象としては、
  • 社会的に合意された「正しい解」が存在するもの
  • 合理的(最適)な判断ができない人を導く
となっている。この特徴から公衆衛生政策や保健政策との相性がいいと考えられている【スライド18頁】。

 ここで少しだけ感想を述べさせていただくが、「選択の自由」については、 などで取り上げたことがあるが、なかなか一筋縄ではいかない問題を含んでいる。

 次回に続く。