じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 注文していた『天文年鑑2025』を岡大生協ブックショップで購入した。諸物価が高騰している中、昨年と同じ1364円+税=1500円となった。
 昨年12月16日にも記したように、『天文年鑑』は1963年以来毎年購入している。今回が63冊目。昨年も記したが、この1年間に印刷媒体の本として購入したのはこの1冊のみ。

 表紙は2年連続で彗星の写真となっていた。2024年版は『西村彗星』。2025年版は『紫金山・アトラス彗星』。紫金山・アトラス彗星は10月13日には肉眼でも確認することができた(10月14日の日記参照)。

 ところで私が子どもの頃は、恒星図は1950年分点となっていた。その後21世紀が近づいた頃からは2000年分点に変更された。来年あたりからはそろそろ2050年分点に変更されるはずだと思ったが今のところまだ動きはないようだ。天文年鑑2025をざっとめくってみた限りでは、各惑星の記事のところには2050年分点ではなく「2000.0分点への補正値」が掲載されていた。Copilotに尋ねたところ以下のような回答をいただいた。

恒星図の分点変更についての具体的な日付はまだ発表されていないようです。2050年分点に変更されるのは確実ですが、その時期については今後の国際天文学連合(IAU)の決定次第です。

ま、分点をどうするのかは人間の都合であり、実際の夜空は歳差の影響で、赤道付近では毎年50″ほど異なって見えているという。毎年の差はごく僅かだが、人生70+α年も生きていれば、月の直径の2倍程度はズレて見えるはずだ【←春分の瞬間の天の赤道付近の星の見え方】。

 なお、月齢を大ざっぱに推定する計算法に必要なマジックナンバーは、2024年が「17」だったので2025年はこれに11を足して「28」になるが、「マイナス2」としたほうが覚えやすいだろう。
  • 5月5日の月齢:「1、2、3、4,5」月は月の数値ではなく「2、4、2、4、4」が割り当てられるので、月齢はm+d−2=4+5−2=7 ←実際の月齢(21時)は7.7
  • 7月7日の月齢:m+d−2=7+7−2=12 実際の月齢(21時)は12.1
  • 11月11日の月齢:m+d−2=11+11−2=20 実際の月齢(21時)は21.0

となり±1の範囲に収まっている。


2024年12月18日(水)




【連載】ヒューマニエンス 「“不安” ヒトが“自らつくった”進化のカギ」(11)共感と不安と孤独

 昨日に続いて、11月25日にNHK-BSで再放送【初回放送は6月1日】された、NHK『ヒューマニエンス』、

「“不安” ヒトが“自らつくった”進化のカギ」

についてのメモと感想。

 放送では、マカクザルを使った雨森賢一さん(京都大学)の実験紹介に続いて、ご本人がスタジオに登場された。【以下、要約・改変あり】。
  1. 前帯状皮質はうつ病や不安障害の患者さんで過活動が見られる場所で、昔から不安のセンターではないかと言われてきた。
  2. 通常のサルは多少の罰があっても水を得ようとするが、前帯状皮質を刺激したサルは罰が気になりすぎて水をもらわなくてもいいというように弱気(不安)になる。
  3. つまり、前帯状皮質は、強気になるとか弱気(不安)になるとかを制御する場所だと分かった。
  4. 前帯状皮質の24野は不安のセンターになっているが、すぐ隣で結合関係も密にある32野は社会性にかかわる領野であることがわかってきた。不安と共感が相互に作用して意思決定に関わっている。
  5. 【河田さん】ヒトの共感の起源は、お母さんと子どもの関係から進化したと言われている。その共感が(親子が)離れて不安になる。共感と不安がどこかでつながったのではないか。
  6. 共感にかかわる32野は24野に影響を与え、かつヒトでは大きく発達している。【雨森説】共感の部分が不安に影響を与えて社会形成の基盤になっている。
  7. 新型コロナの時、多くの人がマスクをつけたのは自分が病気になったからではなく不安になったから。不安が無ければみんな病気になってしまう。不安は社会的コンセンサス(合意)を得るのに重要。
  8. サルの32野は社会形成やランク、ヒエラルキーを作るが、ヒトの場合は32野が発達して複雑な共感が実現した。24野がかかわる弱気・強気には、他者の気持ちを見るという32野との相互作用によって生まれるのではないか。
  9. 人間関係が破綻すると簡単にうつ病になったり不安になったりする。それぐらい人間関係はパワフルな影響をもたらす。
  10. 【いとうせいこうさんが語った「なんだか不安なんだ」については】「不確かさ」を処理する脳の場所があり、まだ確立した研究ではないが前島皮質が不確かさに関係する場所。からだにかかるストレスに対する不快感に関わっている場所であり、前帯状皮質と関係が深く、不確かさに応答する場所として注目されている。
  11. 前島皮質は好奇心の発現の源とも考えられているが、動物たちは好奇心で探索するとケガをしたりする。なので「不確かさ」に対する不安を覚えるメカニズムがどこかにあるのではないか。そのメカニズムは、ポジティブな面では好奇心をもたらし、ネガティブな面では危険を回避する。これらにより不確かさに起因する2つの葛藤が表現できている。
 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、上掲の解説内容はまことに興味深いものであり、特に、
  • 不安と共感のつながりの起源は母子関係にある。
  • 不確かさに対する不安は、好奇心と危険という葛藤をもたらす。
という点は理解できた。

 もっとも昨日も指摘したように、放送で紹介された雨森さんの実験研究、あるいは関連研究として紹介されたRudebeckたちの2006年発表の研究は、マカクザルが

●罰と報酬の葛藤状態に置かれたサルは、前帯状皮質を刺激されると罰に対して弱気になる。前帯状皮質を除去されたサルは、他のサルの威嚇や性的刺激に無頓着になりエサだけに興味を示すようになる。

というだけであって、ヒトとサルの比較は行われていない。他者に対する思いやりとか、不安が社会形成の基盤になっているという主張は、ここまでの放送内容だけからは、唐突で飛躍があるのではないかという印象を拭いきることができなかった。

 ところで、上掲の説を拝聴した限りでは、不安と共感は常に連携しながら弱気・強気のバランスをとっていると考えられているようだが、であるとすると共感性に乏しい人はどうなるのだろうか? もちろん、「共感性に乏しい」と言っても、
  • 孤独を愛し、他者に関心を持たない人(無頓着な人)
  • 他者の気持ちを察することが苦手で共感の力が弱い人。
というようにいくつかのタイプがあるように思う。少し前、YouTubeで

一人(孤独)が好きで友達が少ない人は実は…【ゆっくり解説】

という解説動画を拝聴したが、何も対人交流が多ければ多いほど共感性が高いというわけではない。リンク先では「量より質」と言っていたが、別段友だちがゼロでも挙げられていたような孤独のメリットは活かせると思う。

 次回に続く。