じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
オオアレチノギク。この時期、各所で種を飛ばしている迷惑雑草のチャンピオンだ。こちらに、オオアレチノギク・アレチノギク・ヒメムカシヨモギの区別点が解説されていた。花弁がないようにみえるのがオオアレチノギクの特徴。



9月16日(土)

【ちょっと思ったこと】

ママカリフォーラム

 岡山市の岡山コンベンションセンター(ママカリフォーラム)で、日本教育心理学会第48回総会が始まった。私は会員ではないが、いくつか興味深い企画があり、当日・臨時会員として参加した。

 ママカリフォーラム(愛称)の施設内に入ったのはこれが初めてだったが(←隣の全日空ホテルのレストランに行く時に間違えて入ったことはあるが)、会議場としての設備はなかなか、パワーポイントなどの投影も万全であった。こんなに素晴らしい設備があるなら、これから先も各種学会にぜひ利用したいところであるが、気になるのは利用料金である。施設料金表をざっと見たところでは、イベントホール全面を1日利用するだけで40万円前後、コンベンションホールやレセプションホールなどすべて借り上げると、150〜200万円は必要ということになる。3日間でおおむね500〜600万円か。となると、参加費6000円として、1000人分の参加費がすべて施設使用料に充てられることになる。これ以外にも、講演者への謝金・交通費、案内看板、プログラム印刷費、学生スタッフへのアルバイト料などが必要になる。やはり1500〜2000人規模の大会でないと、ここで開催するのは難しいだろう。そう言えば、今回の大会では、学生スタッフは、アルバイトではなくボランティアとして募集されていたようだ。

 気になるのはやはり台風13号の影響である。予想では岡山地方は17日夜〜18日午前に最も影響を受ける見込みだが、大会3日目の行事は無事に実施できるだろうか。

※昨日の日記にも書いたが、気象衛星画像では、日本のはるか南東方向(北緯20度、東経155度付近)にはどうみても台風と思われる雲の渦巻きがある。いつになったら「14号発生」が発表されるのだろうか。

※マグリット風のママカリフォーラムの写真がこちらにあり。意図が分からない人は、2002年3月31日の日記参照。

【思ったこと】
_60916(土)[心理]日本行動分析学会第24回年次大会(12)確率価値割引と現実の行動/心理学実験・実習科目における行動分析学テーマ

 9月1日〜3日開催された同大会から早くも2週間が過ぎた。各種学会やセミナーに参加したときは2週間以内に報告・感想を書き終えるということを鉄則にしているし、16日からは日本教育心理学会総会も始まっていてその感想も書かなければならないので、本連載は、今回をもって最終回としたい。

 さて大会2日目(9月2日)朝に行われた口頭発表の5番目は

●報酬受取の主観的確率判断と確率価値割引の報酬量効果との関係

というタイトルであった。これは前回感想を述べた

●価値割引と試験勉強場面の学習行動の関係

という発表とある程度関連している。じっさい、発表者は同じ大学院に属する方で、指導教員も同じ方であるとお見受けした。

 ここでいう確率価値割引というのは、「確実に250円が貰えるのと、確率20%で5000円が貰えるのとどっちを選ぶか」というような話。前回の「遅延価値割引」と同様に、割引のカーブが双曲線関数によく当てはまることから、「遅延」と「価値」をひっくるめた単一プロセス説というのが提唱されている一方、両者では報酬量効果が逆になるという研究もあり(Holt ほか、2003)、より詳細な検討が求められている。そこで本研究では、報酬量の大きさを5000円、10万円、100万円、「確実に貰える」と対照される確率を20%、40%、60%、80%に設定して主観的等価値を調べた。また客観的確率と主観的確率判断の関係についても検討された。

 その結果
  • 金額が大きい方が価値割引は激しいという報酬量効果が認められた
  • 客観的確率が高いほど主観的確率は高くなった
  • 同じ確率を伴う報酬でも10万円のほうが5000円よりも当たる確率は主観的には小さいと判断された。このことが確率価値割引の違いの一因になっている。
というような結論が得られたという。




 以上の結論はなかなか興味深いものであったが、前回の「遅延価値割引」同様、いくつかの疑問は残っている。

 まず、これは「遅延価値割引」の時にも述べたことだが、人々をタイプ分けした上で「○○タイプの人は△△という傾向がある」というように、個々の人間の行動傾向を固定的に捉えて議論するというのは、研究スタート段階の探索研究に限るべきだというのが私の考えだ。探索研究の次の段階では、同じ個人の中で、どういうコントロールをしたらどう行動が変わるのかという視点をもつことが大切。

 第二に、確かに日常生活場面ではわれわれは種々の確率現象に遭遇しているが、その際の選択は必ずしも「主観的確率」の数値の大きさではなく、もっと局所的な当落の推移(例えば「前回外れたから今度こそ」というような)や、強化スケジュールの変動性の影響を受けている可能性があるように思う。早い話、パチンコにハマっている人は、パチンコで儲かる確率を誤認しているわけではない。出玉率が低いと知っていてもなお、のめり込むのである。

 余談だが、この夏にちょうど「JAL みんなの夏空キャンペーン」というのがあった(7月14日から8月31日、応募締切は9月19日)。搭乗券半券2枚または6枚でいくつかのプレゼントコースを選べるというものだが面白いのは、例えば半券2枚の場合、
  • もれなく:無料ダウンロード5曲分
  • もれなく:ぐるなび加盟店でJALスペシャル特典
  • もれなく:空港店舗で最大1000円引き
  • もれなく:ICクラスJクーポン国内線1区間分
  • もれなく:三谷幸喜×和田誠 カフェタンブラー
  • もれなく:稲葉賀恵デザイン スカーフ柄ハンカチ
というように、確実に貰えるプレゼントコースがある一方で、
  • 抽選で30000名様に:JALオリジナル「ウラじんせーエンジョイ!たまごっちプラスJALほわいと」
  • 抽選で2000名様に:JAL国内線往復航空券
  • 抽選で100名様に:JAL日本=韓国エコノミークラス往復航空券
  • 抽選で500名様に:JAL IC利用クーポン5万円相当分
という「確率価値」のコースが与えられていたことであった。「もれなく」を選ぶか「抽選で」を選ぶか、また、「抽選で」の中ではどれを選ぶか、というのは、まさに今回の実験の現実バージョンになるかと思う。これを読まれた方は、どのコースを選択されるだろうか。

 私自身は、通常、こういうオプションがある場合には、「もれなく」を選ぶのが普通だが、今回のケースでは「もれなく」のどのコースにも全く魅力を感じなかった。ということで抽選コースの中の、「抽選で2000名様にJAL国内線往復航空券」か「抽選で500名様にJAL IC利用クーポン5万円相当分」を選ぶか、ということになったのだが、これは困った。というのは、当選者の人数が多いからといって、当選確率がそれに比例して増えるというわけではないからだ。応募者の大半が「2000名様に」のほうを選んだとすると、極端な場合、もう1つの「抽選で500名様にIC利用クーポン5万円相当」の応募者は500名未満となり全員当選ということもありうる。この予測はきわめて難しい。まだ応募締切となっていないので、ここでは私自身の選択について述べることは差し控えておきたいと思う。




 さて、大会2日目午後には

●心理学実験・実習科目における行動分析学テーマ

というシンポがあった。司会のA氏によれば、米国では高校生向けの有用な心理学実験手引き書が発売されているという(1999年版もあるが1981年版のほうが面白いとか)。このほか3氏からそれぞれの報告があった。このシンポはあくまで、実践例の紹介という趣旨だったと思うが、心理学の授業としては今や、
  • 実験的方法によって何が分かるのか
  • 実験的方法にはどういう限界があるのか
が問われており、その根本をしっかり意義づけした上で実習に入らないと、受講生から「実験は面白かったが、なぜこういうことをするのか分からない」という感想が寄せられかねない時代にあると思っている(9月5日の日記に関連記事あり)。





 大会2日目の総会と懇親会はキャンセル。9月3日は大阪・淀屋橋の会場で行われたダイバージョナルセラピー研修会に出席したので、本大会の参加報告・感想はこれをもって終了とさせていただく。