じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ウォーキングコースの途中に『左折禁止』と『一方通行』の標識が併置されている所がある。以前からこの2つの標識は冗長ではないか? どちらか1つだけでも十分なのではないかと疑問に思っていたが、やはり2つとも設置する意味はあるのではないかと最近になって気づいた。
  • 左上の『左折禁止』の標識だけの場合:左右方向の道路は一方通行ではないので、右から車がやってくる可能性があり要注意。
  • 右下の『一方通行』の標識だけの場合:直進できるかどうか不明。
 もっとも、この道路は丁字路であり、直進すると民家の駐車スペースに入り込んでしまってそれ以上先には進めなくなる。なので、実質的には『一方通行』だけで十分なはずだ。



2024年12月8日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「官帽のデザインの由来」

 昨日に続いて、12月6日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 音楽を聴くと踊りたくなるのはなぜ?
  2. なぜ警察官やパイロットの帽子は上が出っ張っている?
  3. ベートーヴェンの肖像画が怒っているのはなぜ?
という3つの話題のうち、2.について考察する。

 警察官やパイロットの帽子の上が出っ張っている理由は、放送では「天使の輪をのせたかったから」が正解であると説明された。服飾史研究家の辻元よしふみさん&ナレーションによる解説は以下の通り。なお辻元よしふみさんは「学ランの「ラン」ってなに? 」【2024年6月11日の日記参照】にも登場されている。
  1. 警察官、パイロット、自衛官、駅員が被っているのは『官帽』という。
  2. 官帽のもととなったのはルネサンス時代にヨーロッパの聖職者(神父、牧師、司祭など)が被っていた帽子。
  3. 聖職者の帽子にはツバはないが官帽と同じような出っ張りがある。
  4. 聖職者の帽子の出っ張りがあるのは、天使の輪(天使の頭の上にのっている輪)をのせたかったから。
  5. 天使の輪は『光輪』と呼ばれ、古代から超自然的なものに対する尊さを表すものとして神々と一緒に描かれていた。
  6. 宗教画でも、キリスト・聖人・天使などを区別するために描かれていた。よく知られているブランシスコ・ザビエルの肖像画も、絵をよく見ると頭の後ろに光輪が描かれている。
  7. そこで光輪のマネをした上が出っ張った帽子が作られ、ルネサンス期の聖職者たちの間で流行った。
  8. 当時、宗教と学校には深いつながりがあったので、聖職者たちの帽子は学帽としてもヨーロッパ全域に広まっていった。
  9. 海外の大学の卒業式でよく見られる帽子も聖職者の出っ張り帽子が元になっている。

 以上までのところで、出っ張り帽子の由来は分かったが、ではなぜそれが官帽に採用されたのか? これについては以下のように解説された【要約・改変あり】。
  1. 官帽に出っ張り帽子が採用されたのは19世紀に起こったナポレオン戦争がきっかけ。ナポレオン戦争ではプロイセン王国とフランスが激突したが、プロイセンでは学帽をかぶった学生も義勇軍に志願した。
  2. 当時の戦場でかぶる軍帽としては、ナポレオンでお馴染みのオムレツのような形をした『二角帽』や、バケツのような形にツバのついた『シャコー帽』が一般的であった。しかし、義勇軍の学生たちがかぶっていた学帽のほうが軽くて小さく、敵と見分けがつきやすいという点でプロイセン軍の将校たちに評判が良かった。そこで新しい軍隊を結成したタイミングで、学帽にツバをつけてより実用性を高めた。そのデザインは今の官帽と殆ど同じ。
  3. プロイセン軍の軍帽は、同じくナポレオン軍と戦ったロシアやイギリスなどに、さらに世界中の軍隊に広まった。
  4. 軍隊で採用された帽子は、さらに警察やパイロットや駅員のユニホームを作る時にも参考にされ、日本でもプロイセン式の帽子が採用された。
  5. なお、現在、世界中のほとんどの軍ではプロイセン軍の形の軍帽が採用されているが、ナポレオン戦争で負けたフランスでは別のデザインになっている。フランス陸軍が正式な軍服を着用する場合は、円筒形のケピ帽をかぶる。

 この話題の終わりのところでは、辻元さんが警察官の帽子をかぶって『がきデカ』のこまわり君の「死刑っ!!」のポーズをとっておられた。辻元さんは、がきデカの連載が始まった小学生のころから大ファンであり、おしりの角度にもこだわってノリノリでポーズをとってくれたという。




 ここからは私の感想・考察になるが、まず、今回の放送では、警察官、パイロット、自衛官、駅員が被っているのは『官帽』が取り上げられていたが、学生帽も同じように進化しており、なぜ『官帽』だけを限定的に取り上げたのかはよく分からなかった。官帽ほどではないにせよ、学生帽でも上の方が出っ張っているし【←少なくとも野球帽の形ではない】、また『角帽』やあだ名として『座布団帽』と呼ばれたデザインもある。

 ウィキペディアでは、今回の放送の「聖職者→学帽→プロイセンの義勇軍」という由来とは異なり、以下のように記されていた。

官帽と呼ばれる帽子の原型は、19世紀頃に北欧の労働者らが着用していた帽子だとされる。ナポレオン戦争前後、ロシア帝国及びプロイセン王国は将校用制帽としてこれを採用した。

 また制帽の意義については、以下のように記されていた。

  • 制帽を制定する意義は、制服の場合と同じく組織内部の人間と組織外部の人間、組織内の序列・職能・所属などを明確に区別できるようにすることである。また、同じ制帽を被る者同士の連帯感を強めたり、自尊心や規律、忠誠心を高める効果が期待される場合もある。格好良い制帽やかわいい制帽は人にあこがれを抱かせ、その制帽を被りたい(転じて、その職種に就きたい・その組織に入りたい)という願望をもたせ、人材確保に一役買うこともある。
  • 制帽には職務にあった機能性が求められる。例えば軍隊では儀礼用には豪奢な装飾を施したシャコー帽等が用いられ、通常の服務中は階級や職能を区分するための意匠が施された官帽が用いられる。そして野外作業や戦闘中には官帽と同様の識別性を持ちながらも、より必要な機能性に特化した作業帽や略帽といった制帽が制定される。
  • 逆に学生服やスポーツのユニフォームなど、軍隊や警察、消防ほど機能性の細分化が求められない制服の制帽は、単一のものを制定するのみで済ませられる場合もある。
 ま、制帽や制服というのは、軍隊では、個性を排し、組織の中の1つの部品として働くという意味がある。学校の制服については6月11日の日記でちょっとだけ考察した。

 いずれにせよ、官帽や学生帽はある程度の自由度を持ってデザインされる。元型が聖職者の帽子、あるいは19世紀頃の北欧の労働者の帽子にあったかということは、時系列的に並べていけば一番古いところから由来したというように見えるだろうが、あくまで参考程度であり、場合によっては全く偶然に類似したということもあるのではないかと思われる。
 さらにあるデザインが長期にわたって採用され続ける原因は、そのデザインが当初採用された時の由来とは異なる場合が多い。つまり光輪や聖職者の帽子とは独立したメリットがあればこそ、特定のデザインが保たれているのである。例えば、官帽の装飾で階級を表すことで指揮司令系統がスムーズになるというメリットがある。

 もう1つ、辻元さんが大ファンだったという『がきデカ』だが、この漫画が連載されたのは、1974年から1980年であり、私の学部・大学院生時代(1971年4月〜1980年3月)と一致していたこともあり、大学構内の資源ゴミ集積所から『少年チャンピオン』を拾ってきてほぼ毎号愛読していた。辻元さんが大ファンだというが、そう言われればなんだかご本人のお顔、特に目つきがこまわり君そっくりのように見える。次回ご登場された時はぜひ『八丈島のきょん!』をやっていただきたいところだ。

 次回に続く。