じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 今年もまた、岡大の福利施設(生協食堂など)入口付近のクリスマス電飾が設置された。昨年の様子はこちらにあり。この電飾は、2006年から始まり、今年が3年目。もともとは生協の利益還元の一環であったようだ。


12月02日(火)

【思ったこと】
_81202(火)[心理]日本心理学会第72回大会(54)環境配慮行動をおびやかす10匹の怪物(6)

 昨日に引き続き、ギフォード氏が列挙した10匹の怪物:
  1. 不確実性(Uncertainty)
  2. 環境に対する無関心(Einvironmental Numbness)
  3. 行動統制感の欠如(Lack of Perceived Behavioral Control)
  4. 否認(Denial)
  5. 相容れない目標と願望(Conflicting Goals and Asperations)
  6. 社会的規範、公平さ、公正感が感じられないこと(Social Norms, Equity, and Felt Justice)
  7. 心理的反発(Reactance)
  8. コミュニティへのアイデンティティの欠如(Lack of Identification with Ones's Community)
  9. 見せかけばかりのまがい物(Tokenism)
  10. 習慣(Habit)
について、感想・意見を述べさせていただく。

 3.の「行動統制感の欠如(Lack of Perceived Behavioral Control)」というのは、何をやっても無駄だと思っている人に対して「やればできるんだという感覚を生み出す(Create a sense that "this job CAN be done")」という意味だそうだが、うーむ、感覚を生み出すとはどういうことだろうか。行動分析学の考えに基づくならば、「感覚を生み出す」のではなく、個々人の、ごくごく小さな環境配慮行動が生じた直後に、確実に強化するということが肝要である。と言っても、個人が環境全体をダイレクトに変化させる度合いはきわめて小さい。であるからこそ、人為的に、強化や弱化の随伴性を追加することが必要になってくるのである。いま推進されているエコ・アクション・ポイントなどはまさにその例である。時間が限られていたせいだろうか、ギフォード氏の講演の中では、このことに関して特筆すべきような提案はなされていなかったように思うが、とにかく、「感覚を生み出す」のではなく「具体的な行動を強化する」ことが大切であると私は考える。

 余談だが、12月2日朝の「モーサテ」で、(ホンモノの)馬を使って、部下への対処スキルを体験するというような、風変わりなリーダー研修を紹介していた。受講生たちは、初対面の馬がハードルを越えるように躾けることを求められるが、馬はなかなか言うことを聞いてくれない。しかし、最初はハードルを低くし、少しずつ高くしていけば、確実に乗り越えられるようになる。そこのスタッフは「レベルを下げることが重要ではない。大切なことは、低いレベルから初めて、できるということを実感させならが、少しずつ積み重ねていくことだ」というような話をしていた。このアイデアはそっくり、環境配慮行動にも当てはまると思う。もっとも、これって、行動分析学で定式化されているシェイピングや分化強化の手法と同じことになるんだがなあ。

 次に、4.の「否認(Denial)」とは、私の記憶している限りでは確か、地球温暖化等の指摘に否定的な考えがあり、これに打ち勝つことが重要であるという意味だったと思うが、メモをとっていなかったので真意は不明。

 5.の「相容れない目標と願望(Conflicting Goals and Asperations)」とは、「「前進する」ことと「環境にやさしい」ことは両立できることを示す」という意味であるという。前にも述べたが、100年に一度という経済危機の中にあって、先進各国は、自動車産業への金融支援に見られるように、なりふり構わず立て直しに奔走している。こういう中で、「環境にやさしい」技術がどこまで優先されるのかは心もとない。もっとも、日本に限って言えば、今こそ、地球環境を守る技術を主軸とした活性化が求められており、世界に向けて主導的役割を果たしていくことができるとも言えよう。

次回に続く。