じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2011岡大イルミネーションの決定版。

 12月7日より岡大イルミネーションが開始されているが、平日夜は、ピーチユニオンの建物内が点灯していることが多く(この時期、4階レストランが懇親会場に使われることも多い)、なかなか綺麗には撮影できない。いっぽう、日曜日になると、建物内は完全に消灯され、しかも人通りはまばらである。写真は12月11日(日)の20時半頃に撮影したもので、訪れている人は数人程度であった。土日に賑わうひろしまドリミネーションとは大きな違いである。

12月11日(日)

【思ったこと】
_b1211(日)日本質的心理学会第8回大会(16)「個性」の質的研究(15)関係の中における個のふるまい(6)森氏の指定討論(2)

 昨日の続き。

 指定討論の後半で森氏は、

個別の事例を理解できたとして、読み手は何を得られるのか?

という問題提起をされた。ここで「読み手」となっているのは、事例報告の多くが文章によって語られるためではないかと思う。私なりに言い換えれば、偶然に出会った人について詳細な事例研究を行っても、それがその人だけの個性に過ぎないのであれば、他者にとっては何の情報的価値ももたらさない、事例を増やしても、「そういうこともあるし、ないこともある」という、多様性の列挙に終わってしまう恐れがある。

 これに関して森氏は、「転用可能性」なのか、「似ている」なのか、と問いかけた上で、「転用可能性」に加えて「応答可能性」が必要であると主張された。応答可能性というのは、研究のコミュニカティブな連鎖をもたらしているか、「先行研究にいかに応答したか、後続研究に応答してもらうか」ということであるという。

 この「応答可能性」については、私自身はよく分からないところがある。確かに、研究者集団の内側では、研究のコミュニカティブな連鎖が新たな研究を生み出すことは大いにある。しかし、そのことによって、果たして研究は「発展」するのか、それとも、ファッションの世界のようにその時代ごとの流行に終わってしまうだけではないのか、そのあたりの見通しが立たないように思う。いや、ファッションとか芸能界であれば、その時代にマッチした何かを作り、それに見合ったビジネスモデルができればそれで問題ない。しかし、公的資金を投入して行う研究ということになると、単なるコミュニカティブな連鎖だけで発展が保証できるのかという疑問が残ってしまう。

 特定の個を対象とする研究がどういう条件を満たした時に意義深いものになるのかについては、11月27日ほかで私の考えを述べたことがある。主な条件としては、
  • 傑出した人、凶悪事件犯人など、その人自身を調べることに意義がある場合。
  • 臨床場面で、特定の個人を相手にする場合。あるいは、自分に関わりの深い人と個人的に接する場合。
  • 一般常識を覆すような例外的事例になる場合。
などを挙げることができる。

 指定討論の最後のところで森氏は、「個(別)と集団(一般)の対比(ブリッジ)を通じて集団の内包がいかに豊かであるかを示す」、「スキーマアプローチ」、「HSS(歴史的構造化サンプリング) with TEM(複線経路・等至点モデル)」(参考文献がこちらにあり)というような可能性を示されたが、時間的制約もあり、十分には理解できなかった。

 以上、たった1回、わずか2時間のシンポに対して15回にわたりメモ・感想を記してきたが、ひとまず、この話題についての連載は終了とさせていただく。

次回に続く。