じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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日本心理学会第71回大会の会場となった東洋大学・白山キャンパス内のエスカレーター。ここを通るたびに観察しているが、エスカレーターの左側に立つ人が多く、その右横を少数の人が通り抜けていく、という特徴が見られた。大阪方面からの参加者が多ければ、右に立つ人がもっと居るはず。それとも、「郷に入れば郷に従え」ということか。なお、2005年4月7日の日記や、2005年12月1日の日記に関連記事あり。
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【思ったこと】 _70919(水)[心理]日本心理学会第71回大会(2)心理職国資格化は、百家争鳴(百家迷走?) 東洋大学で開催された日本心理学会第71回大会の参加感想の2回目。 大会1日目(9月18日)の午後はまず、 ●心理職の国資格化の最近の動向とゆくへ という、認定心理士会企画プログラムに参加した。 このテーマは昨年の第70回大会でも取り上げられている。その後の進展が気がかりであったので、最新情報を得るために出席した。なお、この企画のすぐ後に ●心理学教育と社会・資格との接点〜心理学教育に何が求められているか〜 という特別シンポが開催されていたが、私は次回取り上げる別シンポに参加しており拝聴することができなかった。 今回の企画では、社団法人日本心理学会理事長の岩崎庸男氏の挨拶に続き、織田正美・日本認定心理士会会長(前・社団法人日本心理学会理事長)の講演が2時間近くにわたって行われた。 講演の前半は、臨床心理士及び医療心理師法案(2005.7.5.議員連盟合同総会にて承認)の要点、論点の紹介。後半は、2005年7月27日に上程直前で断念に至った経緯、及びその後の動きについての経緯説明であった。但し、最近の動きについては不確定の部分もあり、ここでは一部、言及を避けることにさせていただく。 講演前半部分の法案要項骨子は、全心協(全国保健・医療・福祉心理職能協会)内の資料サイトにも掲載されているので、そちらをご参照いただきたい。 この法案要綱骨子は議員連盟合同総会にて承認されたという点でオーソライズされたものとも言えるが、いくつか曖昧な点が残っているという。 1つは、医療心理師関連の施設指定や登録の主務省が「厚生労働省」と明記されているのに対して、臨床心理士のほうは「主務省」、「主務大臣」という表記になっており、さらには主務省令で定める詳細部分に不明点があること。そのほか、後でも言及するが、この法案はあくまで名称独占資格であって、業務独占資格の法案ではないことについての種々の議論、医師の関わり方についての問題等が以前として論点になっている模様である。この法案の上程が断念されたのは「郵政解散」のとばっちりという見方もあるが、実際の断念はそれ以前であり、主として、医療系の団体(「日精協」など)の反対声明に対して十分に対応できないうちに郵政民営化論議一色となり、上程の目処が立たなくなってしまったというのが実情であったと推測される。 2005年7月以降の動きはきわめて流動的となった。そんななか、2006年11月4日に、社団法人日本心理学会と日本心理学諸学会連合常任理事会共催の ●心理学界が目指すべき資格制度のあり方〜心理職の国資格化をめぐって〜 という特別シンポが開催されたことは、公式の場で初めて、臨床心理士と医療心理師の国資格化をめざしているそれぞれのお立場の方々が意見を表明されたという点で大きな意義があったとされてた。なお、その時の概要は、2007年9月20日現在、こちらから閲覧可能。また私自身の考えは、こちらに述べてある。 講演の後半では、「心理師」(仮称)という資格についての紹介があった。「心理師」という名称は、
●日心連の「心理学検定試験」の1級に合格した者 というのが基礎資格の一部になっている。試験科目は、多くの心理学系で教えている一般的な領域すべて:
講演終了後に質疑の機会があったが、他に挙手者が見当たらなかったので、私のほうから いわゆる「ニ資格一法案」は、名称独占の国資格を目指しているようだが、なぜ業務独占ではなくて名称独占なのか。名称独占だったら、NPOを立ち上げて商標登録するだけでも実現するし、認定制度をきっちりさせれば「質保証」にもなる。名称独占だけのために国のお墨付きをもらう必要性が分からない。というような質問をさせていただいた。じつは似たような質問は昨年にもさせていただいており、そのことを断った上で、今回はダイレクトに質問をぶつけさせていただいたのだが、公式なお答えは「私にも分からない」ということであった。 あくまで私の個人的見解だが、業務独占を目指してしまうと他の関連職の業務を制限してしまうことにもつながりかねない、また、名称独占資格のままであっても、現実には、有資格者を優先的に雇用、あるいは給与面で優遇すれば、実質的な質保証・向上がはかれるという目論見があるためではないかと推測される。 今後の方向については、前途多難、百家争鳴いや迷走、という気がしないでもない。質疑では、学術会議経由の調整という意見も出されていたが、この問題はすでに、既得権者の権益を巻き込んだ政治的な駆け引きに化してしまった部分がある。大学関係者のほうも、自身の所属する大学で定員割れ対策として、心理学関連職の養成を目指した改組などを行っており、個人的な見解を表明しにくい事情があるようだ。 次回に続く。 |