じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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7月28日の楽天版に、2003年8月に登ったボリビア・アンデスのチャカルタヤ峰(5395m)の写真を掲載した。その後、掲載した写真の中にあったワイナポトシ峰をデスクトップ・パソコンの背景に設定したところ、何日か経つうちに、山頂直下の岩壁に人の顔が見えるようになった。しかも見え方は少なくとも3通りある。

2025年08月28日(木)




【小さな話題】同値(⇔)なのに国語辞典で反対語(対義語)とはどういうことか?

 昨日の日記で、各種国語辞典に登場している「主食」と「副食」について考察した。そのさい、殆どの辞書では「主食⇔副食」というように2語の間には「⇔」の記号が挟まれていた。

 この「⇔」をネットで検索すると、知恵袋で以下のようなやりとりがヒットした。なお「◆」は「→」が上、「←」が下になるように組み合わせた記号。
  • ⇔の読み方はなんですか?
    →数学の世界かどうかは解りませんが「同値(どうち)」です。文字変換のレベルなら「やじるし」で候補は出てきます。
  • 数学で使う「⇔」はどういう意味ですか?
    →おっしゃっている「⇔」は、おそらく、「◆」の代用で使われているものだと思いますが(unicode がフルに使えず、日本語文字コードだけが使えるアプリやサイトでは、「◆?」がないので、「⇔」で代用するのが、普通だったし、今でもそうなので)、
    「A ◆ B」は、「AはBの必要十分条件」とか「AとBは同値」のこと、世間の言葉に翻訳すると、「AとBは、見た目は違っても、完全に同じことを言っているよ」というふうな話です。


 いっぽう国語辞書に出てくる「⇔」は普通「反対語」、「対義語」という意味で使われている。「主食」と「副食」はどうみても同値ではないし、上掲の「AとBは、見た目は違っても、完全に同じことを言っているよ」をそっくり当てはめると、「主食と副食は、見た目は違っても、完全に同じことを言っているよ」となるが、これは全く間違っている。ではなぜ、反対語に「⇔」が使われているのだろうか? 例によってChatGPTに、

日本語の辞書では反対語を示す時にしばしば「⇔」という記号が使われます。しかし「⇔」は数学では同値という全く逆の意味になります。なぜ同じ「⇔」が全く異なる意味として使われるようになったのでしょうか?

と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。


とても面白いご質問です。確かに、
  • **国語辞典**では「⇔」は「反対語・対語」を示す記号として使われ、
  • **数学**では「⇔」は「同値(AならばB、かつBならばA)」を示します。

一見すると「逆の意味」のように見えますが、実は両者には「**対応関係**」という共通のイメージがあります。
  1. 辞書における「⇔」の起源
    国語辞典で「⇔」を使うようになったのは20世紀半ば以降で、編集上の記号の一つとして定着しました。
    これは「AとBは互いに関係する(逆方向に結びつく)」ということを矢印で表したもので、\*\*「反対方向への対応」\*\*を強調するために使われています。
    例:
    * 明るい ⇔ 暗い
    * 強い ⇔ 弱い

    つまり、「こちらが立てばあちらが立たない」という関係を可視化するための便宜的な記号です。
  2. 数学における「⇔」
    数学での「⇔」は「if and only if(?であるとき、かつそのときに限り)」を意味します。
    これは「AとBが論理的に対応している」「双方向に結びついている」ことを示しています。

    共通する「両方向の結びつき」という発想
    * 辞書:「対義語Aと対義語Bは互いに対応している」
    * 数学:「命題Aと命題Bは互いに論理的に対応している」

    このように、\*\*「両方向に矢印が伸びている=双方向の関係」\*\*という点で共通しており、そこから分野ごとに意味が枝分かれしました。
  3. なぜ「逆の意味」と感じるのか?
    国語辞典では「⇔」が「対立関係(逆の関係)」を指すのに対し、数学では「⇔」が「同値(同じ意味)」を指すため、結果的に逆の印象を与えるのです。 しかし両方とも根本には「**AとBが双方向で結びついている**」というイメージがあります。

    * 辞書では「対立語」という形で結びつき
    * 数学では「同値」という形で結びつく

    記号が同じなのは、この「双方向の対応」を二重矢印で表すという**直感的な発想**からきています。
  4. まとめると:
    「⇔」は本来「双方向の関係」を示す記号であり、辞書では「反対語どうしの関係」、数学では「命題どうしの同値関係」として、それぞれ分野に合わせて意味が分化したため、「逆の意味」のように見えているのです。

 さらに英語でも「⇔」に相当する記号が使われるのか尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。

いい質問です。 英語の辞書や学術的な資料では、日本語の国語辞典のように「⇔」という独自記号を統一的に使う習慣は **ほとんどありません**。代わりに、以下のような表現方法が一般的です。
  1. **ant. / opp.**
    • **ant.** = antonym(反意語)
    • **opp.** = opposite(反対語)

    例:
    * *hot* ? **ant.** cold
    * *increase* ? **opp.** decrease

    これは英英辞典や学術書でしばしば使われる省略記法です。
  2. **≠ や ? の使用(非公式)**

    * 一部の教育用資料や語彙リストでは、**≠**(not equal)や **?**(double arrow)を便宜的に使う例があります。

    * hot ≠ cold
    * hot ? cold
    ただし、これは国際的に統一された標準ではなく、あくまで教材や学習補助用の表記にとどまります。
  3. **見出し語の下に “Antonym:” を明記**
    多くの大手辞典(Oxford, Merriam-Webster, Collins など)では、

    * Synonyms: …
    * Antonyms: …
    というように、**「Antonyms:」というラベル付きリスト**で反意語を示します。 記号ではなく単語で明示する方式です。
  4. **特殊な略号や記号はほぼ使われない**
    英語辞典編集の伝統として、略号を使う場合は “syn.” “ant.” のような **文字省略**が主流で、「⇔」のように特殊な記号を導入して対義語を表す習慣は定着していません。
  5. **まとめ**
    • 英語辞典では **「⇔」のような統一記号は使わない**。
    • 一般的には **“ant.” や “opp.”** を用いるか、**“Antonyms:”** とラベルをつけて列挙する。
    • 教材レベルでは **≠ や ?** が便宜的に使われることはあるが、正式ではない。


 最後に中国語について尋ねてみた。なお以下の回答文の簡体は適宜、対応する日本語の漢字に置き換えた。

良いところに注目されました。 中国語の辞書や学習書では、日本語の国語辞典のように「⇔」を対義語専用の記号として使う習慣は **一般的ではありません**。代わりに、以下のような方法がとられます。
  1. **「反義詞」ラベル**

    もっとも標準的なのは、見出し語の下に **「反義詞: …」**(反対語、antonym)と明記する方法です。
    例:
    * 高 ― 反義詞: 低
    * 勇敢 ― 反義詞: 胆小

    これは中国の大手辞書(《?代???典》など)で広く用いられる方式です。
  2. **「近義詞」「反義詞」の並列表**
    教材や辞典では、しばしば
    • 近義詞(類義語): …
    • 反義詞(反対語): …

    と並べて提示されます。記号ではなく語で区別します。
  3. **矢印や「◆」の使用(非公式・学習用)** 【◆は「←→」を1文字にしたもの。
    一部の語学教材やオンライン辞書では、対義語を直感的に示すために
    * 高 ◆ 低
    * 熱 ◆ 冷
    のように **「◆」** を用いることもあります。
    ただし、これは正式な辞書記号ではなく、あくまで教育的・視覚的便宜のために採用されるものです。

  4. **「⇔」はほぼ使われない**

    日本語の国語辞典特有の記号法であり、中国語の辞書編集伝統には根付いていません。

  5. **まとめ**
    • 中国語辞書では「⇔」は使わない。
    • 標準は **「反義詞: …」** と文字で明示。
    • 教材やネット辞書では補助的に「◆」が使われる場合はある。


 なお、「反対語とは何か?についてはこのWeb日記でも何度か考察したことがある。
  • 2010年9月16日「鬱」の反対の状態
  • 2011年6月15日「楽しい」、「嬉しい」、「喜ぶ」の違い
  • 2013年9月13日:「後悔の反対語(対義語)は?」
  • 2014年版講義録「刺激弁別」の反対語は「違いが分からない」ですが、これとは別に「同じであると見なす」、「混同する」といった行動現象があります。
  • 2024年11月12日「入る」と「出る」は反対語か?
 結局、日常語としての「反対」というのは便宜上の実用概念であって、絶対的なものではない。例えば、
  • 「白」の反対語:「黒白をつける」という意味なら「黒」。「紅白」なら「赤」
  • 「東と西」;ボリビアは日本の東にあるか、西にあるか? 北米経由で行くときは「東』、ドバイ経由で行くときは「西」
  • 「山」の反対語:「海」だったり「川」だったり文脈によって異なる。