じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] ユッカ。写真上が今回撮影。写真下は2002年6月16日撮影。もともと岡大事務局棟[旧日本軍第17師団(大正14年廃止)司令部・歩兵第33旅団司令部]の前に咲いていたが、本部棟新築、事務局棟移築に合わせて現在の場所に移植された。


6月13日(日)

【ちょっと思ったこと】

地下鉄の階段で台風並みの強風を体験

 ↓に連載しているように、土曜日に、東大・本郷を訪れる機会があった。今回は、行き帰りとも地下鉄の根津駅を利用したのだが、駅の階段付近での強風に驚かされた。屋外が全くの無風であるにも関わらず、地下から地上に向かって台風並みの強風が吹き上がっていたのである。この現象は以前、何かのニュース特集で取り上げていたように思うが、とにかくすごかった。あれでは、バランスをとりにくいお年寄りは転倒してしまうことだろう。

 どうして地下鉄の階段だけ強風が吹くのだろうか。電車がホームに近づいて来るとき、トンネル内の空気が強く押し出され、行き場を失って屋外に吹き出されるためではないかと思ったが、もしそれが原因であるなら、電車が発車した後では、逆に、屋外の空気を吸い込むように風向きが逆になるはずだ。どなたか情報をいただければ幸いです。

【思ったこと】
_40613(土)[教育]情報学環新生記念シンポジウム(2)坂村健氏のお話

 昨日に引き続き、東京大学・安田講堂で開催された東京大学大学院情報学環・学際情報学府新生記念シンポジウム「智慧の環・学びの府:せめぎあい、編みあがる情報知」の感想。なお以下はすべて長谷川の聞き取りに基づくため、不正確である可能性がある。あくまで個人の感想に過ぎない点を予めお断りしておく。また、リンク先は、先方のサーバーのメンテやurl変更によりアクセスできない場合があります。

 シンポでは、文化・人間情報学コースに引き続き、坂村健教授から学際理数情報学コースの研究紹介が行われた。坂村氏のお話は、岡大で行われた講演会を初め、テレビ番組などで何度か拝聴しているが、TRON以外のお話を聞くのは今回が初めてであった。

 ところで、2002年3月に岡大に来られた時は、坂村氏は、マイクロソフト製のパワーポイントではなく、B-TRON上で作動する自前のプレゼンソフトを使って御講演された。このソフトは、坂村氏が購入されたノートパソコンのハードディスクは「ディスクシュレッダー」でWindowsの残骸を完膚無きまで徹底的に削除、その後にインストールされたそうである。今回も「Windowsの残骸を完膚無きまで徹底的に削除」したノートパソコンを持ち込まれるのかと思い、デスクトップが投影されたスクリーンを注意深く見つめていたが、何のことはない、シンポの他の発表者と同様、Windows上のパワーポイントを使って話題提供されていた。東大では共用パソコンとしてマックが導入されていると聞いていたが、今回に限っては、Windows搭載マシンが採用されていたようだ。ちなみに、このデスクトップ画面には、ATOKのパレットも写っていた。今回、坂村氏がWindowsを利用された理由が、単に他の発表者に便宜的に合わせたためなのか、TRON陣営とマイクロソフトが連携の結果を反映したものなのかは、定かではない。とはいえ、情報学の最高学府のプレゼンが「Windows+パワーポイント」で行われるというのは、屈辱的であるような気がしないでもない。ここは多少不便でも、TRONを採用すべきであった。

 さて、本題に戻るが、坂村氏のお話の中で最も印象に残ったのが、

●Generalistを目指すのではなく、他分野の人と協調して共同作業できるSpecialistを目指す

という教育理念であった。要するに、例えば3人のGeneralistsを養成しても役に立たない、3人の高水準のSpecialistsを養成すればこそ、そこで

●「学際」・「協調」・「分業」を前提とするからこそ、他の分野をパートナーに任せ、自身は専門に集中できる

ということが可能になるというのである。「学際性」については、私自身が所属する行動科学講座でもしばしば話題になるが、このあたりの議論はいつも考えさせられるところだ。私自身は、Generalist養成か、Specialist養成かという二者択一ではなく、例えば、10人の専門家を養成するのであれば、
  • その分野だけに詳しいSpecialists 5人。
  • 「学際」・「協調」・「分業」に通じたSpecialists 3人。
  • 全体を概観し、パースペクティブを示すことのできるGeneralists 2人
というように、多様な養成が行われることもアリではないかと思っている。なお、Generalist養成か、Specialist養成かについては、後半のパネル討論の中でも、境真理子氏や武田徹氏が言及されていたので、もういちど後で取り上げてみることにしたい。

 坂村健氏のお話の中でもう1つ印象に残ったのは、入学試験、教育カリキュラム、卒業判定を一貫して制定されているという点である。学部と分離した独立型大学院であること、学際的であるために多様なバックグラウンドをもつ学生が入ってくるという点で、学力の基準を揃えことには大きな困難があると思われるが、
  • 偏りがなくオープンな入試制度を実施(入試問題はすべて公表)。
  • 入学時の学力基準を揃えるため、修士1年次の基礎科目を選択必修とする
  • 入学学力基準、基礎学力基準、修士課程修了基準を一貫して定め、基礎科目→通常科目→修士研究というステップでこれを支える
という形でこれに対処していくようだ。このあたりは、私の所属する独立大学院・文化科学研究科でも大いに参考になる。

 次回に続く。