じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月5日頃から、大学構内のウメ、ベニバスモモ(アカバザクラ)で、ウメエダシャクが大量に羽化している。羽根模様は2種類あり、写真左上がメス、右上がオスではないかと思われるが未確認。写真左下の黄色い円内は蛹、右下は交尾の様子。

6月7日(木)

【思ったこと】
_c0607(木)金星の太陽面通過と行動分析学(2)稀少性はなぜ好子になるのか?

 昨日の日記で、金星の太陽面通過という出来事が習得性好子になる理由の1つとして、「約500年のうちに10回しか出現しない」、「次回は2117年12月11日」といった稀少性があるのではないかと述べた。しかし、稀少であることがなぜ好子になりやすいのかについてはさらに考察が必要である。

 稀少性は「きわめて少ないこと」、「ごく稀で珍しいこと」というような意味であるが、個人にとっての稀少性としては少なくとも次の2種類があるように思う。
  1. めったに起こらない出来事やチャンスが、他の人たちではなくて自分一人に与えられた場合、もしくは自分の努力でそれを獲得した場合
  2. 他の人はどうあれ、自分自身にとって稀なチャンスで、これを逃すと二度と体験できないような場合
 このうち前者1.は、オンリーワンの価値であり、たとえばテーマパークの入場者100万人目として記念品を貰った場合とか、自分の努力で世界の8000メートル峰すべてに登頂した場合などがこれにあたる。

 いっぽう、今回の金星太陽面通過や5月21日の金環日食は後者2.の場合に相当する。この場合、テレビでも特別中継が行われたりして大騒ぎとなり、それに同調するのがイヤで日食は見ないと意地を張る人も出てくるし、みんなと同じ体験を共有したいということで熱中する人も出てくる。しかし、後者のタイプの基本は、

●もしこの機会に行動しなかったら結果は得られない。後日、あの時行動しておけば良かったと後悔しても手遅れである。

という心理であり、行動分析学で言えば、これは「好子消失阻止の随伴性」、つまり、その天体現象を眺める機会が消失してしまうことを阻止するために行動するという随伴性が強く働いているのではないかと思う。であるからして、金星太陽面通過自体は大した景色ではなかったとしても、とりあえずそれを自分の目で観察した、直接体験できたということによって、好子消失は阻止されたことになるのである。

 なお、金星太陽面通過という現象は一生に一度限りの現象であるからして(←2004年6月8日に運良く見られた方を除く)、

【直前】太陽面通過なし→【行動】太陽面通過の観察、あるいはインターネット中継を観る→【直後】太陽面通過あり

という随伴性ダイアグラムが成立したといっても、太陽面通過を観察するという行動自体の生起頻度が増えることはあり得ない(←2117年12月11日まで長生きできた人が居れば、その時の観察行動の頻度を増やすかもしれないが)。但し、他の類似の天体現象の観察行動、例えば今年8月14日に、真夜中に起きて金星食を観察しようという行動の生起確率を上げる効果をもたらすという点で、その行動は強化されたと言えるかもしれない。

 また、もう1つ付け加えておくが、「過去に金星太陽面通過を観察したことが強化されて今回も観察した」という人は、2004年6月8日に運良く見られた、ごく少数の人たちだけに限られる。それ以外の人では、過去の類似の天体現象観察行動(過去の日食見物など)が強化されている場合、あるいは上述の「稀少な直接体験の消失を阻止する」随伴性によって、観察やテレビ等の中継視聴という行動を起こした場合が大部分であろう。またそのかなりの部分は、直接効果的な随伴性ではなく、「こうすればこうなる」というルール支配行動として生じたものである。


 次回に続く。