じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 【インドネシアその36】ジャワ島からバリ島へ

 イジェン山から下山したあと、フェリーでバリ海峡をわたってバリ島に移動した。海峡はいちばん狭いところで2.5kmほど。フェリーの所要時間は1時間程度だった。
 なお、インドネシアには、スマトラ島、マドラ島、バリ島それぞれをジャワ島と繋ぐ「4島連絡(連結)計画」というのがあり、そのうちジャワ島とマドラ島を結ぶ『スラマドゥ大橋が完成しているという。今回フェリーで渡ったジャワ島・バリ島間については、海中トンネルの構想もあるらしい。ま、フェリーのほうが景観を楽しめるというメリットはあるが。

2025年08月11日(月)




【小さな話題】『決断』と『選択』(4)動物は『決断』できるか?

 昨日の続き。

 今回取り上げている『決断』の話題について、AI(ChatGPT)と何度か対話を重ねることができた。その中で私自身の見解と異なっていたのは、

●(人間以外の)動物は『決断』できるか?

という議論であった。これについては、
  • 私自身の見解;「できない」。一番の理由は、言語が使えない動物たちは、将来を予測することができないから(将来を言語的に記述して現状と比較することができないから)。
  • AI;動物にも「決断」に相当する行動はある。但しあくまで「選択」として捉えた場合。
というように意見が異なっているように見えた。もっともAIも無条件に「動物は決断できる」と言っているわけではない。定義のしかたにもよるが、動物でも決断しているように見える行動をすることがある、と論じているだけであって、私の見解と対立するほどではないようにも思える。

 ここで改めて、『決断』の定義について考える。基本的な定義としては、決断は

■1■これまでの行動(活動)Aを止めて新たな行動(活動)Bに移行するかどうか?

という1回限りの選択である。但し、いくつかのバリエーションがあり、例えば、

■2■これまでの行動Aは継続しつつ、新たに行動Bまたは行動Cのいずれかを選択する。

という決断もありうる。この場合、Aを続けることが前提なので、行動Bと行動Cの間のメリット、デメリットが比較されることになる。なお選択肢は二者択一とは限らず、行動D、行動E、...というようにもっと多いかもしれない。具体的な例として、今住んでいる借家に住み続けるか別の物件に住み替えるかということであれば■1■、いっぽう定借などで期限内の退去が決まっている場合は■2■になる。

 上記以外にもまだまだバリエーションがあるが、中には『決断』ではなく『消去』で説明できる場合もある。例えば、

■3■これまでの行動Aを続けるか、それとも停止するか

というのは外見上は「諦めるかどうか」の決断と言える。例えば片想いの相手にメッセージを送り続けていたがちっとも相手にしてもらえないのでついに「諦めた」という決断がこれに相当する。しかし、これは単に「メッセージを送る」という行動が消去されたと見なすこともできる。
 サバンナの特定の場所で狩りをしていた肉食獣が、ちっとも獲物が現れないために別の場所に移動するという行動も外見上は■3■に近い。この場合、別の場所のほうが獲物がとれると予想したわけではない。消去バーストの一形態として、狩り場の範囲を拡大しただけと考えられる。

 さて、元の話題に戻るが、AIの回答は以下のような内容であった【要約・改変あり】。

 行動分析学の立場から言うと、**人間以外の動物にも「決断」に相当する行動はある**と考えられます。
 ただし、それは日常語の「決断」(=内面的な熟慮・言語的推論を伴う選択)とは違い、\*\*あくまで「選択行動」\*\*として捉えます。
  1. 行動分析学では「決断」は言語に依存しない
    行動分析学は、行動を
    • **先行条件(A)**
    • **行動(B)**
    • **結果(C)**
    の三項随伴性で説明します。
     この枠組みでは、「2つ以上の行動選択肢がある状況で、そのうち1つを選んで実行する」という行動は、言語を持たない動物でも観察できます。たとえば、ハトが2つのボタンのどちらかを押す、ネズミが右か左の通路を選ぶ、などです。
  2. 人間の「決断」との違い
    日常語では「決断」=**熟考・意志・言語的思考を経た選択**というニュアンスが強いですが、行動分析学ではその「内面の思考プロセス」を仮定せず、**外から観察できる選択行動**だけを扱います。

    そのため:
    • **人間の熟慮による進路選択**も
    • **ハトが光っているボタンを選ぶ行動**も
    分析上は同じ「選択行動」というカテゴリーに入ります。
  3. 言語活動の有無と「決断」
    あなたが感じている「言語活動がないなら決断ではないのでは?」というのは、スキナーの\*\*「言語行動(verbal behavior)」\*\*の観点で説明可能です。
    • **言語活動を伴う選択行動** → ルール支配行動(rule-governed behavior)
      例:人間が「○○すべきだ」と考えて選ぶ
    • **言語活動を伴わない選択行動** → 直接随伴行動(contingency-shaped behavior) 例:ネズミが報酬経験の積み重ねから最も餌が出るレバーを押す

    つまり、言語活動が関与しているかどうかは、**行動の生成メカニズム**の違いであり、「決断かどうか」というより「ルール支配型か直接随伴型か」という区別になります。
  4. まとめ
    • 行動分析学では「決断」=複数の選択肢からの行動選択。
    • 言語の有無は問わないため、動物にも「決断」に相当する行動はある。
    • 言語活動の有無は、「ルール支配行動」と「直接随伴行動」の違いとして扱う。


     ということで、結局は『決断』の定義の問題に行き着くことになる。AIは行動分析学における『決断』を「複数の選択肢からの行動選択」と見なしていたが、私自身は、
    • 動物でもできる選択行動:直接効果的な強化随伴性に基づく選択行動
    • 人間しかできない決断:将来の環境事象について予想されることを言語的に記述した上で社会的に規定された枠組みの中で1つの選択肢として構成し、自らをその想定された新しい環境世界に身を置くという巨視的な選択
    というように区別し、過去や将来の言語的評価に影響を与える「過大評価」、「過小評価」、「現実とかけ離れた物語化」などを分析していったほうが、より有用な「決断理論」を構成できるのではないかと考えている。
     じっさい「進路選択」に関する決断といったところで、過去の強化履歴や「いま、ここ」の三項随伴性で説明できるとは思えない。進路選択は、「もしこの進路を選択したら、どういう行動(努力)が求められ、それを遂行することでどういう結果が随伴するのか?」というルール支配行動により行われるものだと思う。