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 【連載】あしたが変わるトリセツショー「軽度難聴・突発性難聴」(4)大きな音に晒される時間の許容値
 
 昨日に続いて、2025年7月10日に初回放送された、NHK『あしたが変わるトリセツショー』
 
 ●改訂版・耳のトリセツ「軽度難聴・突発性難聴」
 
 についてのメモと感想。
 
 放送では続いて難聴が発生する仕組みが解説された【要約・改変あり】。
 
耳の奥には『蝸牛』という器官がある。
蝸牛の中には頭に毛の生えたような特殊な細胞(『有毛細胞』)が片耳ごとに1万2000個ほどある。
音が耳に伝わると有毛細胞は頭を天井に打ち付けるような動きをする。その振動が信号に変わって脳に伝えられる。これにより音を感じる。
ところが大きな音が何度も耳に入ると有毛細胞の一部がダメージを受ける。しかしその状態になっても残った有毛細胞からの情報を脳がうまく処理するため、直ちに聞こえなくなるわけではない。これが軽度難聴の状態。
軽度難聴に気づかず大きな音を聞き続けると有毛細胞が次々とダメージを受けてしまう。有毛細胞は「経年劣化」もあるが、大きな音を聞き続けると早期に劣化してしまう。これが難聴の状態。
死んだ有毛細胞はもう元には戻らない。聴力を守るためには有毛細胞を大切にすることしかない。
 
 ではどうすれば有毛細胞を守れるのか?
 放送ではまず、WHO推奨の「音による耳への負担を計算する式」が示された。定積分の式でわざと難しそうにしているが、要するに時刻t1からt2までの区間で、音の大きさを2乗した値を合計し、その合計値が一定の値を超えない範囲を「大きな音に晒される時間の許容値」として計算するものであった。結果は以下の通り。
 
なお、70dBの音については放送画面では1日あたりの目安が示されておらず、目安があるのかリスク無しなのかは不明であった。Web公開されているトリセツによれば、70dB相当の音としては、渋谷交差点、シャワー、炒め物調理、電車(地上)などがあり、60〜70dBのあたりには商店街や日常会話の含まれていた。その他、イヤホンは設定次第で50dBから90dBの幅があった。120dBの音:1日あたりの目安2秒以内
110dBの音:1日あたり21秒以内
100dBの音:1日あたり2分50秒以内
95dBの音:1日あたり10分40秒以内 【カラオケ】
90dBの音:1日あたり34分10秒以内 【目覚まし時計、DJイベント】
85dBの音:1日あたり1時間47分以内 【高架下、電車(地下)】
80dBの音:1日あたり5時間43分以内 ドライヤー、パチンコ、掃除機
70dB以下の音:リスク無し
 
 WHO推奨の式については出典が不明だったのでChatGPTに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた【以下、抜粋】。
 
WHO(世界保健機関)が「音による耳への負担」を評価する際に推奨している計算式として、直接的な“式”そのものではなく、職場や環境で一般に利用されている以下のような考え方や基準がしばしば引用されます:
WHOが示す「安全な聴覚負荷」の目安(式)
WHOは、医学文献や国際基準から導かれた目安として**「24時間あたり70 dB(A)を超えない」、または「1時間あたり85 dB(A)を超えないように」という制限**を提示しています。この基準は、聴覚障害を避けるための安全な音の総合エネルギー(音の強さと時間の積)を表す目安となるものです。
つまり、可聴負荷として:
という形で、安全圏を考える方式です。1日全体(24 時間)での平均音量を70 dB(A)以下に保つ
あるいは、1時間あたりの音量を85 dB(A)以下に留める
これは、職場などで使われる「時間と音量の交換則」(exposure-time trade-off:例えば3 dB増えるごとに許容時間が半分になる)に基づいており、音による耳への影響を判断・計算する上で非常に基本的な指針です。
補足:職場基準との比較
職場でよく使われる**NIOSH(米国産業安全衛生研究所)**の基準では:
 
85 dB(A) の音を8時間聴くことが**100%の一日の許容量(デイリードーズ)**に相当
そして、音量が3 dB増すごとに許容時間は半分になる(交差則/交換率:3 dB)という考え方が適用されます。
たとえば:
という具合です。88 dB(A):4時間
91 dB(A):2時間
94 dB(A):1時間
97 dB(A):約30分
 
 次回に続く。
 
 
 
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