じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 『みどりの守り神』のアニメ版と実写版の比較。
 アニメ版は「藤子・F・不二雄のSF短編シアター」第4巻収録。ウィキペディアによれば、アニメ版は『藤子・F・不二雄のSF(すこし・ふしぎ)短編シアター』として1990年3月から1991年10月に小学館ビデオからOVAとして全6巻発売。約36分。
 実写版は、今回、NHK-BSP4Kで放送されたもの。深見みどり役は藤アゆみあ。15分×2話=30分。

 実写版はアニメ版より5〜6分ほど短いだけであるが、左の画像比較が示すように、いくつかのシーンがカットされている。
  • A:沖縄旅行に出かける前夜、みどりが父母と一緒に過ごしているところ。化学工場が爆破され、また中東の砂漠地帯でヒツジや野生動物が死亡するといったTVニュースが流れ、父親が目を通していた新聞記事にも「奇病」の見出しがあった。いっぽう実写版は飛行機が墜落する場面から始まっており、これらのシーンは無かった。
  • B:墜落する前の機内。アニメ版では、みどりが母親に「沖縄の海ってきれいでしょうね」と尋ね、母親は「そりゃもう、でもリゾート開発が進んで海は随分汚染されたていう話なの。困ったものね。」。すると父親が「はっはっは。リゾート開発が進んでこそ、こうやって週末のファミリー旅行が楽しめるんだ。開発は人間にとって必然だよ。自然を征しているからこそ人間が栄えていられるんだからねえ。」と語り、母親も「そうねえ」と同意。実写版ではそのような会話は無し。
     なおアニメ版では、機内の座席は向かって左から、みどり、母親、父親という順になっており、みどりの向かって左には偶然坂口が座っていた。いっぽう実写版では、向かって右からみどり、母親、父親が座っており坂口の姿は見えない。実写版でもみどりと坂口は飛行機の中で知り合ったことになっているが、席が離れているのにどうして会話ができたのかがツッコミどころになる。
  • C:アニメでは最初の夜を過ごしている時、坂口は「俺たちはたった2人の人類なんだ」と言って、みどりの胸を剥がそうとする。実写版ではそのようなシーンはない。
  • D:みどりが家に戻ったところ。アニメ版ではクマのぬいぐるみがあった。
  • E:みどりがリストカットをする前、家の前の川で汚れた体を洗うために服を脱ぐシーン。実写版は無し。
 シーンAは墜落事故当時の世界情勢を伝えるものであり、またアニメ版のシーンBで父親が口にした人間本位の自然観はその後の展開の重要な伏線になっているが、実写版ではいずれもカットされていた。
 ということで実写版の制作者や俳優さんたちには申し訳ないが、私個人としてはアニメ版のほうが分かりやすく、インパクトが大きかった。

2025年04月11日(金)




【連載】4月から放送が開始されたテレビドラマ(4)『藤子・F・不二雄SF短編ドラマ シーズン3』(2)みどりの守り神、宇宙(そら)からのオトシダマ、オヤジ・ロック

 昨日に続いて、

藤子・F・不二雄SF短編ドラマ シーズン3

についての感想。本日は、放送された11話のうち『みどりの守り神』、『宇宙(そら)からのオトシダマ』、『オヤジロック』の3話を取り上げる。ネタバレ満載。
  • みどりの守り神【2回分で1話】
     この原作は、藤子・F・不二雄のSF短編の中の最高傑作とも言われている。私自身は過去にこの作品【原作】の内容を伝え聞いていたり、じっさいにアニメ版を観たことがあったので【2011年1月15日2023年8月29日の日記参照】、今回の実写版がアニメ版どどう違っているのかということに関心があった。上にも述べたように、実写版の制作者や俳優さんたちには申し訳ないが、私個人としてはアニメ版のほうが分かりやすく、インパクトが大きかった。
     こうしてみると、アニメで描けることを敢えて実写ドラマ化する意味がどこにあるのか、考えてみる必要がありそうだ。例えば『ミノタウロスの皿』 がお気に入りであるが、実写版で『ウス』を登場させても『猿の惑星』並みのメイクが必要。またミノアは食べられる前に裸になるが実写版で同じシーンを入れるのは難しいだろう。

  • 宇宙(そら)からのオトシダマ
     ドラえもんの道具と似たところがあるが、大人版。実写ドラマではあるが、宇宙人はアニメになっている。
     親しかったミッちゃんが家庭教師・御影と付き合うようになり主人公はふられてしまう、しかし、宇宙人の策略で御影は複数の女性関係があることがバレてしまい、主人公とミッちゃんの関係は修復された。もっとも、御影が悪い男で無かったとすればその策略は主人公の側の自己中心的な欲求を満たしただけということになってしまう。女の子が同年齢の男の子ではなく年長の男性に恋をするのはありがちな話であり、悪いことではない。ミッちゃんと付き合っていくためには、主人公はミッちゃんが魅力を感じるような長所を磨くほかはあるまい。

  • オヤジ・ロック
     巨大な岩石がペットになるという発想と、時間移動ができる道具(「タイム・トラベルト」)を活用したセールスの手法が面白い。もっとも、このセールスでは、
    1. 訪問販売先のお客に商品を紹介したあとタイム・トラベルトを作動させてそのお客ともども一か月後の未来に時間移動。
    2. 未来では、隣人は皆すでにオヤジ・ロックを購入しており、お客は「皆が持っている。あなただけがまだです」と言われる。
    3. その直後に現在に戻る。
    という手法が使われている。しかし1か月後に皆がオヤジ・ロックを購入している状況を作り出すためには、最初の1個が売れていなければならない。このタイムパラドックスが面白かった。
     時間移動ではないが、テレビのCMでも「皆が使っている。あなただけがまだです」という手法はしばしば使われている。例えば健康サプリの宣伝で「愛用者の97%が満足している」といったキャッチフレーズを耳にすることがあるが、そもそも満足できなかった人は愛用者にはならないので統計データには含まれていない。というか本当に厳密にデータをとっているのか疑わしい。
     元の話題に戻るが、団地でのセールス開始時に何軒かの家にサクラになってもらえば、上記のパラドックスは解消するかもしれない。



 次回に続く。