じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 9月26日放送のNHKあさイチ『プレミアムトーク 今田美桜』をNHKプラスで視聴した。後半のところで朝ドラ『あんぱん』最終回に登場した犬について以下のようなトークがあった【要約・改変あり】。
  • やなせさんとのぶさんも犬を飼っていた。
  • 柳井家のリビングにいろんな種類の犬の置物がたくさんあったが、実際、やなせさんの仕事場にも犬の置物がいっぱいあった。
  • やなせさんが飼っていた犬の写真によく似た犬を探して登場してもらった。
  • 【大吉さん】≪リビングでインタビューを受けるシーンはこの部分だけ切り取ると携帯電話のCMのように見える≫


 犬については9月29日の日記で考察したことがあったが、もう少し早くから登場させてもよかったように思う。なお最終回で突然出てきた理由についてはこちらに詳しい情報あり。

 それはそれとして、ネット上で「今田美桜 犬」などで検索すると、今回登場したのとそっくりの犬を今田美桜さんが撫でている写真が何枚か出てくる。いずれも今田美桜さんが主人公(シーズン3)をつとめた『花咲舞が黙ってない』というドラマに関連する犬らしいがドラマを視ていないのでよく分からないが、同一の犬という可能性もある【画像D、E、F】。
 なお画像Aは、散歩シーンの時に撮影されたと思われるオフショット。画像Bは「居間でインタビューを受ける時に犬が登場」というシーンだがこれも実際には放送されていない。録画再生で念入りにチェックしてみたものの、犬の一部が写っているのは画像C程度であった。
 あと大吉さんが言っていたソフトバンクのCMとの類似性だが、ネットで検索したところ初代のカイくんは2018年6月28日に死亡、その後は息子のカイトくんとカイキくんが2代目お父さんとして活躍しているとのこと。いずれも白い北海道犬であり、個人的には今回の犬とはあまり似ていないように見える。

2025年10月1日(水)



【連載】チコちゃんに叱られる! 「『貴様』の罵り言葉化」

 9月29日の続き。9月26日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は
  1. なんで船には名前がついているの?
  2. なんでベルトを締めるようになった?
  3. なんで貴様って失礼な言葉なの?
という3つの話題のうち最後の3.について考察する。
 放送では、「貴様」が失礼な言葉であるのは、「敬語は時間がたつと敬意がすり減っていくから」が正解であると説明された。この番組ではお馴染みの飯間浩明さん(国語辞典編纂者)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 「貴様」は本来は目上の人に対して使う尊敬語だった。
  2. 関ヶ原の戦いがあった1600年頃には使われていた。毛利家家臣が殿様の側近に送った手紙の中では、「貴いあなた」という意味で「貴様」が使われていた。
  3. 当時、「貴様」は手紙の中で相手への敬意を表す言葉として、武士や学者の間で使われていた。
  4. 江戸時代後期になると「貴様」の使い方が大きく変化した。江戸時代に書かれた落語の本『落噺六義』(1797年)では、年上の人物が年下に対して「貴様もよくよく馬鹿な人だ」と呼んでいる記述がある。
  5. 丁寧な意味で使われていた「貴様」がお坊さんの説話などを通じて一般庶民に広まると、目下や同等の相手に対しても使われるようになる。
  6. いったん目下に使われた言葉は、もう一度目上の相手には使いにくい。真逆のニュアンスでとらえられるようになる。
  7. このようにして「貴様」から徐々に敬意が薄れ、目下の者を罵る言葉になった。
  8. 一般に敬語は長い間使われると敬意が薄れ価値が下がる。これを『敬意漸減の法則』という。
  9. 「おまえ」も同様。対等の相手でも「おまえ」と呼ばれると少し失礼に感じることがある。「おまえ」は漢字で書くと「お前」だがもともとは「大前」であり、神様や天皇がいる前の空間のことであり、とても高い敬意を含む言葉だったが、江戸時代に一般庶民が対等・目下の相手に使うようになって、失礼な言葉になった。
  10. 「ごくろうさま」は漢字で書くと尊敬の意味の「御」や「様」を含む「御苦労様」であり本来は目上の人に対して使っても失礼にはならないはずだが、現在のビジネスの世界では部下から上司に向かっての「ご苦労さま」を失礼と感じる人もいる。
  11. 「ご苦労さま」は年配の人しか使わず若者にはなじみがないことから、若者は「ご苦労さまは、年上が年下に使う言葉である」と勝手に解釈し、言葉の敬意がすり減った。
  12. 敬意が薄れる要因としては「言葉が広まる」と「若い人が使わなくなった」という2つがある。


 ここからは私の感想・考察を述べる。
 「貴様」で思い出されるのは「貴様と俺とは同期の桜」であり、このことから「自分は○○であります」、「○○殿」などと同様、「貴様」は軍隊用語として使われていたように思われる。となると、相手を罵る意味に転じたのは、江戸時代後期ではなく戦後ではないかという気もする。さっそくChatGPTに尋ねたところ、以下の回答をいただいた。
「貴様」はもともと罵り言葉ではなく、むしろ非常にていねいな呼びかけでした。
  • ### 本来の意味
    • 「貴様」はもともと漢語で「貴(とうと)い御様(おんさま)」の意味で、相手を敬って呼ぶ語でした。
    • 室町時代や戦国時代の文書では、武将が相手に対して敬意をこめて「貴様」と書いています。
  • ### 変化の過程
    • 江戸時代には、武士の日常会話や書状で「貴様」がよく使われ、当初は敬称。
    • ところが、武士や町人の間で対等な相手に用いるうちに、敬意のニュアンスが薄れて「お前」や「手前」と同じく「二人称代名詞」として一般化しました。
    • 江戸後期にはすでに「お前」「手前」と同様に、尊敬の響きよりも「対等・ややぞんざい」な呼び方に変化。
  • ### 罵り言葉化
    • 明治時代以降、軍隊や学校などで「貴様」が二人称として日常的に使われましたが、その場の上下関係(上官が兵士に、教師が生徒に、あるいは対等の口論で)によって、響きが荒っぽく聞こえるようになりました。
    • 大正〜昭和初期ごろには「貴様=敬語」ではなく、むしろ強い口調の二人称とみなされ、次第に「相手を罵る言葉」というイメージが広まりました。
    • 戦後にはほぼ完全に「罵り・敵対的な呼び方」として定着しています。
  • ### まとめると
    • **敬語の「貴様」:室町〜江戸前期**
    • **対等な呼びかけに転化:江戸後期〜明治**
    • **罵り語化:大正〜昭和初期**
    したがって、「貴様」が現在のように明確に相手を罵るニュアンスを持つようになったのは **大正〜昭和にかけて** と考えるのが妥当です。


     「同期の桜」から戦後に相手を罵る意味だけになった経緯については以下のように説明があった。
    とても鋭いご指摘です。軍隊での「貴様」は、現在の「きさま(罵り)」とはニュアンスがだいぶ違いました。
    1. ## 1. 軍隊における「貴様」
      • 旧日本陸海軍では、二人称として **「貴様」「お前」「君」** などが使われました。
      • 特に兵同士の間では「貴様」は **「お前」よりやや硬いが対等な呼び方** として普通に使われていました。
      • 歌「同期の桜」のように、戦友への呼びかけには罵りのニュアンスはまったくありません。
    2. 戦後に「罵語化」した理由
      戦後、「貴様」が罵り語だけに定着していった背景にはいくつかの要因が重なっています。
      1. 軍隊文化の消滅
        * 戦前?戦中に「貴様」が普通の二人称として残っていたのは、軍隊という特殊な共同体で使われ続けていたからです。
        * 戦後、軍が解体され、その用法が一般社会に残らず、次第に「荒っぽい二人称」とだけ理解されるようになりました。
      2. 敬語からの意味落ちの最終段階
        もそも「お前」「手前」と同じように、すでに江戸後期?明治には「対等?ぞんざい」になっていました。
        軍隊でギリギリ中立的に保たれていた「貴様」も、戦後はその中立性を失い、「罵り」側に完全に傾いたと考えられます。
      3. 大衆文化(映画・漫画・小説など)の影響
        戦後のヤクザ映画・チャンバラ映画・探偵小説・漫画などで、敵役・荒い男言葉の中に「貴様!」が多用されました。
        特に映画やテレビドラマのセリフとして「きさま!」が「怒鳴る」「敵を罵る」場面で繰り返し用いられ、一般の人々の耳に「罵り語」として刷り込まれていった可能性は大きいです。
    3. まとめ
      * 戦前:軍隊や若者同士では「貴様」は対等の二人称(罵りでない)。
      * 戦後:軍隊文化の消滅と敬語→罵語化の一般的流れで、ニュアンスが負に定着。
      * 特に **戦後映画や漫画のセリフ表現が、現在の「きさま=敵を罵る言葉」というイメージを決定的に広めた** と考えるのが妥当です。

     ChatGPTにさらに、なぜ「きさま」が罵り語として定着したか(映画・文学の影響含む)について考察してもらった。
    戦後になって「きさま」が敵意ある文脈で用いられた言葉として定着しつつあることは確かですが、それが 映画や文学の一作品 によって一夜にして広まったという証拠は見つかりませんでした。むしろ、以下のような複合的な要因が作用したと考えられます:
    1. 言語変化の文脈的な末端化
       もとも「貴様」は敬称 → 対等呼称 → ゾンザイ呼称へと変遷する過程を経ていた言葉です。言語変化(語義変化)の傾向として、「敬称 → 中立 → 侮蔑語」になる流れは他の二人称代名詞でも見られます(「お前」「手前」など)。この背景があって、「きさま」も罵倒語化する下地があったと考えられます。
    2. 軍隊文化の消失・一般化の断絶
       戦前・戦中は軍隊文化圏で「きさま」が対等的呼びかけとして使われていたが、戦後その共同体が壊れ、一般社会にはその感覚が伝わらなくなりました。結果として、「きさま」が使われる文脈は荒っぽさや対立場面に限定されがちになった可能性があります。
    3. 大衆メディア・ドラマ・映画・漫画の言語選択
       戦後の映画・テレビドラマ・漫画などでは、聴衆に分かりやすく感情を表現するために、明確な「敵対・怒り・蔑視」の語を使う傾向があります。悪役や緊迫場面では短く強い語が使われやすく、「きさま!」という響きがその用途に合っていたので、これが多用されたことで多くの人に「罵り語」という印象で刷り込まれた、という仮説は十分に成り立ちます。
    4. 語感の音響性・記憶しやすさ
       「きさま」という語は、子音‐母音‐子音‐母音というリズムがはっきりしていて、感情的に響きやすい語感を持っています。怒鳴るとき、相手に響く言葉として使われやすかった可能性があります。
    5. 教育・言語規範の変化
       戦後、日本語の言語教育・敬語指導・言語規範意識が強まり、乱暴な言葉遣いや差別的な呼称を避けるという文化的圧力が高まりました。その中で、「きさま」は「粗暴・不適切な語」として位置づけられ、罵倒用途以外で使われる機会が裏返って抑制されたのかもしれません。

     最後に「君」や「あなた」もいずれ罵り言葉化するかどうか尋ねてみた。
    いい問いですね!
    「お前」「手前」「貴様」が「敬称 → 対等 → 罵り」へと意味変化したことを踏まえると、「君」「あなた」も同じ道をたどるのでは?と考えられるわけですね。
    1. 「君」の場合
      • **語源**:「君(きみ)」=本来は天子・主君などを指す尊称。
      • **変化**
        * 古代〜中世:「君」=身分の高い人を敬う言葉。
        * 江戸時代:親しい相手への呼びかけ(男女間・師弟など)。
        * 明治以降:学生言葉や文語体で二人称として広まる。
        * **現代**:「君」は上下・場面によってニュアンスが大きく変わる。「君、どう思う?」は上から下への言い方に聞こえるので、すでに目下扱いニュアンスは強い。
         →ただし「罵り」までは進みにくく、むしろ**職場や学校での上から目線の呼び方**に固定されている印象。
    2. あなた」の場合
      • **語源**:「あなた」=「彼方(あちら)」の意。遠称(あの方)から、相手を敬って呼ぶ二人称に転用。
      • **変化**
        * 江戸時代:「あなた様」→「あなた」=敬称。
        * 近代以降:夫婦間(妻が夫を呼ぶ語)や、対等の丁寧な呼びかけ。
        * **現代**:少し改まった場面で普通に使うが、夫婦間では古風/場合によっては距離感がある。
        →「あなた!」と呼び捨てで強い口調に使われることはあるが、これは罵倒ではなく**注意・強調**。
    3. 敬称が罵りに変わるメカニズム
      過去の例を整理すると、共通しているのは:
      1. **本来は高敬語**(御前・御手前・貴様)。
      2. **日常での普及により、対等呼称へデフレ**。
      3. **軍隊や町人社会など上下の厳しい場で乱暴に使われる**。
      4. **荒っぽいイメージが定着して罵り語化**。

      つまり「敬意 → 普及 → 荒っぽい場で使用 → 罵り」へと落ちていきます。
    4. 君」「あなた」はどうか?
      * 「君」「あなた」はすでに日常的で **ぞんざいさを強める余地が少ない**。
      * 「君」は職場や学校で「上から下」への語感が強くなる方向で固定。
      * 「あなた」は夫婦間やフォーマル場面に残り、罵倒にはなりにくい。

    →結論として、**「君」「あなた」が「貴様」「お前」「手前」と同じように罵り言葉化する可能性は低い** と考えられます。
    ただし、「君」はすでに「上から目線」「偉そう」というニュアンスを帯びつつあるので、将来「失礼な言葉」と見なされる可能性はあります。